湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲

2008年05月30日 | 北欧・東欧

○フルニエ(Vc)シュミット・イッセルシュテット指揮北西ドイツ放送交響楽団(tarha)1956/5/14・CD


Schumann/Dvorak: Cello Concs
Fournier,Rosbaud
Tahra

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いったいいくつ出てくるんだというのがフルニエ、そしてロストロのドヴォコン(後者はそれこそ演奏会の数だけ出てきそうなものだが)。フルニエは音の美しさとそつのない演奏ぶりでむしろ多彩なバックをつとめる指揮者・オケ陣に聴き所のある場合が多い。熱血でスピードも飛ばしがちなクーベリックあたりとのものが面白いが、節度と厳しさを併せ持ったイッセルシュテットのような指揮者に機能性が持ち味のNWDRSOという常任の組み合わせも興味を惹かれるものはある。


確かに明らかに個性やパッションが聞き取れるたぐいの演奏ではなく、どちらかといえば「模範的演奏」の気の強いものではあるが、率直なテンポでヴァイオリンのような演奏振りと言ったらいいのか、スピーディでタッチも軽く、しかしやはりチェロだからその共に打ち出すのは難しいわけで、指がややスピード負けしてつんのめったり音量的にはっきりした変化がつきづらくなっていたりするところもある(それほど目立たないし録音が篭っているせいもあるが)。一部ヴァイオリニスト同様、音色の安定の余り一種飽きをきたすところもあるが、これは聴く側の贅沢だろう。オケ単体になるとイッセルシュテットの表現がぱっと出て纏綿な弦楽アンサンブルを聞かせたりなど面白いところもある。バックオケとしても立体的で構造の明瞭な彫刻がチェロの音線としっかり組み合っていく気持ちよさはこの指揮者のメリットだろう。響きのバランスよさ安定感はドイツっぽく、スラブぶった匂いを取り去っている。


音表現の美しさは2楽章でとても生きている。この盤の白眉だろう。古典的な雰囲気すら持つ水際立った精度のバックもさることながら、フルニエの高貴な旋律表現は筆舌に尽くしがたい。大きな流れの中に技巧的フレーズが有機的に、悪徒に主張せず組み込まれ、音楽の緩急が呼吸するように調和的に紡がれていく。バックが節度を持ちすぎて音が鄙びる感もあるが、この表現でフルニエの音量が余り出ないせいかもしれない。ソロ管楽器とソリストとのアンサンブルもなかなか丁丁発止だ。


3楽章は厳しく始まるがソロが入るとちょっと柔らかくなる。ちょっと録音が悪くなっているせいかもしれない。音量変化が聞き取りづらいのが骨董録音の実にデメリットで、tahraはよく音質調整はしているが音量操作までは余りしないから音域がカットされている音源の場合部分的にパワー不足を感じる場合がよくある。武骨なオケとなめらかなソロという組み合わせで意外とスケールが広がらないが、録音の限界のほかに、フルニエのそもそもの芸風とも言える。技巧的には本当に素晴らしいが音量は控えめ。調和のとれたあくまで「制御された柔らかさ」を目しているのだ。チェロらしい音域に降りた第二主題のほうがやはり素晴らしく力がある表現になっている。余りにしゃっちょこばったコンマスソロ(というかあくまでオケの声部として敢えて堅く表現させているのだろう)が対照的で、可哀想になるほど美しい音色表現で圧倒的な存在感をみせる。制御的なオケの引いた構築性がソロを自由にさせている。といっても自由にするようなソリストではないので、あくまで節度ある貴族的な雰囲気のうちに、壮麗なオケが出しゃばって幕は下りる。○。

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スメタナ:組曲「わが祖国」より「モルダウ」

2008年05月30日 | 北欧・東欧
○シェルヒェン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団(westminster/tahra)1957/5・CD
実に落ち着いたテンポで、よく言えば細部まで丁寧、悪く言えばドイツ臭くリアルに冷静につづられていく。tahraがCD初出というが冒頭のような静かな場面で混信のような雑音が激しく入りやや聞きづらい。ちょっと特有の魅力があり、土俗的な演奏とはまた違った大人の魅力がある。漲る民族的なパッションや、イマジネイティブな情景描写の力には欠けるところもあるが(中間部が終わりモルダウ川の煌きにかえるあたりの木管からヴァイオリン、ハープの繊細な絡み合いと纏綿とした美しさは例外・・・冒頭主題に戻ってからは実に重く遅く弦が崩壊寸前でブラス絶叫パーカスぶっ叩き、しかし木管は素朴に棒吹き、なんじゃこりゃになる)、ホールで客観的に聴く音楽のよさというか、主情的な演奏が見失いがちなスコア自体の魅力に立ち返ったような、他国の音楽を他国のものとして、自国のワグナーのような音楽をさばくやり方でしっかり表現しているというような演奏。シェルヒェンの立ち位置がよくわかる。爆演なんてイメージはライヴ録音がやたらとCD復刻されたここ10数年に出来たものだ。きちんと曲を腑分けしてから、自己流に組み立て直して提示する人。変だけど、「爆発」なんて非制御的な解釈は施さない。
Le Concert Imaginaire
Scherchen
Tahra

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ベートーヴェン:交響曲第7番

2008年05月30日 | ドイツ・オーストリア
○クレンペラー指揮ACO(archiphon:CD-R/MEMORIES)1951/4/26live・CD
テープ録音のようで意外とクリアだが劣化が激しくお世辞にもいい音とは言えない。音場はステレオを彷彿とさせるほど不自然に広いが最高音が伸びず篭ったインホール録音のような感じになっており、雑音、不安定さ含めて一般向きではない。演奏はみずみずしいものの、終楽章が意外と前に向かわずクレンペラーらしさが出てしまっている(テンポは速いし最後の畳み掛けは凄い)。激しい音表現の変化が録音のせいで削られ、アゴーギグやデュナーミクのダイナミズムを楽しむことができない。悪くは無いが、パンチがない。○にはしておく。メモリーズでCD化。

<クレンペラーの7番(参考)>

VPO・1956ライヴ正規盤
Brahms: Symphony No. 3; Beethoven: Symphony No. 7

Orfeo

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フィルハーモニア管弦楽団・1957ライヴ正規盤
Beethoven: Symphonies Nos. 2 & 7

Testament

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(ニュー・)フィルハーモニア管弦楽団とのスタジオセッション~

EMI原盤のどの録音かは曲の組み合わせで識別しましょう。但し時々全集盤から違う組み合わせのものも出たりしますので注意(4と7など)。

1955モノラル正規盤
Symphony 5 & 7
Beethoven,Klemperer,Philharmonia Orchestra
EMI Classics

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ステレオ実験盤
Beethoven: Symphony No. 7; Prometheus Overture

EMI

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1960正規盤
ベートーヴェン:交響曲第1番&第7番
クレンペラー(オットー)
EMIミュージック・ジャパン

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1968正規盤(ニュー・フィル)、山野楽器独自企画盤と同じ
ベートーヴェン:交響曲第7番
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
EMIミュージック・ジャパン

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他にマイナーレーベルものやライヴ非正規盤がある
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いろいろやってます

2008年05月30日 | Weblog
ビックカメラドットコムさんから商品バナーが取得できるようになったので、マランツのとか羅列しようといっしゅん思ったんですが、白バック写真なので、黒バックだとどうにも映えない・・・それに画質がいまひとつなので、器械モノの小さい写真は難しい。音聴箱があったのでためしに左欄に貼らせていただいております。カメラを羅列したい衝動にも駆られましたが、音楽と関係ない。。

アフィリと親和性の薄い絶版ばかりを相手にしているこの盤評ブログですが、レイアウトとかいじる過程でいろいろやってみることにしました。じきamazonなんかも入れてきます。ただ、gooブログがなにぶん融通がきかないので、実験場は別に作ろうかと思ってます。メインはここと本サイト(ジオ)になりますが、さらによそに書いたりしているクラシック以外の記事もインデックスする用に自由度の高いフィールドを近々設けようかと。宜しくお願いします。

あと、企画ページとして何か作ろうかと思ってたんですが(「裏青」「猫」などの特殊用語集とか)、本サイトの容量が限界ゆえ、インデックスサイトにつけることになるかと思います。まあ、気まぐれですけど。
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ベートーヴェン:交響曲第8番

2008年05月30日 | ドイツ・オーストリア
○クレンペラー指揮ACO(archiphon:CD-R)1949/5/1live
溌剌として曖昧さの微塵もない快演。リズムのしっかりしたクレンペラーだがそこに引きずられることのない同時期のバランス感覚が、もっともいい形で現れるのはやはりベートーヴェンだろう。8番は冒頭こそ有名だが結構マイナーな曲だと思う。それは均整感や完成度という面ですばらしい域に達しているものの楽想のアピールや発想の前衛性において後期のほかの交響曲と比べるとやや地味であるところに起因しているようにも感じる。演奏によっては地味さが倍増して聞こえてしまう。だがこの8番は終始7番のノリで楽しい。明るく古典的な明快さをリズム感とスピードによって提示し、終始同じような調子ではあるけれども、最初から最後まで聞きとおさせる「連続性」が売りだ。さすがに終演後の拍手も盛大。だが、録音は最悪の域。○。

<クレンペラーの8番(参考)>

解釈の基本は同じ。時期的にも軽やかさを保ったクレンペラーの意外な一面を楽しめます。

ACO・1956/5/17ライヴ盤(music&artsで出ていたものと同じ、共に非正規注意)
Beethoven: Symphonies Nos. 6, 8 & 9

GOP

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フィルハーモニア管弦楽団・1957正規スタジオ録音盤
ベートーヴェン:「運命」& 交響曲第8番
クレンペラー(オットー)
EMIミュージック・ジャパン

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組み合わせの運命が名演で有名。他にも組み合わせを変えるなどして何度も出ています。

フィルハーモニア管弦楽団・1966ライヴ正規盤
Beethoven: Symphonies Nos. 1 & 8; Grosse Fuge

Testament

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ミャスコフスキー:交響曲第21番「交響的幻想」

2008年05月30日 | ミャスコフスキー

スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団(OLYMPIA/仏WARNER・スヴェトラーノフ協会)CD


きわめて遅く沈潜した晩年スヴェトラーノフ的な表現で、ねっとりしたフレージングはきかれるけれども力がなく楽想変化もぎごちない。オケが余りにぼろぼろで迫力がまったく出ないのだ。弦のプロとは思えないバラケ具合にはスヴェトラーノフの傷心を想って余りある。求心力がないのは解釈のせいでもあろうが、この短い単一楽章交響曲はミャスコフスキー晩年の凝縮されたロシア節がもっともよく現れたものの一つであり、この雑で稀有壮大傾向な演奏では長所が殺されてしまう。スヴェトラーノフの響きは統制された冷たく透明なものを志向しておりミャス晩年の理知的傾向と合致した思想があるように思うが、テンポが弛緩しすぎているからオケがだらけて却って演奏の個性を殺すほうに動いてしまっている。無印にせざるをえない。のんべんだらりとした演奏。


Miaskovsky: Complete Symphonie

Wcj

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ミャスコフスキー(総論・本サイトまとめ)ミャスコフスキー(ブログまとめ)
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