Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

アップル流経営の研究

2009-03-22 17:19:24 | Weblog
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー2009年4月号は「製品開発と事業モデルの再構築」を特集している。いくつかの論文では,事例としてアップルを取り上げており,いま,イノベーションの経営について語るとき,アップルを抜きには語れないということだ。これまで,アップルの成功についてはスティーブ・ジョブズ本人の貢献が強調されるばかりで,企業戦略や組織の特徴が詳しく分析されることはあまりなかったように思われる。その意味で,大変楽しみな特集となっている。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 04月号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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まず,クリステンセンも共著者に名を連ねる「ビジネスモデル・イノベーションの原則」という論文では冒頭で,ビジネスモデル・イノベーションの典型例として,iPod と iTunes ミュージックストアが取り上げられる。これこそ,「ハードウェア,ソフトウェア,サービスの三位一体という,これまでにないビジネスモデル」だと著者たちは述べる。さらに,過去において,このようなビジネスモデル・イノベーションは稀であるとも。彼らは自らのコンサル経験を踏まえて,その方法論を提案する。

その枠組みは,(1)顧客価値の提供 (Customer Value Proposition),(2)利益方程式 (Profit Formula),(3)カギとなるプロセス (Key Processes),(4)カギとなる資源 (Key Resources) ,という4要因からなる。トップに顧客価値の提供がくるのは,マーケターとして納得がいく。顧客価値に相応しい価格を設定したあと,適切な利益を得るためのコストの目標を立て,それを実行するプロセスと資源を設計するという流れだ。タタが開発した超低価格車ナノなどが事例に取り上げられる。

次いで「「第2のスティーブ・ジョブズ」の育て方」という論文(原題は Finding and Growing Breakthrough Innovators)。それが,アップルにとっていま最大の経営課題である,という指摘からこの論文は始まる。イノベータになるかどうかは個人の資質によるという前提に立って,この論文では人材を組織内でいかに発見するかを議論する。そのために,系統的な評価と選抜を行っている企業もあるという。うまくいっているのか,その検証結果を知りたい。

イノベーションを担う人材には,社内外への営業力も必要となる。基本的に組織は新しいことを嫌うから,それを打ち破る説得力,調整力,人間的魅力が必要だというのはその通りだろう。企業によっては,イノベータ候補生を一時的に営業の現場に出すという。日本企業では「丸い人間」にするため「現場に出す」などということがあるが,そうではなく,顧客の真の要求を見抜く力を試し,鍛えるためということだ。そもそも営業スタイル自体が,日米では大きく異なっているに違いない。

この2つの論文,いずれもアップルの話で始まるが,その後は他の企業の事例ばかりになる。その逆のパタンが「コラボレーションの原則」という論文だ。研究開発のコラボレーションを「開放型―閉鎖型」「階層型―フラット」の2軸で4分類している。 著者たちによれば,iPhone のアプリケーション開発では「開放型」で「フラット」なやり方が採用されたという。これは Linux と同じである。ただし,そこにはグーグルの携帯電話OS,Android もあり,今後脅威になると予想されている。

とまあ,ビジネスモデル・イノベーション,イノベータ育成,オープン・イノベーションといった面からアップルが事例に取り上げられている。それぞれイノベーション経営の最近のトレンドを学ぶうえで参考になる論文ではあるが,アップルという企業の戦略や組織について,何かはっきりした像が浮かんでくるわけではない。やはりそれはすべて,スティーブ・ジョブズの頭のなかにある,ということなのだろうか。ということになれば,結局は,以下のような「伝説」本を読むしかないわけである。

MACPOWER 2009 Vol.1

アスキー・メディアワークス

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ジョブズのあとにアップルを reinvent すること,それが実現すれば,歴史的なイノベーションといわれることは間違いない。
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