Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「ブルー・オーシャン」演習

2010-04-29 22:28:36 | Weblog
先週と今週,3年生のゼミで『ブルー・オーシャン戦略』を取り上げた。といっても輪読したわけではなく,学生たちに春休みにこの本を読んでもらい,自分の好きな事例を選んで「戦略キャンバス」を描いてもらったのだ。自社の事業と競合相手を比較する要素を列挙し,その差を折れ線グラフ(価値曲線と呼ぶ)で表す。それ自体はよくある分析でしかない。戦略キャンバスに独自性があるとしたら,さらに各要素を「増やす」「付け加える」「取り除く」「減らす」ことでメリハリを付け,一貫性のある差別化戦略を見出そうとする点にある。

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)

W・チャン・キム,レネ・モボルニュ,
ランダムハウス講談社


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この作業を学生にやってもらったわけだが,その出来にはやはり差が出る。その原因はおそらく単純なことだと思う。つまり,対象として取り上げた企業や製品についてどれだけ関心を持ち,深く調べ,じっくり考えたかの違いだと。もちろん,今後より本格的に分析するには,それなりの手法が必要となるだろう。戦略キャンバスの質は,競争を規定する要素をいかに抽出するかに左右される。ブレーンストーミング以外に,たとえば評価グリッド法の適用が考えられる。どの要素が重要かは,コンジョイント分析や AHP が使えるかもしれない。

だが,戦略キャンバスの目玉は,新たな価値の要素を付け加えることにある。これは,既存の競争の分析からは導かれない。ここをどうするかが難しい。無から有を生むような話だ。系統的な手法などあるはずがない,と言い切ることもできる。ただ,そうではないほうに賭けたいと思う。無から有が生まれるのではなく,現存するもののなかに絶対ヒントがあるはずだ。ただ,それは単純な足し算からは生まれない。さまざまなブロックをいろいろつなぎ合わせ,ひっくり返したり,ねじったり,放り投げたりしているうちに,Aha! の瞬間が訪れる。

これについては,世に溢れるアイデア発想法の本からも何か学べると思っている。だから,このゼミではいずれをそれを取り上げる予定だが,その前にゲーム理論の入門書を読む予定である。アイデアの話にいきなり行く前に,競争や意思決定に関する論理的な思考に触れておいたほうがいいと考えるからだ。もちろん,正統的なゲーム理論では戦略は所与であって,その創出は理論の範囲外にある。ゲーム理論の論理的世界とアイデア発想の想像的世界は表面上水と油の関係にある。それを混ぜ合わせるとどうなるのか・・・Aha! が生じないかと淡い期待。

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