無風老人の日記

価値観が多様化し、自分の価値判断を見失った人たちへ
正しい判断や行動をするための「ものの見方・考え方」を身につけよう。

政府マスコミの嘘・・・その4(市場原理主義)

2015年12月04日 | Weblog
《前置》

前回の続きとなるのだが・・・、

何故、アベノミクスによる景気回復が日本の津々浦々まで行き渡らなかったのか?

について。

前回は、連合を始めとする労働組合が弱体化し御用組合となり果ててしまったため、大企業が過去最高の好決算をし、企業の内部留保もうなぎのぼりなのにそれを給与賃金に還元させる力が無くなったのが、一つの原因として挙げられる。と書いた。
従来は総評がゼネストを決行し、ほどほどの妥結額が得られると、中小企業経営者もその妥結アップ額に右に倣えをして上げる、と言った事の繰り返しであった。今は連合始め労働組合は御用組合となり果て賃上げ交渉は形だけ整えている有様だ。

今日は、いま竹中平蔵氏をブレーンに行われている「新自由主義」「市場原理主義」について書いてみる。

前回書いた様に、トリクルダウン理論は、新自由主義(市場原理主義)の代表的な主張の一つである。



上がまあ、単純に考えたトリクルダウンによる景気回復の図式である。(相互関連や金融緩和等の要素を除いている)

安倍首相がいう「景気回復の好循環」=消費が増えれば生産も増える、である。



《本題》

日本の経済の現状をもう一度図を使って見てもらう。

アベノミクス効果により、

◎企業業績



一方、国民の所得は

 ×国民の給与所得



2010年と比較した実質賃金はずっとマイナス状態なのだ。(折れ線グラフ)

前年比でもずっとマイナスが続いてきた。(棒グラフ)

あなたには、前回書いた「企業の内部留保」と「労働者の賃金減少」の表と今日の表をもう一度見て今の自分が置かれている経済状況を認識してほしい。


ここで、余談として、一体化した政府マスコミの「マスコミ(テレビ・全国紙)」の方の嘘について述べておく。

少し前の話になるが、今年(2015年)6月、それまで続いてきた実質賃金23ヶ月連続マイナスという経済の現状(国民の生活が苦しくなっている現状)を報道していなかったマスコミが、実質賃金がプラスになる速報値を大々的に取り扱った。

安倍内閣は6月初め「実質賃金が2013年4月以来2年ぶりにプラスに転じた」と、4月(2015年)の「勤労統計調査」の速報値を発表した。

これに対し各全国紙は一斉に、

■実質賃金2年ぶりにプラス

■個人消費に追い風

■経済好循環へ節目


等、大見出しで宣伝。←これは、視覚に訴えたほうが感触が掴めると思うので日刊ゲンダイの写真を下に載せておく。見出しだけ見て下さい。



しかし、この「実質賃金+0.1%増」の速報値は6月18日(2015年)に「▲0.1%」の確定値に変更された。

(余談の余談)私もこの確定値の報道を見聞きしなかったため、最近までブログで「実質賃金26ヶ月連続マイナス」と書かれているのを「?マーク」で読んでいた。


6月2日の速報値=実質賃金+0.1%の報道の取り上げ方と、6月18日の確定値▲0.1%の報道の取り上げ方について、2015年6月20日の日刊ゲンダイの記事を引用する。



いったい、あのバカ騒ぎは何だったのか。

6月上旬(2015年)、安倍内閣は「実質賃金が2年ぶりにプラスに転じた」と、4月の「勤労統計調査」(速報値)を発表していたが、6月18日、前年同月比0.1%増だった“速報値”を0.1%減に下方修正した“確報”を発表した。

確報では、賃金水準の低いパート労働者のデータが反映され、「名目賃金」が速報の0.9%増から0.7%増にダウンした。

結局、労働者の「実質賃金」は、24カ月連続ダウン(2015年4月現在)が続いている。

それにしてもフザケているのは大新聞だ。

速報値を伝えた時は、大きなスペースを使って<賃上げ広がる><個人消費に追い風><経済好循環へ節目>と、大々的に報じていたのに、実質賃金がマイナスだったと判明した“確報”はアリバイ的に小さく伝えただけだ。

なぜ「実質賃金アップ」という政府に都合のよい発表はうれしそうに伝えたのに、政府に都合の悪い発表は無視するのか。これでは政府の宣伝機関と変わらないではないか。

…経済評論家の斎藤満氏がこう言う。

「速報値が発表された時、たかが0.1%増なのに何故大手メディアが大騒ぎするのか疑問でした。
“勤労統計調査”は下方修正されやすいクセがあるからです。
下方修正される可能性は大手メディアだって分かっていたはずです。

深刻なのは、昨年の消費税増税による物価上昇の影響が消えた4月も実質賃金が前年同月比マイナスだったことです。

これは庶民の賃金は、ほとんど上がっていないということです。

だから、消費も落ち込んでいる。

5月の家計消費は、マイナス5・5%でした。

大手メディアは、景気の現状を正直に伝えるべきです。」

速報値で<実質賃金2年ぶり上昇>と大ハシャギした大新聞は、同じスペースを使って、

■実質賃金24カ月連続ダウン

■賃上げ広がらず

■個人消費に(強く長い)“向かい風”続く


と報じなければおかしい。

大手メディアは、誰の味方なのか。



(参考)戦後3~4年に文部省によって作成された「民主主義」についての教科書より(報道機関にテレビが無かった時代なので「テレビ」は私の付け加えです。悪しからず!)

◎言論機関に対する統制と検閲こそ、独裁者の用いる一番有力な武器なのである。

…新聞やテレビが記事・報道番組を上手に・面白く・人の目を引くように載せ、珍しい写真等を掲げれば、読者・視聴者にどんなに効果があるかは想像に余りある。

同じ出来事を取扱うにしても、大きな活字で見出しを付けるのと、小さく隅の方に掲げるのとでは、まるで効き目が違う。

無根の事実を書いて人を中傷すれば、あとで小さく取り消しを出しても、その人の信用は地に落ちてしまう。

世論を動かすテレビ・新聞の力は、このように大きい。

それだけに、テレビ・新聞を経営する人たちの責任は、きわめて重大であると言わなければならない。


余談を少し書こうと思うとあれもこれも書きたくなりポイントを絞ったショートコメントの利点が薄れてしまう。

話を本題に戻す。

何故、上の表のように貧富の格差が広がったままなのか?

これは、今政府が推進している「市場原理主義」政策の推進によるものだ。

労働法の改悪。

■一生派遣社員のまま法(正社員の道が閉ざされた生涯派遣社員法)

■残業代ゼロ法(一定以上の収入のある労働者には残業代を払わなくても良い法律)

■首切り自由法(企業は一時金さえ払えばいつでも社員を解雇できる法律)

■労働法の労働時間制限の撤廃。(1週間の残業時間40時間まで、といった労働時間制約の撤廃)

「新自由主義」「市場原理主義」は昔の「蟹工船」や「女工哀史」の時代の劣悪な労働条件の様相を示してきた。

「お前の代わりはいくらでもいるぞ」とばかり、経営者は賃金を上げなくても良くなったのだ。(終身雇用制の終焉)

派遣社員は

♪工事終わればそれっきり お払い箱の俺たちさ♪(岡林信康“山谷ブルース”)

に近い心境だろう。

♪どうせ山谷の立ちん坊 世間恨んで何になる♪

派遣社員として低賃金で生活に汲々とし、結婚も子育てもマイホームも夢のまた夢となっている現状・将来に絶望した若者の自殺が増えている。深刻な社会問題である。(また、横道に逸れるので別の機会に書く)

《派遣社員について》

今年(2015年)11月4日の記事(下表)



厚生労働省が4日発表した2014年の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」で、パートや派遣などの非正社員が労働者にしめる割合が初めて4割に達した。

高齢世代が定年を迎えて正社員が減るなか、人件費を抑えたい企業が非正社員で労働力を補っている実態が浮き彫りになった。


《貯蓄ゼロ家庭について》



この数字とは対照的に8,000万円以上の投資資金(生活費等を除いた余裕資金)を有する日本国民は全国民の1.4%強も存在する。

良くもこんな格差社会を作っている政治権力者を支持出来るものだ。(最近の安倍内閣支持率48.8%の世論調査結果)

これもマスメディアが作り上げた世論である事に早く気がついて下さい。

今日はここまで、またね。