無風老人の日記

価値観が多様化し、自分の価値判断を見失った人たちへ
正しい判断や行動をするための「ものの見方・考え方」を身につけよう。

国営放送化したNHK

2008年05月20日 | Weblog
今日で中国四川大地震から一週間と1日が過ぎた。この間、NHKは毎日毎日ニュースのトップに掲げ、時間の大半を割いて悲惨な状況と日本の「国際」緊急救助隊の“活躍”を報じ中国側からの日本への感謝があった、といった国がやっていることの宣伝的な報道に明け暮れていた。

福田内閣は、矛盾だらけの道路財源特例法を議会制民主主義を無視して数の暴力で“再可決”し、野党は“問責決議案”を出す出さない、といった日本にとって歴史の曲がり角的な政局状況にあった。中国の地震が無ければ、この一週間は、この再可決問題・後期老齢者医療問題・年金問題・格差問題・防衛省汚職問題等々、政治問題でニュースが埋め尽くされたはずである。それほど今の日本は問題を多く抱えている。

このマスメディアのやり方は、岸内閣が警防法を成立させようとして国民の大反対(大規模デモ)に遭い倒閣寸前に追い込まれていた時、皇太子御成婚のニュースで報道を埋め尽くし政治問題を全く報道しなかったやり方に似ている。そのマスコミの国民の目を逸らす方策により、岸内閣は延命した。

私は、どちらも“ニュースにするな”、とは言わない。皇太子御成婚は国民にとって喜ばしいニュースであり、大きく取り上げられて良いと思っている。ただ中国の大地震の報道もそうであるが、裏にある、それだけを大々的に流し政治問題を葬り去ってしまう(国民の目から逸らす)という権力者とマスコミの意図に国民は気が付いてほしいのだ。

余談ですが、妻がNHKのニュースを見て「国営放送のようね」といった。妻も政治的にはノンポリである。

それはNHKが

*「(わが国は)“国際”緊急救助隊を中国へ派遣」(無風注:国連からの要請であれば“国際”を使っても良いが、中国の要請で派遣するのだから「“日本の”緊急援助隊を中国に派遣」の表現が正解では?)

*「(わが国は)最新の生存者検知装置を使用して生存者を探索」

*「(わが国)政府は5億円の緊急支援金を出す決定をした」(無風注:地震当日=再可決当日、その再可決ニュースを報道する前に“意図的に”流した。国民の生活に直結する日本国内(政治)のニュースが、海外ニュースに先行すべきと思いながらみていた。)

*「わが国の行動に中国が感謝」

まるでわが国(政府)を自慢する“国営放送”だ、と妻は感じたわけである。

一週間以上もトップニュースとして延々とニュース時間の大半を割いて報道、その少し前に起きたミャンマーのサイクロン被害のニュース報道と比べてみてもらいたい。また、日本の地震被害の報道と比べてみてもらいたい。死者数は異なるが個々人の悲惨さは同じであるはずである。また報道量が死者数で違うのであればミャンマーの被害の方が大きいのである。国民は「中国の地震報道」を“異常”と気が付くべきである。裏に揺曳している“意図”を感じ取る必要がある。

天木直人のブログ(5月15日)~引用

中国地震報道の“洪水”の裏で着々と進む「ねじれ国会」の幕引き

…しかし不幸な中国の地震は、福田政権にとっては幸いであったに違いない。
連日洪水のように流される報道の前に、本来であればもっと報道されるはずの国内政治の諸問題が、完全にかき消されている。

国民の目が中国地震ニュースに釘付けされている間に、窮地に立たされている福田政権が国会を幕引きし、態勢を立て直そうとしている。

国会が6月15日に会期延長なく終わる、と報道されはじめた。
それを知っている政治記者は、もはや一月足らずの国会は消化試合だ、などと言い出している。
…あれほど騒いだ年金問題も、道路財源問題も、後期高齢者医療制度問題も、そして天下り官僚の税金の無駄遣い問題も、どれ一つとして解決されないままだ。
格差問題も、公務員改革問題も、地方分権問題も、何もかも、解決に向けて進む気配は感じられない。…引用終り

NHKがこの一週間に流した政治関係のニュースは数少ない。

「道路特定財源を10年間維持するとした“道路特措法”が憲法の規定により衆議院の2/3以上の賛成多数で“再可決”されました。尚、これに先駆け、来年以降は適用しないとの閣議決定がなされました。」

「福田首相は、環境対策の地球温暖化対策の50%削減に向け、中期目標も必要との考えを示した。」

「政府の社会保障国民会議の分科会で、老後の基礎年金は今のような保険料と税金の組み合わせがいいのか、すべて税金で賄うのがいいのかの判断材料になる試算が示された。(…とし、後期高齢者医療制度のNHKの説明が不足していたと政府から怒られたのか、または、政府公報か、と思わせるほど政府の案を丁寧に説明)
全て税金で賄うとなると消費税5%~13%に相当する。
試算では“企業の負担は軽減される”。」

一週間のNHKニュース(政治関連)は、このぐらいなものである。

年金については、天木直人のブログ~「金を使うのではなく知恵を絞るのが政府の仕事だ」で次の様に警告している。

(引用開始)
(私が言いたいのは…)この試案の発表が「だから増税は避けられない」という心理的効果を国民に与える役割を果たしているのではないか、という危惧である。

増税がもはや規定路線のように語られ始めた。この試算が追い討ちをかける。

年金問題も、医療負担も、教育問題も、政府開発援助も、環境対策も、何もかも金が要る。
何よりも国は膨大な債務を抱えて国は倒産寸前ではないか。だから、国民が負担を分かち合うのは仕方がないではないか、という刷り込みである。恫喝である。

増税に応じる余裕のある層はいい。物価上昇に耐えられる所得層はいい。しかし、多くの国民はその余力はない。

それりもなによりも、金さえあれば誰でもどんな政策も実施できる(誰にでも出来る)と言うことを、国民はもっと声高に言わなければならないのだ。

金を使わずに知恵を絞る(家計のやりくりをする)、それが今の政治家や官僚に求められている仕事ではないか、と言わなければならない。

“金がなければ仕事が出来ない”というのが官僚の論理ならば、だったら今はしばし仕事をしなければいい、限を縮小するしかない、そう国民は要求しなければならないのだ。

そもそも、官僚の仕事の殆どは、“組織拡大”や“利権拡大”から作り出されてきたものが殆どだ。

今は国民生活に不可欠な仕事に集中し、余分な仕事は今は凍結すべき非常事態なのだ。

そうすれば、たちどころに国民の前にバレてしまう。
政治家はこんなに要らない。官僚はこんなに要らない。
ましてや天下りの巣くつになっている多くの独立行政法人の殆どは、いまこそ整理されなければならない事が。

しかし現実は政治家、官僚が金をもっとよこせと叫んでいる。

道路財源の一般化に伴い、壮絶な予算分捕り合戦が始まっている。

教育予算が多いか少ないかで、財務省と文部科学省が不毛な議論の応酬をしている。
防衛省は、日米軍事同盟強化の予算は減らせないという。それどころか対米軍事協力は増やさなければならないという。

月末に始まるアフリカ開発会議を外務省は成功させなければならないと言う。1兆円規模のODAをばら撒こうとしている。

洞爺湖サミットでは環境問題だ。温暖化対策だ。福田首相の支持率回復のために指導力を発揮しなければならない、という。

その一方で、国交省の阪神国道事務所は、その事務所の「50年史」を1部作るのに、800万円の予算を道路特定財源から支出している(20日読売新聞)。
まだこんなことが放置されているのだ。…引用終り


マスメディアの世論操作により、国民は一つの方向の道を歩かされている。NHKの国営放送化は、それを一段と押し進めることになる。

そのマスメディアの世論操作は前にも「マスメディアによる世論操作の現状」(2008年04月22日)で書いた通りである。

(再掲載する)
※「首相にふさわしい人」の世論調査(4/20)で,小泉純一郎氏がトップ。

※イラクに国際貢献・人道支援で自衛隊を派遣……派遣賛成55%、反対36%
 賛成の人の理由で一番多かったのは「国際貢献になるから」(賛成者の57%)。

※日本政府は、国民の70%近くが反対しているイラク派遣「延長」を数の力で断行、これに対してマスメディアは政府を追及することをしていない

※日本を対象としたテロへの不安…国民の85%が「日本でもテロが起きるのではないか」と不安に感じている(2004年3月世論調査)

※新テロ特措法…(1)給油継続 賛成47%、反対35% 賛成理由=日本の国益だから36%、テロ対策に主体的に取組む34%(日経新聞調査2007・10・29)
(2)新テロ特措法 賛成45%、反対35% 賛成理由=国際貢献のため必要54%(共同通信調査2007・10・29)
(3)活動停止は国際的に悪い影響 ある50%、ない37%(朝日新聞調査2007・11・5)

※北朝鮮に危険を感じている…国民の90%近く。…引用終り

今では、次の世論操作も加わった。

※後期高齢者医療制度=制度導入に向けた政府の準備や説明が「不十分だった」と思う人は94%

■説明不足で自民党が選挙に負けたように報道し、制度そのものは“いい制度”なのに、と国民に思い込ませてしまっている。「75歳以上のお年寄りからお金を取る」制度は悪しき制度である。「国民の福祉のために委託された権力を行使する」とある憲法の精神に違反する制度で“廃止”しかない。如何に説明されようと、いや、説明されればされるほど批判やデモが多くなっている。決して「説明不足」だったからではない。補選に負けた権力者の言い訳をそのままマスメディアが代弁し世論操作した結果の世論の数値94%である。

※「ねじれ国会」で審議が一つも進まない、民主党が悪い。

■「ガソリン税や日銀総裁人事での混迷は、民主党の硬直的な姿勢に大きな原因があった」~今日(5/20)の読売新聞社説より

■国会の一院制を目指す議員連盟が自民党の有志議員によって70名以上の参加で旗揚げされた。

設立趣意書
「世の中のスピードが早くなっているのに、一刻を争う国政上の課題が遅滞し、国民のコストは膨大だ」
「国家国民の損失は、両院による二重チェックや慎重審議の利点をはるかに上回る」

「憲法改正で二院制を抜本的に見直そう」(5/3日経新聞社説)

私の日記で文部省作成の教科書を読まれた方なら、世界に名立たる民主的なワイマール憲法の下で独裁国家を作り上げたナチスドイツを例にとった60年前の「警告」を思い浮かべられたことと思います。


※自衛隊の海外派遣をいつでも出来るようにする恒久法を必要と思う人は46%で、「そうは思わない」42%を上回った(読売)

憲法改正に賛成56%(朝日世論調査)

憲法改正賛成派では「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」の45%が最も多く2位は「憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱するから」の32%

同じ世論調査で、憲法9条改正反対が66%であるにも拘らず、未だに憲法改正賛成が56%もいるのは、賛成理由をみて分かる通り、「マスコミと協力して」おこなった政府のプロパガンダの悪しき“成果”といえる。

権力者のプロパガンダに乗せられて憲法改正に賛成する人の考えを変えてもらう事が、今、政権交代同様、一番大切なことだと考えますので、前にも書いた事を次回まとめて書きたいと思います。

それでは、また…。