◎それはひっくり返っている
(2009-12-26)
世界樹は哲学の樹(アルボル・フィロソフィカ)とも呼ばれ、北欧神話ではイグドラシルとも呼ばれる。錬金術文書では、転倒した樹(アルボル・インウェルサ)とされ、上から下に成長し、樹冠が下に、根が上にある。この転倒した世界樹は、古代秘教的世界観から来るもので、神である根から世界が発出しているという見方に、人間からの見え方を加えたものである。
『ある錬金術の文書では、「鉱物の根は空に、枝は大地の下にあり、これを引き抜くと、恐ろしい音がして、大いなる恐怖が続く」と記されている。『世界の栄光』では、哲学者たちの言葉として「その鉱物の根は空にあり、梢は大地の下にあり」と述べられている。
(中略)
転倒した世界樹の数多くの例の中で最も有名なものは、『ウパニシャッド(奥義書)』にあるものだろう。樹の宗教的意味がアルボル・フィロソフィカのそれと似ている。
この宇宙は永遠に存在する樹であり、その根は高く、枝は下に広がる。
樹の純粋な根が梵であり、その中に三界(欲界と色界と無色界)が存在し、これを超越する者はいない。』
(ヨハンネス・ファブリキウス/錬金術の世界/青土社p229から引用)
悟っていない人間には、世界樹は根が下に枝が上に広がって見える。世界樹の根を目撃した瞬間に、世界樹の見え方はひっくり返る。世界樹の根は神であり、仏であり、タオであり、ニルヴァーナである。
この逆転した世界観こそ覚者の証拠である。悟った人が周辺に理解されないのはここに最大のキーポイントがあるのではないか。
また霊が見えようが、ハイアーセルフと話ができようが、世界が逆さまに見えない人は本物ではあるまい。タロット・カードの木から吊るされた男こそ、覚者の姿である。吊るされて世の中がひっくり返ることほど恐ろしいものはない。実はそちらの方が真相だったと。それ以外にアセンションはあるまい。