quieto

喜怒哀楽。その全てが生きている証。

侍魂

2006-06-28 03:53:47 | サッカー
ハングリー精神。
それはスポーツの試合で勝つために重要なものだが、
ハングリー精神は大人になってから養えるものではない。
その人の生まれや育ちによって養われるものだ。
強いハングリー精神を持つ選手が何人もいるチームを見ると羨ましく思う。
しかし、その選手たちは、望んでハングリー精神が育つ環境に生まれたわけではない。

ワールドカップが始まる前…
スカパーだったかな。
ブラジル代表のアドリアーノの特集があった。
取材のカメラはアドリアーノの生まれ育った故郷に入っていった。
そこは治安が酷く、まるでスラムのような村だった。
撮影の許可を村の長に取り付けてあったのだが、遠くで威嚇の銃声が鳴る。
もし、村の長の許可が無いままだと撮影班の命の保証は出来ないらしい。
長の許可があっても、村の人達は外からの人間に過剰な反応をする。
撮影は一旦中止になった。

そんな村で、子供達の憧れはアドリアーノだった。
この村出身のヒーロー。
イタリアの名門インテルに所属して、今大会のワールドカップでブラジル代表入り。
子供達はアドリアーノに憧れ、荒れた土地を裸足で駆け回り、布を巻いただけのボールを毎日蹴っている。

アドリアーノの少年時代も同じだった。
プロのサッカー選手を目指して荒れた土地を裸足で駆けていた。
プロになる夢を叶えた今、アドリアーノの新たな夢は、故郷にサッカースクールを作る事。
そんな話を聞いていると次元の違いを激しく感じた。
日本VSブラジルの試合が終わった後、ヒデがピッチに仰向けに倒れいるところに、アドリアーノが心配そうに声を掛けに行ったのを見た時は感動した。
ただ強いだけじゃなく心も備わっている。
すこい選手だよ。

貧困の中から一流になったのはアドリアーノだけじゃない。
今、話題のアルゼンチン代表のメッシもそうである。
わずか12歳でスペインのバルセロナのカンテラ(下部組織)に入団。
しかし成長ホルモンの病気で治療を余儀なくされる。
バルセロナはメッシの治療の費用の全てを負担して、メッシは完治を目指して頑張った。
そして、05ー06シーズンよりバルセロナのベンチ入りを果たした。
復帰の試合は今も目と耳に焼き付いている。
あのバルセロナのサポーターの大歓声…
あの試合も感動した。

元アルゼンチン代表のバティストゥータも、子供の頃は路上でパンを売っていた。
辛い時期があったバティはサッカーのプロでいれる事を心の底から感謝している。
イタリアのセリエAでオファーが無くなると俄かに引退が噂された。
そんな時期、遠くカタールからオファーがあった。
「俺を求めてくれる場所があるかぎり、どこでもサッカーをする」
と、バティは外国への放送も少ないカタールを新しいプレーの場所に選んだ。

元オランダ代表のダービッツやセードルフはスリナム出身。
やはり裸足で荒れた土地を走っていた。
スリナムからオランダリーグを目指す人は多い。
その中のほんの一部の人だけがオランダに渡る。
そして、その中の選ばれた人だけがオランダの国籍を取ってオランダ代表になる。
オランダの代表になっても、彼らはスリナム出身という事に誇りを持っている。

そんな貧困や挫折から這い上がってきた選手の話を書き出したらキリが無いだろう。
あのジーコも、Jリーグに移籍して初めてロッカールームに入った時に、
全ての選手のスパイクが汚れたままで放置されていた事に驚いて、
何故、スパイクを大切にしないのか!と怒りを露にしたそうだ。
「私は、初めてスパイクを手にした時の感動を忘れた事はない」
あのジーコですら、スパイクを買えない時期があったのだ。
日本の選手の前でスパイクを取り出し、ジーコがスパイクを磨いているのを見て、
他の選手たちも、その後はしっかり手入れをするようになった。

こういう部分が全てを物語っているのかも知れないな。
ハングリーを知らない日本は今後も勝てないのか?
俺は、そうじゃないと思う。
今回のW杯のオーストラリア戦も、クロアチア戦も勝てたと思っている。
足が動かなかったのは気力の問題。
暑くて苦しいのは日本の選手だけじゃない。
相手だって同じ暑さの中で試合をしているのだ。
恵まれた環境で育った選手が多い日本代表にハングリー精神を持たせるのは無理かも知れない。
では、どうすれば良いか。
日本人は人の情を大切にする民族だと思う。
国を背負う。愛国心。など、今の日本に感じるのは難しい。
国民を虐める政治ばかりやってるしね。
日本代表は、国を背負うのではなく、あのサポーター達の応援だけを想ってほしい。
プロはお金を貰うだけがプロじゃないと思う。
ファンに夢を与え、夢に応えるのがプロだと思う。
熱い声援を送ってくれるサポーターのために頑張る。
それだけでいいと思う。
それはハングリー精神に勝るとも劣らない精神だと俺は思ってる。
期待して応援し続ける人がいる限り、諦める事無く走り続けてほしい。
サポーターは試合が終わるまで諦めたり、応援を止めたりはしないのだから。
それが真の侍魂だと思うよ。

アジアカップも、2年後のオリンピックも、4年後のW杯も、その後も・・・
生きてる限り、俺は日本代表を応援します。

ガンバレ!日本!