名張市の南郊外、曽爾山系を縦断する国道368号線沿い、上長瀬国津神社境内の上長瀬庵に安置されて居る大きな石仏さん達。
上長瀬は木津川に注ぐ名張川のずっと上流域に在り、山間僻地の小規模な棚田を前に懷かしい景観の集落です。
蛇行する名張川右岸、旧道脇に国津神社が有り、境内脇に集会所を兼ねた上長瀬庵と呼ばれるモダンな小堂が建ち、石仏を安置して居る。
扉を開け中に入ると正面に三体の石仏・・・・向かって右から一石三十三観音石仏、中央には阿弥陀立像、左端には、ちょっと妙な笠塔婆。
一石三十三観音石仏は高さ2mばかりの舟形の中に五段六列、その上に三仏を配置し三十三観音として居る。
最上部には略式の天蓋、最上部中央には西国一番札所「那智山青岸渡寺」の如意輪観音・・・・
各尊はそれぞれ蓮台に載る高さ約20cmばかり、所々に欠落は有るものの保存状態も良さそう・・・
左端には三十三観音石仏を示唆するような笠塔婆・・・・
正面下部には「奉納 西国三十三所祈願礼 貞亨元年(1684)八月十日」と刻まれ、また、元禄二年(1689)銘を持つ、伊賀市青山別府の「十王石仏」と同作風により、それより少し先立つ造立だと思われる。
一方中央に立つ阿弥陀石仏は・・・
高さ2m足らずの舟形自然石の正面を鏨痕を残して彫り下げ、うちに1m足らずの阿弥陀立像?を厚く刻み出す。
この石仏は火災に遭い、殆ど頭部のみを残し無残な姿似成っています。
頭部には頭光背、穏やかで端正な顔立ちは、おそらく室町期中期前の匂いがします。
首の断裂跡がいかにも痛々しいが、尊顔だけが無傷に近いのは、奇跡だとしか言い様がない。
上長瀬の昔話に行者堂が火事に成ったと言う行が有りますが、その火事の犠牲者かも・・・。
撮影2012.4.8