東北大震災の原発事故以来何かとマスコミの話題になる事が多くなった福島県。
その福島市中心街近く、あの百人一首の「みちのくのしのぶもじずり・・・・」で聴き慣れた信夫山(しのぶやま)東斜面にある岩屋観音境内に数多くの磨崖石仏が刻まれている。
福島県には、平安後期から鎌倉時代にかけての磨崖仏とともに、江戸時代の磨崖仏や独特な石仏も多く、九州大分県と並び称されるローカル色豊かな石仏の宝庫です。
磨崖石仏を陳列棚よろしくこれだけ多く、 まるで安売りのバーゲンセールのように並び立てられては、幾ら石仏好きでもちょっと混乱してしまいます。
急な石段参道を一気に登ると岩山を前にして僅かな境内、右手脇には鎌倉時代に開基され、聖観音を祀ったという観音堂。
やっぱりここでも赤茶けた凝灰岩の岩壁全面に大小の龕を設けた磨崖石仏が刻まれ、その数は60体以上にも及ぶ。
石仏は江戸時代中期になり、京都を中心とする西国三十三観音霊場巡りが民衆に浸透、ここまで伝わり、庶民の篤い信仰心から造立され、西国三十三観音を中心としたそれの供養とで岩山一面埋め尽くされている。
宝永6年(1709)の銘が示すように江戸中期造立のものが殆どですが、中には明治時代のものも有るとか・・・。
<第二十四番摂津の国 中山寺十一面観音>
優しい顔立ちにまだまだ彩色がしっかり残って居ます。
西国三十三観音を模したミニ石仏は畿内のあちこちで良く見受けられるが、こんな遠隔地の東北でこれほど見事な磨崖の三十三観音石仏に出逢うとは・・・・。
壁面は、いたるところでひび割れ風化も激しく、賞味期限切れの様な石仏も多いのですが・・・
<第三十三番 谷汲山華厳寺十一面観世音菩薩>
畿内で見かける三十三観音の多くは、大抵小さく決まったように画一的な量産石仏なのだが・・・・・、そうかと思えばここのものは厚肉磨崖に彩色までして、こんなに素晴らしい像高2m近いものも有る。
第二十九番、松尾寺馬頭観音、その下には口の部分でひび割れ、まるで大笑面の様な千手観音??
信仰に寄せる庶民の熱い思いがストレートに伝わってくるような・・・・
第二十一番、穴太寺聖観音・・、少々傷んでますが彩色痕も残りなかなか凛々しい顔立ちです。
供養仏には東北地方では滅多に見かけない不動明王や・・・
こんな弁財天像も見られる。
江戸時代中期以降の石仏と言えば、画一的で形式的なこじんまりした物ばかりを見慣れているせいか、ここの磨崖石仏はその範疇を遥かに越えて庶民の闊達な信仰心が力強く感じられる。
撮影2012.9.24