さすが石塔王国の感が有る滋賀県、全国的にも数が少ない石造多宝塔が旧石部町東寺の長寿寺参道脇に建ち尽くして居る。
<桧皮葺の瀟洒な長寿寺山門>
石造多宝塔ではそう遠くない旧甲西町少菩提寺跡多宝塔が重要文化財指定として有名ですが、よく似た形と大きさを持ちながら、ここ長寿寺の物はあまり紹介される事もない。
長寿寺は琵琶湖の東、所謂湖南アルプス西斜面山懐の鄙びた東寺集落奥に建つ古刹、寺伝では、奈良時代に聖武天皇の勅願により、良弁が紫香楽宮の鬼門を封じるために創建したと伝えられ、 鎌倉初期の古式な桧皮葺本堂は国宝にも指定されているほどの名刹です。
多宝塔は山門から本堂への参道右脇の木立の中にその独特な姿で建ちつくしている。
小さな切石を何個も並べて二段の低い基壇を設け台形の薄い繰り出しを持つ基礎石を載せ塔身、屋根石、饅頭型などを積みあげて居る。
総高約3.6m、あの重文指定の少菩提寺跡のものに比べても決して退けを取らない。
基礎石に載る塔身は四面共に粗面で銘らしきものはなく、少し細めで背が高い。
饅頭型上部の屋根石の上に更に笠石を載せ、相輪に変え宝珠を置いているが、上層屋根石から上部は妙にアンバランス。
造立銘がなく確定できませんがその様式や酷似性から少菩提寺跡多宝塔(鎌倉中期)を、そう下ることはないと考えられて居る。
境内傍らにはこんな石塔の残欠も有り、この相輪がもしやと思ったり・・・・。
撮影2010.2.20