愛しきものたち

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京都府京田辺市天王 極楽寺九重石塔/阿弥陀三尊種子板碑

2012年08月25日 | 石塔:石造物

昔流に言えば昨日紹介の高船の隣在所、天王集落極楽寺にも九重石塔と阿弥陀三尊種子板碑が、新しくなった境内山門脇に立っている。

高船からは尾根道伝いに約2km北東へ、大阪枚方の尊延寺(そえんじ)からも約2km、ここもまた幹線道路とはすっかり離れた山懐の隠れ里。

はるか東に山城平野を貫く木津川を見渡す山襞に軒を連ねる。

極楽寺より奥の斜面に鎮座する朱智神社牛頭天王(ごずてんのう)を祀る事からこの名が付けられたと言われています。

集落西端高台にある極楽寺は、鎌倉時代の嘉暦年中(1326~1328)開山、つい最近の平成18年境内が整備され本堂や庫裡が新築されて真新しい。

真新しい山門を入って直ぐの右脇、境内石垣ギリギリに瀟洒な九重石塔と先の尖った板碑が並び立って居る。

九重石塔は高さ約3.3m、相輪は途中で欠損、九層目屋根石は後補、基礎石に寛正五年(1464)の銘を刻み、室町時代中期の造立。

初層軸部には線彫り月輪の中、薬研彫りの金剛界四仏を刻み込んで居る。

南西に向かって建つ本堂に対峙する石塔は、東面を正面に向け、阿シュク如来の「ウーン」を刻む。

向かって左側は北面、不空成就(ふくうじょうじゅ)如来の「アク」を刻む。

種子の薬研彫りは室町中期の物にしてはかなり深く、味わいが有る。

傍らの板碑の山形頂部は鋭く、額には二条線を持ち、正面に鎌倉様式の蓮台に載る、向かって右に観音種子の「サ」、左に勢至種子の「サク」。

その上部、幅いっぱいに確かな線彫りの月輪の中、阿弥陀種子の「キリーク」を鋭く深い薬研彫りで刻んでいる。

下部には鎌倉末期正中二年(1325)の銘を刻み、総高107cm、近くの共同墓地から移されて来たようです。

京都では珍しい鎌倉時代の板碑で、国の重要美術品に指定されている。

撮影2011.3.31