愛しきものたち

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高瀬磨崖石仏

2010年01月11日 | 石仏:九州

大分市内にも見るべき磨崖石仏がこんなにもたくさん有ったとは・・・。

大分市内中心街より車で南に約15分,霊山という信仰の山の麓、大分川の支流七瀬川近くの丘陵に高さ1.82メートル、幅4.39メートル、奥行き1.52メートルの岩窟を穿ち奥壁の中央に結跏趺座(けっかふざ)する胎蔵界大日如来像を中心にして彩色の残る五尊の石仏が刻み出されている。

小さな空間にも関わらず天井まで伸びた彩色や像影、親近感のある優和な造作に目を見張らずには居られない。

付近は小さな田園が集落の間に点在する長閑な景色が広がっている里山で僕の住む山城と何の違和感もなく親しみやすい。

屈の正面には無粋な柵はあるものの何とか撮影は出来るのでこれも保護の為には仕方がないと諦めざるを得ず、レンズだけを柵の間に差しいれての撮影になって画像は納得できるものにはならない。

中尊大日如来

中尊は頭上に宝冠をいだいた法界定印の胎蔵界大日如来坐像で像高約1.4m、丸彫り近い厚肉彫りで唐草文様の二重光背が、奥壁に沿って天井まで達していて迫力ですが、左腕は肩先で欠損、右腕も膝上で手首から欠損している。

他の4体は半肉彫りで、大日を中央にして向かって左から深沙大将(しんじゃたいしょう)、大威徳明王(だいいとくみょうおう)、大日を挟んで如意輪観音(にょいりんかんのん)、馬頭観音(ばとうかんのん)と余り見慣れない諸尊の配列で非常に興味深い.

深沙大将

特に木造彫刻の仏像でも見ることが稀な深沙大将は童顔にも係らず、逆立った頭髪、つり上がった眉と見開いたドングリ眼で、首には九個の髑髏首飾り、赤い褌と寅皮の袴を身に着け、両脚と左手には蛇がからみつき、腹には少女らしい顔が描かれているのも異様ですが。腹部のこの人面は内に優しい気持ちを持っていることを表現したものだそうで、インド系の匂いを強く感じます。

大威徳明王

如意輪観音

馬頭観音

中尊の脇にある水牛に乗る大威徳明王、如意輪観音像、馬頭観音などは一見コミカルで漫画的な稚拙な彫りのように見えるが、しかしそれが妙に生き生きしていて親しみやすく感じます。

中尊の大日如来は特に前方に突出して、ほとんど丸彫りに近く、やっぱり一番大きな存在感を感じます。

平安末期から鎌倉初期の像立だといわれていますが、もしこれほどのものが京都や奈良に残っていれば、きっとこれほど真近で写真を撮る事など出来ないだろう。

昭和9年に国指定史跡に指定されています。

又、磨崖の直ぐ脇の崖には一本の蓮の茎から出た一根三茎仏の阿弥陀三尊仏も刻まれていて珍しい。

撮影2009.12.28

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