労務問題(残業代請求、不当解雇など)を多く扱う顧問弁護士

残業代請求、サービス残業、不当解雇などの労務問題のほか、顧問弁護士(法律顧問)として日々接する問題をまとめていきます。

不当な解雇(リストラ)が争われた判例

2011-03-25 17:31:11 | 不当解雇(リストラ)
今回は、不当解雇(リストラ)に関する判例を紹介します。 
第1 上告代理人佐藤興治郎の上告理由について
1 上告理由のうち民訴法312条2項1号及び2号に掲げる事由がある旨主張する部分について
 民訴法23条1項6号にいう「前審の裁判」とは,当該事件の直接又は間接の下級審の裁判を指すと解すべきであるから(最高裁昭和28年(オ)第801号同30年3月29日第三小法廷判決・民集9巻3号395頁,最高裁昭和34年(オ)第59号同36年4月7日第二小法廷判決・民集15巻4号706頁参照),労働審判に対し適法な異議の申立てがあったため訴えの提起があったものとみなされて訴訟に移行した場合(労働審判法22条参照)において,当該労働審判が「前審の裁判」に当たるということはできない(なお,当該労働審判が同号にいう「仲裁判断」に当たらないことは明らかである。)。したがって,本件訴訟に先立って行われた労働審判手続において労働審判官として労働審判に関与した裁判官が本件の第1審判決をしたことに違法はない。論旨は採用することができない。
2 その余の上告理由について
 論旨は,理由の不備・食違いをいうが,その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
第2 上告代理人佐藤興治郎の上告受理申立て理由(ただし,排除された部分を除く。)について
1 本件は,上告人の従業員であった被上告人が,上告人による普通解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上是認し得ないもので違法であるとして,上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)ア 被上告人は,平成12年8月16日,建設機械器具の賃貸等を業とする会社である上告人に雇用された。被上告人は,同日から同17年3月まで営業部次長を,同年4月からは営業部長を務め,同19年5月1日には統括事業部長を兼務する取締役に就任した。
イ 上告人の就業規則35条1項2号(以下「本件規定」という。)は,普通解雇事由として「技能,能率又は勤務状態が著しく不良で,就業に適さないとき」を掲げている。
(2)被上告人は,酒に酔った状態で出勤したり,勤務時間中に居眠りをしたり,社外での打合せ等と称し嫌がる部下を連れて温泉施設で昼間から飲酒をしたり,取引先の担当者も同席する展示会の会場でろれつが回らなくなるほど酔ってしまったりすることがあった。
 このため,被上告人の勤務態度や飲酒癖について,従業員や取引先から上告人に対し苦情が寄せられていた。上告人の代表取締役社長(以下「社長」という。)は,被上告人に対し,飲酒を控えるよう注意し,居眠りをしていたときには社長室で寝るよう言ったことはあるが,それ以上に勤務態度や飲酒癖を改めるよう注意や指導をしたことはなく,被上告人も飲酒を控えることはなかった。
(3)ア 被上告人は,平成19年6月4日(月曜日),取引先の担当者と打合せをする予定があるのに出勤せず,常務から電話で出勤するよう指示されたのに対し,日曜日だと思っていたと弁解した。被上告人は,その後連絡を取った部下の従業員からも出勤するよう求められたが,これにも応じず,結局,全日にわたり欠勤した(以下,この欠勤を「本件欠勤」という。)。
 社長は,被上告人に代わって上記取引先の担当者と打合せをしたが,この打合せの後,同取引先の紹介元であり,上告人の大口取引先でもある会社の代表者から,被上告人を解雇するよう求められた。
イ 被上告人は,同日の夜,社長と電話で話をした際,酒に酔った状態で「(自分を)辞めさせたらどうですか。」と述べた。この言葉を聞いた社長は,苦情を寄せている従業員や取引先から被上告人をかばいきれないと考えた。
(4)社長は,被上告人の上記発言を退職の申出ととらえ,翌日の取締役会で被上告人の退職の承認を提案したところ,被上告人を弁護したり慰留すべきであるとしたりする取締役がいなかったため,退職が承認された。
 上告人は,被上告人が自主的に退職願を提出しなかったことから,同月15日付けで被上告人を解雇した(以下,これによる解雇を「本件解雇」という。)。その後上告人が被上告人に送付した書面によれば,本件解雇は本件規定に定める解雇事由に基づくものとされている。
3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の請求を一部認容すべきものとした。
(1)本件解雇の時点において,被上告人の勤務態度の問題点は,本件規定に定める解雇事由に該当する。
(2)しかし,社長は,本件欠勤まで,被上告人に対し,勤務態度や飲酒癖を改めるようはっきりと注意や指導をしておらず,かえって被上告人を昇進させたために,被上告人に自分の問題点を自覚させることができなかった。また,上告人は,本件欠勤の後も,取締役の解任,統括事業部長職の解職,懲戒処分など,解雇以外の方法を講じて被上告人が自らの勤務態度の改善を図る機会を与えていない。
 このような事情からすると,上記の他の手段を講じることなくされた本件解雇は,社会通念上相当として是認することができず,被上告人に対する不法行為になる。
4 しかしながら,原審の上記3(1)の判断は是認することができるが,同(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係によれば,被上告人は,入社直後から営業部の次長ないし部長という幹部従業員であり,平成19年5月以降は統括事業部長を兼務する取締役という地位にあったにもかかわらず,その勤務態度は,従業員からだけでなく,取引先からも苦情が寄せられるほどであり,これは被上告人の飲酒癖に起因するものであったと認められるところ,被上告人は,社長から注意されても飲酒を控えることがなかったというのである。
 上記事実関係の下では,本件解雇の時点において,幹部従業員である被上告人にみられた本件欠勤を含むこれらの勤務態度の問題点は、上告人の正常な職場機能,秩序を乱す程度のものであり,被上告人が自ら勤務態度を改める見込みも乏しかったとみるのが相当であるから,被上告人に本件規定に定める解雇事由に該当する事情があることは明らかであった。そうすると,上告人が被上告人に対し,本件欠勤を契機として本件解雇をしたことはやむを得なかったものというべきであり,懲戒処分などの解雇以外の方法を採ることなくされたとしても,本件解雇が著しく相当性を欠き,被上告人に対する不法行為を構成するものということはできない。
5 以上と異なる見解の下に被上告人の請求を一部認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。 
第3 結論
 以上説示したところによれば,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人の請求は理由がないから,第1審判決中上告人敗訴部分を取消し,同部分につき被上告人の請求を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
なお、不当解雇(リストラ)について専門家に相談したい方は、不当解雇(リストラ)に強い弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、従業員の解雇についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当解雇(リストラ)について争われた裁判例

2011-03-15 17:11:40 | 不当解雇(リストラ)
今回は、不当解雇(リストラ)に関する判例を紹介します(つづき)。 
(2)本件解雇の当否について
ア 本件解雇理由の存否について
(ア)解雇理由1について、原告がゴミの回収の手伝いについて注意を受けたこと以外は、いずれも認められる(1(2)イ)。
(イ)解雇理由2について、3月17日の日報の「Cから受け取った請求書を早合点して投函したのはうかつであり、今後は指示されない限り自己判断を控える」という記載(1(2)エ)によれば、そのような事実があったと認められる。これに対し、原告は、通常の業務の流れに従って投函した後に、納品未了であるから発送してはいけないと指摘されたと主張するが、この事実は認められない。
 原告は、2月27日、X新聞社の担当者との間で、軽いとはいえないトラブルが生じたことが認められる(1(1)イ)。この件については態度が横柄であった相手にも非があるということができるが、そうだとしても、「本気で死ねばいいと思った」とか、「しばらくX新聞の『X』の字も見たくない気分」という態度を見せた原告は、社会人として相当のマイナス評価を受けてもやむを得ないものというべきである。
 原告は、書類の紛失が多い点についてDと相談して善後策を検討していることから(1(2)イ)、その事実が認められる。
(ウ)解雇理由3ないし5は、認定事実のとおりである(1(2)イ~エ)、同6の事実は争いがない。
イ Cは、3月6日の時点で、原告に対し、「行動、態度を改め、自分の責任を自覚して仕事をするようになることがAさんが今後当社社員であり続けるための絶対条件です」というメールを送信しており(1(2)イ)、遅くともそのころには、原告が社員の適格性を疑い、よほどの改善のきざしが見えなければ退職させるつもりであったと考えられる。また、Cは、3月23日以降、原告に対し、現状のまま勤務させるのは難しいと伝えたり、日曜日、携帯電話に翌日の早出を求める連絡を入れたり、欠勤した日の夜、自宅近くの喫茶店に呼び出して退職する方向で考えてほしいなどと言ったり(同エ)しており、かなり強く退職勧奨をしたというべきである。
 しかし、被告は、4月9日に本件解雇の意思決定をするまでは、原告に対し、仕事を続けたいのでこうするという意見表明の機会を与えて、退職を選択しない余地を残している(1(3)イ)。それにもかかわらず、原告は、気持ちの整理がつかないという理由で出勤しなくなり、被告の解雇の意思決定前であるのに、繰り返し解雇理由を書面にして郵送することを求め、それが実現しないと今度は、うつ状態の治療のため、1か月間休職するという休職願を提出して解雇を避けようとした(1(2)エ、(3)イ~エ)。このような経緯において、被告は、それまでの原告の勤務状況等も考慮したうえで、これ以上原告の雇用を継続することはできないと判断して、本件解雇の意思決定をしたと認められる。
 そうだとすると、本件解雇(平成21年4月6日)当時の原告は、「身体、精神の障害により、業務に耐えられないとき」(就業規則30条〔1〕)、「勤務成績が不良で、就業に適さないと認められたとき」(同条〔2〕)に該当すると認められるのであり、また、本件解雇は合理性相当性を欠くものということはできない。
ウ 前記のとおり,原告は、被告の社員らによる集団的いじめや嫌がらせを受けたものではないから、原告のうつ状態は、業務上の傷病と認めることができない。 
 したがって、本件解雇は解雇理由が存在せず、もしそうでなくても合理性相当性を欠き無効という原告の主張は失当といわざるを得ない。
第4 本件の結論
 以上のとおりであるから、原告の請求はいずれも理由がない。したがって、主文のとおり判決する。
なお、不当解雇(リストラ)について専門家に相談したい方は、不当解雇(リストラ)に強い弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、従業員の解雇についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当な解雇(リストラ)の裁判例

2011-03-10 17:10:31 | 不当解雇(リストラ)
今日は、不当解雇(リストラ)に触れている判例を紹介します(つづき)。 
(3)平成21年4月の経緯
ア 原告は、4月1日、遅れて出勤したが電話にも出ずに座ったままであったために、心配したDが昼食に誘ったところ、会話を録音してもよければ参加すると言った。Dは、これを承諾して、Cを交えて昼食をとり、食後もう少し原告と話そうとしたが、原告はこれを避けた。(証拠略)
イ 原告は、4月2日、出勤せず、Cに対し、うつ状態で精神科を受診していることを明らかにして、解雇理由を書面にして郵送するよう求めた。さらに、翌3日、ミーティングへの出席は避けたほうがよいという医師の助言に従って欠勤した。これに対し、Cは、同日、被告が求めていることは、原告が被告に対し何らかの手段を取るのか、それとも被告で仕事を続けたいのでこうするという意見表明をするのか、待っている状態であるという返信をした。(証拠略)
ウ 原告は、4月6日、Cに対し、あらためて解雇理由を書面にして郵送するよう求めたが、Cは、同日、上記イと同じく、どのようにしたいのか意見を聞きたいという返信をした。Dは、原告とCのやりとりが堂々めぐりになっていると感じて、同日、原告に対しメールを送信して,被告に戻る気持ちがあるか否かきちんと答えることを勧めたが、原告は、これに返信をしなかった。(書証略)
エ 原告は、平成21年4月9日、被告に対し、「うつ状態の治療のため、4月6日から5月6日までの間、休職する」という休職願を郵送した。被告は、この時点で原告を解雇するという意思決定をして、休職願を受理せず、4月10日、原告に対し、4月6日付けで本件解雇の通知をした。(証拠略)
2 認定事実に基づく判断
(1)集団的いじめや嫌がらせの有無について
ア 原告は、Cの指示に従い日報を提出していたが、日報に反省点を記載しなければ叱責されたため、毎日、どんな些細なことでも反省点を探し出して記載せざるを得ず、不合理な自己批判を強制されたと主張して、原告本人(12ページ)に、これと同趣旨の供述部分がある。
 しかし、本件の事実経過を通じて、原告は、日報に反省点を記載しなかったことを理由にCから叱責された形跡がうかがわれない。また、被告(C)は、仕事に慣れるペースが遅く、電話応対にも助言を必要とした原告に対し(1(1)ア)、教育指導的観点から少しでも業務遂行能力を身につけさせるために、日報の作成を命じたと考えられるのであり、不合理な自己批判を強制したものではないことが明らかである。この点に反する上記供述部分は、そのまま採用することができない。 
イ Cは、3月6日、原告の仕事の仕方について社内でヒアリングをしたところ、書類をファイルする場所を間違えることなどが多く、そのたびに他の社員が時間をかけて探し出しても、感謝の姿勢を見せないとか、積極的に接客をしないとか、業務と関係のないウェブサイトを閲覧しているなどという問題点の指摘があった(1(2)イ)。D証人の証言等によれば、このような指摘は、いずれも真実というべきものと認められる。
 そうだとすると、原告は、社員らから集団的に個人攻撃を仕掛けられていると認めることができない。
ウ Dらは、3月13日、顧客から原告のテレアポの感じが悪いという苦情を受けたことから、原告と、テレアポの仕方についてミーティングを持ったのであり(1(2)ウ)、そこに原告に対するいじめや嫌がらせの目的は認められない。その中で、Dは、原告の勤務態度について、かなり厳しく注意をしたことがうかがわれるが、その内容は、声を大きくすること、電話の件数をこなすのではなくアポイントの取得を目指すべきであることなど、上記の苦情に対する改善策として至極もっともなものであり、いじめ等に当たるものではない。原告に対し、議事録を作成させ、その場でその読み合わせをしたことや、原告と被告の社員一人ひとりとの関係を説明させて、誰もが上司であり先輩であることを確認したことも、部下に対する教育指導の範囲を逸脱したものということができない。
 Dは、原告の直属の上司であった当時はもちろん、原告との感情のぶつかり合いがあって上司を外れた後においても、原告の成長を期待して助言したり、励ましたり、話合いの機会を持つことを試みたりしている(1(1)イ、(2)イ、(3)ア・ウ)のであり、原告に対し、いじめや嫌がらせ目的で辱めと感じるような仕打ちをするとは考えにくい。
エ 原告は、その仕事ぶりが評価されていたとする一方で、被告の社員らから集団的いじめや嫌がらせを受けたと主張する。しかし、そのようないじめ等の動機・目的は不明といわざるを得ず、上記主張は不自然である。
 したがって、被告の社長や社員による集団的いじめや嫌がらせを受けて多大な精神的苦痛を被ったという原告の主張は、失当というべきである。
なお、不当解雇(リストラ)について専門家に相談したい方は、不当解雇(リストラ)に強い弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、従業員の解雇についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当解雇(リストラ)の裁判例

2011-03-06 17:09:15 | 不当解雇(リストラ)
今回は、不当解雇(リストラ)に関する判例を紹介します(つづき)。 
第3 争点についての判断
1 前提となる事実のとおり、被告は、平成21年1月、試用期間を短縮して原告を本採用にしたこと、原告は、いじめや嫌がらせの原因として、平成21年2月以降の事実を主張していることから、以下、本採用後の事実に基づいて争点についての判断をする。前提となる事実と証拠(略)によれば、本件の争点に関連するものとして、次の事実が認められる。
(1)平成21年2月の経緯
ア 被告は、平成21年1月、試用期間を短縮して原告を本採用にしたが、Bは、原告の仕事に慣れるペースが遅いと感じており、2月12日、原告に対し、電話を受けたときは必ず相手の名前を確認して、聞き取れなかったら丁寧に問い直すよう助言した。(書証略)
イ 原告は、2月27日、取引先のX新聞社の担当者に対し、過剰入金の有無を電話で問い合わせたとき、相手の態度が横柄であったために、いらいらしていた。こうした中、原告は、担当者から、「調べて電話する。名前は」と尋ねられたので、「私ですか」と問い返したら、「あんたに決まってるだろう」と強い口調で言われたことから、同じく強い口調で「Aです」と答えて電話を切った。
 その様子を見ていたDは、怒って泣き出した原告を落ち着かせようとしたが、原告が「本気で死ねばいいと思った」とチャットに記載したのを見て言葉を失った。当日の午後、Cは、この件の経緯について、一応原告をかばったうえで、相手の立場に立って応対するよう忠告した。その後、Dは、原告に対し、原告の態度次第で被告が損失を被るおそれがあることを指摘したが、原告は、「しばらくX新聞の『X』の字も見たくない気分」と返答した。Dは、顧客を顧客と考えていないことに不安を感じつつ、いつまでも顧客に対し怒りの感情ばかりだと成長できないと助言した。(証拠略)
(2)平成21年3月の経緯
ア 原告は、3月4日、Bから、電話に出るときは「もしもし」ではなく、被告の社名を名乗るよう注意を受けた際、謝罪の態度を示す一方で、「あんまりいきなり指摘されるのもちょっと」と不満を漏らした。また、同日、Cから、外部からの電話や顧客対応について、「改善の余地がある。突き放したような言い方や愛想のない言い方はよくない」と指摘されて、どのようにしたらよいか考えるよう指示を受けた。(書証略)
イ Cは、3月6日、原告の仕事の仕方について社内でヒアリングをしたところ、書類をファイルする場所を間違えることなどが多く、そのたびに他の社員が時間をかけて探し出しても、感謝の姿勢を見せないとか、積極的に接客をしないとか、業務と関係のないウェブサイトを閲覧しているなどという問題点の指摘があったことから、原告に対し、他の社員が原告をフォローし、ミスをカバーしていることを指摘したうえで、「このメールを読んだら、さっそく改善方法を考えてください。他の人に相談してもいいですから。そして私に報告してください。行動、態度を改め、自分の責任を自覚して仕事をするようになることがAさんが今後当社社員であり続けるための絶対条件です」という指示をした。これに対し、原告は、3月9日、日報で、Cに対し、反省点として、書類の紛失が多い点はDと相談して善後策を検討したこと(紛失書類の例が、書証(略))、来客に気づくよう気をつけること、私用のインターネットは自粛することなどを挙げた。(証拠略)
 Dは、3月9日、原告に対し長文のメールを送信して、表現を慎重に選びながら、周囲に対する心遣いの重要性、指導を受けたときの態度や電話応対に依然として問題があることなどを指摘して、「少しずつでも成長していってください」と励ました。(書証略)
 原告は、3月11日、Cから、明るい笑顔ではきはきと話す、電話が一本調子にならないように適当な間をとって話す、「あっ」とか「えーっと」という単語をはさまないという注意を受けた。(書証略)
ウ 原告は、3月13日、Cから、電話応対について注意を受けた。また、同日、顧客であるY社から原告のテレアポの感じが悪いという苦情を受けたことから、Dらは、原告と、テレアポの仕方についてミーティングを持ち、声を大きくすること、電話の件数をこなすのではなくアポイントの取得を目指すべきであることなどを指摘して、議事録を作成させ、その場でその読み合わせをした。また、Dは、原告と被告の社員一人ひとりとの関係を説明させて、誰もが上司であり先輩であることを確認した。原告は、このとき、Dから勤務態度についてかなり厳しく注意されたと感じた。(証拠略)
 原告は、週明けの3月16日、Dに対する態度を一変させて、翌17日、Dに対し、「だいたいどういう人だかわかった」、「あなたのためを思ってと言う人間に関わって良かったことはない」、「感情抜きでやっていきたい。今までいろいろヘマしていたのはそのせいもある」などとチャットに記載した。Dは、原告の成長を期待して勤務態度等について助言をしてきたのに、このような批判を浴びたことにショックを受けて、Cに対し、これ以上原告の上司はできないから交替させてほしいと願い出て了承された(Cが原告の直属の上司を兼ねることになった)。原告とDは、他の社員が仲裁に入って、それぞれに対し謝罪をした。(証拠略)
エ 原告は、3月17日、日報に、Cから受け取った請求書を早合点して投函したのはうかつであり、今後は指示されない限り自己判断を控えるという反省の弁を記載した。(書証略)
 被告は、3月23日、役員会議で、原告に対し、現状のまま勤務させるのは難しいと伝えて、その意見を聴くことにした。そして、Cは、原告に対し、仕事上のミスについてどのように考えているかをまとめて、翌日までに提出するよう指示した。しかし、退職勧奨を受けたと感じた原告は、ショックが大きく考えをまとめることができないという理由で、これを提出しなかった。(証拠略)
 原告は、3月26日、27日、日報にミスをしたという記載をした。Cは、3月29日(日曜日)、原告(携帯電話)に対しメールを送信して、今後のことで話があるので翌日は午前8時50分に出勤するよう指示した。しかし、原告は、3月30日、出勤せず、3月31日も、気持ちの整理がつかないという理由で出勤しなかった。Cは、同日夜、原告を自宅近くの喫茶店に呼び出したうえ、「退職する方向で考えてほしい。明日から引継ぎに入ってほしい」と言った。なお、原告は、同日、心療内科を受診してうつ状態という診断を受けた。(証拠略)
なお、不当解雇(リストラ)について相談がある方は、不当解雇(リストラ)を弁護士に相談してください。また、企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉敷金返却・原状回復義務借金の返済刑事弁護を要する刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当解雇(リストラ)

2011-03-05 17:07:15 | 不当解雇(リストラ)
今日は、不当解雇(リストラ)に触れている判例を紹介します(つづき)。 
(2)本件解雇の当否
ア Cは、3月23日、原告に対し、「この仕事はミスマッチだった」、「今後どうするか考えてほしい」などと言って、解雇も示唆しながら退職勧奨をした。しかし、具体的な理由が示されず、原告は、納得できなかった。
 Cは、3月29日(日曜日)、原告(携帯電話)に対しメールを送信して、今後のことで話があるので翌日は午前8時50分に出勤するよう指示した。原告は、再び退職勧奨を受けるに違いないと追い詰められた気持ちになって、体調を崩して寝込んでしまった。そのため、翌30日、出勤できなかったが、Cは、午後7時30分ころ、原告を自宅近くの喫茶店に呼び出したうえ、「退職する方向で考えてほしい。明日から引継ぎに入ってほしい」と言って、理由を示さずに退職勧奨をした。
イ 原告は、3月ころから食欲が減退し、情緒不安定になって些細なことで涙が出たり怒鳴りそうになることがあり、3月31日、心療内科を受診して、うつ状態という診断を受けた。
 原告は、4月1日、被告の社員らに対し、解雇は納得できないというメールを送信したところ、Cから、3月30日に納得したのではないかと反論された。そこで、原告は、あらためて、C、B、Dとの話合いに臨んだが、「今すぐここで笑顔を作ってみなさい」とか、「裁判などで訴えるのはいいが、その後復帰しても職場の雰囲気が悪くなるだけ。気持ちよく働けない」などと一方的に責められたうえ、「会社を去るのか、会社に残り上司に心から従うのか、今決めなさい」と強く迫られた。驚いた原告は、「ちょっと時間をください」と言ったところ、「ちょっととか言って」と叱責されたうえ、4月3日のミーティングで意見表明をするよう命じられた。
ウ 原告は、4月3日、ミーティングへの出席は避けたほうがよいという医師の助言に従って欠勤し、Cに対し、解雇理由を書面にして郵送するよう求めた。しかし、これを無視したCの不誠実な態度によって、原告は、体調が悪化し、4月6日、うつ状態の治療のため、最低1か月間の休職が必要という診断を受けた。そこで、原告が、4月9日、被告に対し、休職願を郵送したところ、被告は、翌10日、原告に対し、本件解雇通知をした。
エ 本件解雇理由(書証略)について
(ア)解雇理由1について、原告は、業務と関係のないウェブサイトを閲覧をしたことがない。被告のオフィスには、入口を共有する他社の来客もあることから、接客がわずかに遅れたことがあったが、せいぜい数回程度にすぎない。ゴミの回収の手伝いについて注意を受けたことがない。
(イ)解雇理由2について、原告は、3月17日、Cから受け取った押印済みの請求書を、通常の業務の流れに従って投函した後に、納品未了であるから発送してはいけないと指摘されたのであり、その経過にミスはない。また、原告は、ただちに郵便局へ駆けつけて発送を止めており、何の実害も発生させなかった。
 原告は、2月27日、X新聞社の担当者に対し、過剰入金の有無を電話で問い合わせたとき、担当者から、「調べて電話する。名前は」と尋ねられたので、とっさに「私ですか」と問い返したら、いきなり態度が悪いと怒鳴られたことがある。しかし、原告は、あとで電話を受けるのが原告でよいものかと考えて問い返しただけであり、そこに非はないし、このことで後日、X新聞社との間で何らかのトラブルが生じたわけでもない。原告が怒鳴り口調で名乗って受話器を思い切り叩きつけたなどという被告の主張は、事実を歪めたものである。
 原告が重要種類を紛失したという点は事実無根である。原告は、そのほかにも深刻なミスをしたことがない。
(ウ)解雇理由3について、原告は、改善策を書面にして提出するよう指示を受けたことがない。
(エ)解雇理由4について、Dとの間で感情のぶつかり合いが生じたことは認める。しかし、前記(1)ウのとおり、Dは、原告をいじめていたのであるから、上記のぶつかり合いは、被害者である原告に不利に考慮されるべき事実ではない。
(オ)解雇理由5について、原告は、改善すべき点を伝えられて、意見をまとめるよう指示を受けたことがない。
(カ)解雇理由6について、原告のうつ状態は、集団的いじめや嫌がらせによる業務上の傷病であるから、被告が責任を負うべき事由であり、これを解雇理由にすることができない。また、就業規則31条(労働基準法19条1項)により、業務上の傷病にかかり療養のために休業する期間中の解雇は制限されるから、本件解雇はそもそも許されない。
 以上のとおり、本件解雇理由は、事実無根であるか、著しい誇張か、解雇理由になり得ないものかのいずれかであるから、本件解雇は無効であることが明らかである。
なお、不当解雇(リストラ)についてお悩みの方は、専門家である不当解雇(リストラ)を扱う弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事弁護を要する刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当な解雇(リストラ)

2011-03-02 17:05:24 | 不当解雇(リストラ)
今回は、不当解雇(リストラ)について判断している裁判例を紹介します(つづき)。 
ウ 被告は、6月4日、本件解雇の撤回を求めていた原告に対し、次の解雇理由(以下「本件解雇理由」という。原文の要旨をまとめたうえで箇条書きにし、便宜上番号を付して、それぞれ「解雇理由1」などという)を挙げて、原告の言動が、就業規則20条〔1〕、〔2〕に反し、就業規則30条1項〔1〕、〔2〕、〔6〕に該当すると回答した。(書証略)
「1 上司の度重なる注意勧告にもかかわらず、業務と関係のないウェブサイトを閲覧する、積極的に接客をしない、ゴミの回収を手伝わないなどの業務怠慢が継続したこと
2 重要書類を上司の確認を得ずに投函する、クレームに発展した顧客からの電話に対応できずに途中で切ってしまう、重要書類を紛失するなどの深刻なミスが目立ったこと
3 特に、重要書類の紛失について、再発防止のために改善策を書面にして提出するよう指示を受けたがこれを無視したこと
4 そのような状態を心配した直属の上司(D)がアドバイスをしたところ、感情のぶつかり合いになり、他の社員が仲裁に入らざるを得なくなったこと
5 Cから改善すべき点を伝えて、意見をまとめるよう指示を受けたがこれに応じなかったこと
6 4月9日、うつ状態の治療のために1か月の休職願を提出したこと」
3 本件の争点
集団的いじめや嫌がらせの有無及び本件解雇の当否
4 原告の主張
(1)集団的いじめや嫌がらせ
ア 原告は、平成20年11月の入社後、熱心に仕事に取り組み、すぐに慣れた。被告は、この点を評価して、平成21年1月、試用期間を短縮して原告を本採用にした。
 ところが、Cは、平成21年2月16日、原告に対し、日々反省点を記載した日報を作成するよう指示した。原告は、これに従い日報を提出していたが、反省点を記載しなければ叱責されたため、毎日、どんな些細なことでも反省点を探し出して記載せざるを得なかった。このように、原告は、不合理な自己批判を強制された。
イ Cは、3月6日、原告に対しメールを送信して、原告の仕事の仕方について社内でヒアリングをしたところ、書類の管理が悪いとか業務と関係のないウェブサイトを閲覧しているなどという批判が出されたと指摘した。原告は、このような事実無根の指摘に接して、社員らから集団的に個人攻撃を仕掛けられているという恐怖を感じた。
 被告においては、業務上の連絡から雑談的会話まで、スカイプのチャット機能が利用されていた。個々のチャットの内容は、チャットを交わしている者同士でなければ知ることができないので、原告は、常に、社員らがチャットを利用して、原告の悪口を言い合っているのではないかという不安を感じていた。
ウ 原告は、3月13日、Dらと、原告のテレアポの仕方についてミーティングをした。その中で、Dは、部下に対する教育指導の範囲を逸脱して、原告に対し、何度も議事録の書き直しを命じたり、「(顧客から)声が低く小さいなどといったお叱りを頂いた」と記載させて、それを全社員の前で音読させたり、社員らに対して反抗的であるなどと非難して、全社員を原告より上位であることをわざわざ言わせたりした。このような仕打ちによって、原告は、辱めを受けたと感じた。
エ 原告は、被告の社員らの集団的いじめや嫌がらせを受けて、多大な精神的苦痛を被った。この苦痛を慰謝するに足りる額は、300万円を下回らない。また、被告の社員らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、46万円である。
なお、不当解雇(リストラ)についてお困りの方は、専門家に相談すべきですので、不当解雇(リストラ)について弁護士に相談してください。また、企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

不当解雇(リストラ)

2011-03-01 17:02:57 | 不当解雇(リストラ)
今回は、不当解雇(リストラ)について判断している裁判例を紹介します。 
第2 事案の概要等
1 事案の概要
 原告は、被告の正社員として一般事務等に従事していたが、平成21年4月6日、身体、精神の障害により業務に耐えられないことなどを理由として解雇された(以下「本件解雇」という)。
 本件は、原告が、被告の社長や社員による集団的いじめや嫌がらせを受けて多大な精神的苦痛を被り、さらに本件解雇は解雇理由が存在せず、もしそうでなくても合理性相当性を欠き無効などと主張して、被告に対し、〔1〕不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償346万円及びこれに対する不法行為後である平成21年4月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払い、〔2〕雇用契約上の地位確認、〔3〕平成21年4月6日から同月20日までの賃金11万3500円及びこれに対する支払日の翌日である同月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払い、〔4〕平成21年5月から本判決確定まで毎月25日限り賃金22万円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求めている事案である。
 これに対し、被告は、集団的いじめや嫌がらせの事実を、原告が業務上の指導をいじめ等と曲解しているという理由で否認し、また、本件解雇は解雇理由が存在し、合理性相当性も認められると主張して、原告の請求を争っている。
2 前提となる事実(証拠の記載のあるもの以外は争いがない)
(1)当事者等
ア 被告は、電話帳、新聞等の広告に関する情報の収集、市場調査等を目的とする株式会社である。
 被告の代表取締役は、本件解雇当時はCであり、現在、Bである。被告は、D(旧姓(略)、平成21年3月17日まで原告の直属の上司)ほか数人で構成される小規模企業である。
イ 原告(昭和54年生)は、平成20年11月10日、期限の定めのない雇用契約を締結して被告に入社し、郵便物管理、業務の進行管理、備品発注等の一般事務に従事して、12月からはテレアポという電話による営業活動もするようになった。
 原告の賃金は、月額22万円(毎月20日締め当月25日払い)であるが、原告は、平成21年4月6日以降、賃金の支給を受けていない。
ウ 被告は、平成21年1月、本来であれば3か月間であった試用期間を短縮して、原告を本採用にした。
(2)本件解雇
ア 被告の就業規則に次の定めがある。(書証略)
20条(服務心得)
 社員は服務にあたって、次の事項を守らなければならない。
〔1〕会社の方針及び自己の責務をよく認識し、その業務に参与する誇りを自覚し、会社及び役員の指揮と計画の下に、全員よく協力し、秩序よく業務の達成に努めなければならない。
〔2〕業務組織に定めた分担と会社の諸規則に従い、執行役員の指揮の下に、誠実、正確かつ迅速にその職務にあたらなければならない。
30条(解雇)1項
 社員は次の事由により解雇されることがある
〔1〕身体、精神の障害により、業務に耐えられないとき
〔2〕勤務成績が不良で、就業に適さないと認められたとき
〔6〕その他、第4章の服務心得等にしばしば違反し、改悛の情がないとき
イ 原告は、平成21年4月9日、被告に対し、「うつ状態の治療のため、4月6日から5月6日までの間、休職する」という休職願を郵送したが、被告は、これを受理せず、4月10日、原告に対し、4月6日付けで本件解雇通知をした。なお、解雇予告手当は支払われていない。
なお、不当解雇(リストラ)についてお困りの方は、専門家に相談すべきですので、不当解雇(リストラ)について弁護士に相談してください。また、企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。