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METAL・Rhapsody・第五章:決意

2018-10-14 10:27:53 | メタル・ラプソディー本文
『しっかりしろ! まだお嬢のオストリッチはやられちゃいないんだ! ここで踏ん張って、なんとかやり切れ!』

 ヘッドセットから流れるディーノの言葉。

 やや苦しい息遣いから、もしかしたら怪我をしているのかも、と思わせる、そんな痛みさえ感じさせる声。

「で、でも……相手はフルゴーヴァよ……オストリッチじゃ勝負には……」

『馬鹿野郎! 人間やってみなきゃわからないんだ! たとえ無理だと思っても、やってみなけりゃわからないんだよ! もしここでやらずに諦めたら、お嬢、お前はもうお終いなんだぞ! いや、お嬢だけじゃない! 俺やピーノや小母さんもお終いなんだ! やらずに後悔するよりも、同じ後悔をするんなら、やってから後悔しろ! だからお前はお嬢なんだ! 悔しかったら、さっさと行動に移してみろ!』

 オドオドしているシャールを叱咤するディーノ。



 その言葉にシャールは息が詰まる。

 それは今までのシャールを、そして今この時のシャールの心を深く、そして鋭くえぐった。

 手紙とプレゼントを渡そうとして渡せなかったあの日。

 好きという一言が言えずに逃げ帰ったあの夜。

 そして、今……

『私は、いつも……いつも後悔ばかりしてた……』

 シャールは暗く沈む心の奥底で膝を抱えて縮こまっている自分を見る思いがした。

 なにもできずに泣き続けてきた自分の後姿を。

『もう……嫌だよ……』

 瞳を伏せ、シャールは思う。

 だが、彼女はフルゴーヴァへの恐怖に立ちすくむばかりで身動きが取れない。

 あんなの相手にできるわけがない……

 そんな気持ちに囚われていた、その時……



「アイ・ファヴ・コントロール!」

「……え?」

 前の座席より声がした。

 それはピチュアの声だった。

 静かな、しかし決意がこもった決然とした声。

 シャールは一瞬、何を言われたのかわからなかった。

「お嬢様、コントロールを私にください。このままではやられてしまいます」

 ピチュアの冷静な声。しかしシャールはとり乱し、

「ダメよ! ピチュアは正規の訓練を受けてないわ! 戦闘なんて無理よ!」

 しかしピチュアは、

「お嬢様ができないのでしたら、私がやるしかありません。ここにはお嬢様と私しかいないのですから」

 その言葉にシャールは言葉を飲む。

「絶対にお嬢様には手出しさせません!」

 ピチュアの気迫に圧され、シャールは操縦桿から手を放す。すでにコントロールはピチュアに移っていた。

 ピチュアは操縦桿に力をかける。

 すると転倒していたオストリッチは足を交互に動かし姿勢制御に移り、やがて立ち上がる。

「ふん! まだ動くか。そうでなくては面白くねぇや!」

 外部スピーカーを通じてヴァルダークの声が響く。

 ヴァルダークは、この状況を嗜虐的に楽しんでいる。

「いきますよ!」

 ピチュアが叫ぶ。走り出すオストリッチ!

 しかし……

「あめぇよ!」

 フルゴーヴァがその強大な腕を振るう! 巻き起こる衝撃波!

 それは走り出したオストリッチのボディを再び打ちつけ、再び転倒させる!

「ま、まだまだ!」

 ピチュアが負けずに再び操縦桿に力をかける。起き上がるオストリッチ!

「ふん。けっこうしぶてぇな!」

 ヴァルダークの軽口と共に再びフルゴーヴァは腕を振るう! 衝撃波がまたオストリッチを襲う!

 だが、今度はそれをピチュアがうまく避ける。

 そして再び走り始める。

 今度こそ、ここを抜ける!

「お嬢様! 絶対にお守りします! そして任務も果たすんです!」

 ピチュアがいつもの穏やかな態度を捨てて叫ぶ。

「私ね、ずっと以前子供がいたんです。お嬢様のところに来る前に」

 駆け抜けようとするオストリッチをフルゴーヴァが遮る。急いで方向転換をするオストリッチ。

「でもね、流行病でね……そのとき、私たち夫婦はひどく落ち込んだんですよ」

 再びフルゴーヴァが放った衝撃波がオストリッチを襲う! すんでで避けるピチュア!

「旦那はまたやり直そうといいました……でもね、私はその時なにも返すことができなかった……」

 再びフルゴーヴァの脇をすり抜けようとするオストリッチを、今度はフルゴーヴァの蹴りが見舞う。

 周囲の土と共に軽い衝撃がボディを襲い、後方に飛ばされるオストリッチ。

 すかさず姿勢制御を試みるピチュア。

「あの時、もし私がなにか言葉を返していれば、私たちは終わってなかったかもしれないって、今も思いますよ」

 ややフルゴーヴァとの距離が開いたために、オストリッチは体制を整える。

 それを予測していたのか、大きく腕を振り回すモーションをとるフルゴーヴァ。

「だから、お嬢様には私のような思いをしてほしくないんです! もしもあの時、なんて、まだお若いお嬢様には早すぎます!」

 ピチュアのその一言と共に一気に走り出すオストリッチ!

 それ目がけて、振り回した腕から衝撃波を発するフルゴーヴァ!

「お嬢様! いきますよ!」

 襲い掛かる衝撃波を避けようと、一気に跳躍するオストリッチ!



 だが……



 激しい気流の塊がオストリッチのボディに激しく叩きつけられる。

 幾つかの外部パーツを散乱させながら、地面に派手な音と共に叩きつけられるオストリッチ。

 激しい衝撃がコクピットを襲う!



「……痛っ……お嬢様、すみません……」

 シートベルトで抑えられてはいるが、しこたまシートに体を打ちつけられたピチュアが涙声で呻く。

「私の腕では……やっぱり……」

「……アイ・ファヴ・コントロール……」

「……え?」

 ピチュアはいきなりの声に言葉を失う。だが……

「やっぱりピチュアには無理よ……私じゃないとね。私は、私の戦いをしないとね……」

「お嬢様……」

「ディーノも言っていたものね。後悔するんなら、やらずに後悔するよりやってから後悔しろって。それもそうよね……」

「お嬢様!」

 シャールの言葉にピチュアの顔が輝く。

「だから……アイ・ファヴ・コントロール!」

「はい! ユー・ファヴ・コントロール!」

 その一言と共に、オストリッチの操縦は再びシャールの手に戻る。

 そして、オストリッチのカメラに一筋の光が走った。



 操縦桿を握るシャール。

 だが、彼女自身もこれからどうすればいいのかはわからなかった。

 このまま突っ切ると、フルゴーヴァの放つ衝撃波を後ろから受ける危険性もある……

 そこに、ディーノから通信が入る。

『お嬢、無事か? 意識はあるか?』

 ディーノらしからぬ心配した声。

 その自分を心配する声に、シャールは少し嬉しくなったが気を引き締めて応える。

「ええ、なんとかね」

『こうもあいつのペースに振り回されるとはな……』

「でも、私もオストリッチもまだまだいけるわ!」

 シャールの声に、ヘッドセットの向こう側から小さな笑い声が漏れる。

『さっきの弱気はどこにいった? まぁ、いい。これからのことだが、やれるか?』

「条件次第なら……なんて悠長なことも言ってられないわよね」

『その通りだ』

「で、どうすればいいの?」

 シャールは言葉を切る。

 これからディーノの語る答えは、アドバイスではない。実行しなければならない命令なのだ。

『お嬢のオストリッチはあと何回も攻撃に耐えられないだろう。だから、もう逃げるのは無理だ』

「で?」

『だから、ここは攻めに向かう! あいつを倒すんだ』

 その一言をシャールは予測していたが、その実行が難しいことも知っていた。

 ディーノは続ける。

『オストリッチの最大の特徴はその足にある。走って走って走り回って、あいつをかき乱せ! その中に勝機がある』

「でもそれだけじゃ勝てないわよ?」

 シャールの問いにディーノがフッと笑い声を含ませ、

『お嬢、お前、俺が前に言ったことを忘れたか? オストリッチで正面から挑むのは馬鹿のやることだ。だったら、やれることは一つだけだろ?』

 ディーノの答えに、シャールも不敵な笑みを浮かべた。



「ん……まだ動くのか?」

 今さっきその衝撃波で破壊されたと思ったオストリッチが再び動き始める気配を感じたヴァルダークは意外そうな声を漏らす。

 フルゴーヴァの衝撃波を何回も食らって生き延びられる機体はそう多くはない。それが小型アクト・モビルであればなおさらだった。

「まぁ、いいか……今度こそバラバラにしてやる」

 獣にも似た残忍な笑みを浮かべ、ヴァルダークは再びフルゴーヴァに衝撃波を発するように指令を送る。

 その巨体が再び右腕を後ろに回し、そして一気を振り回す!

 その風圧の中から発せさられた衝撃波が、起き上がったばかりのオストリッチに襲い掛かる!

 だが……

「なに?」

 ヴァルダークは今自分が目にした光景を疑った。

 確かに衝撃波はオストリッチを捉えたはずだった。

 だがオストリッチはすでにそこにはなく、軽快なステップを踏み、衝撃波をかわしていた。

「馬鹿な……命中していたはずだ!」

 ヴァルダークが舌打ちする。

『まぐれだ……今度こそは……』

 喉元になにか不純物を流されたような感覚。

 そんな思いがヴァルダークを襲う。

 そして再びモーションをとるフルゴーヴァ!

 だが……

 オストリッチが急速にスピードを上げて突進してくる!

 それは先ほどの脇を抜けようという動きではない。

 それは、攻撃的姿勢を顕わにした動きだった。

『まさか……小型アクト・モビルが大型を相手に挑むだと……』

 ヴァルダークは心の中で毒づきながら、再び衝撃波を放つ!

 それはオストリッチの外壁をかすめた。

 いや、正確には、当たるはずだった衝撃波を、オストリッチがすんでで避けたのだ!

『ち……違う……さっきの奴の動きじゃねぇ!』

 脂汗を流しつつ、ヴァルダークが心の中で呻く。

 だがオストリッチはさらに加速する。

 その動きはフルゴーヴァを中心に大きく回り、その背後をとろうという動きに見えた。

 ヴァルダークもそれに気づきはしたが、旋回しながら攻撃するには、フルゴーヴァは重く、そして鈍すぎた。

「チィィィィィィィィィィィィィィィィ!」

 外部スピーカーから流れていることも忘れ、盛大に舌打ちを漏らすヴァルダーク!

 その声に反応するかのように、オストリッチはさらに後ろへ、後ろへと回り込む。

「やらせるかよぉぉぉぉぉぉ!」

 ヴァルダークはすでに焦り始めていた。



『だが俺は無傷だ。致命的な攻撃でも受けなければ、俺はやられはしねぇんだよ!』



 心の中で、そう自分に言い聞かせる。だが……

 突如フルゴーヴァを衝撃が襲う!

 ヴァルダークはとっさに外部モニターを見る。

 そこには、先ほど倒したはずのブールタックが起き上がり、フルゴーヴァへと衝撃波を繰り出していた!

「こぉぉぉうのぉぉぉ死にぞこないがぁぁぁぁぁぁぁ!」

 声を上げるヴァルターク。そして注意がそれる!



『今だ! いけ、シャール!』



 ヘッドセットから流れるディーノの声。

 オストリッチは、その距離を一気につめた!

「獲ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 コクピットの中に響き渡るシャールの声。

 その声と共にオストリッチは高く跳躍し、フルゴーヴァの背部にある排熱ダクトの高さまで、跳ぶ!

 そして、そこにありったけのビームバルカンの閃光を撃ちこんだ!

 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!

 低い発信音と共にフルゴーヴァの排熱ダクトを破壊するビーム弾! 次々と弾ける排熱ダクト!

 

 そして……

 フルゴーヴァは数歩歩きはしたが、背中に搭載したバッテリーが排熱ができなくなったために熱暴走をはじめ、そして臨界に達したそれは派手に爆発した!

 前のめりで倒れるように膝をつくフルゴーヴァ。

 やがて、この戦いが終わったことを告げるように、一陣の風が走り、赤い夕陽が周囲を鮮やかな緋色に染めた。

 <第六章:シャールへ>
ジャンル:
小説
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