店の主人は錫製のカウンターの後ろに立ち、巨大なジョッキから一リットル容器へと移し替える作業に余念がなかった。彼の店に上流階級らしい紳士が二人入って来るのを見ても、彼は大して驚いた素振りを見せなかった。しかしルコックは、まるでアルキビアデス(ソクラテスの弟子で、アテナイの政治家。アテナイを追放されたため、敵国スパルタに味方し、結果的にペロポネソス戦争でアテナイを敗北に導いた。弁舌が巧みで変わり身の早い人物として知られる)のように、どこに行っても気兼ねせず、その場その場で使われる専門用語を使いこなす人間だった。
「お宅の店で」と彼は居酒屋の主人に尋ねた。「十人ばかりの男たちの集団が誰かを待っていませんか?」
「ああ、そういう人たちなら一時間ほど前から来てるよ」
「奥の大部屋にいるんでしょうな?」
「さようでございます」店の主人はたちまち卑屈な態度になった。相手が誰なのか、はっきり分かったわけではないものの、パリ警視庁のお偉方の匂いを嗅ぎ取ったのだ。だから、この押し出しの立派な紳士が自分の店の構造を知っていることや、ためらいもなく大部屋に通じるドアを開けるのを見ても全く驚かなかった。奥の部屋というのは擦り硝子で仕切られただけのものであった。その中で、見かけが様々に異なる十人の男がカードをいじくりながらビールを飲んでいた。
ルコックとプランタ親爺が入って行くと、男たちは恭しく立ち上がり、まだ帽子を被っていた者たちは帽子を取った。
「よろしい、ジョッブ君」ルコックは一団の頭らしい男に向かって言った。「言ったとおりやってくれた。満足だ。君が連れて来た六人で私には十分だ。今朝私から命令を受けた三名もここに来ているからね」
ジョッブは頭を下げた。普段はあまり褒めたりしない上司を満足させたことを喜んでいた。
「君たちにはもうちょっと待って貰うよ」ルコックは続けて言った。「まず報告を聞いて、それによって指示を与えるから」
それから、聞き込みに行かせた三人の部下に向かって尋ねた。
「君たちのうち、吉報を持ってきたのは誰かね?」
「私です」と一人が答えた。背が高く、顔は青白く、あるかなきかの口髭を蓄えた、典型的なパリっ子といった青年である。
「また君か、パロー君、君は確かにツキを持ってるね。私と一緒に隣の小部屋に来てくれ。しかし、その前にこの店の主人にワインを一瓶注文して、誰にも邪魔されないように見張っているよう、言ってきてくれ」
すぐに命令は実行され、プランタ親爺を座らせた後、ルコックは自ら小部屋の簡易差し錠を掛けた。
「さぁ、話してくれ」と彼は部下に行った。「手短に」
「それでは。業者十数人に写真を見せましたが不首尾でした。サンペール通りにさしかかったとき、フォーブール・サンジェルマンの業者でレッシュという名前の男が、この顔に見覚えがあると言ったんです」
「出来れば、その男が言った言葉を正確に再現してくれないか」
「『これは』とその男は言いました。『私の客の一人です。この客は、一ヶ月ほど前に私の店に来て、家具調度品を丸ごと注文したんです。サロン、食堂、寝室、その他、最近借りた小さな私邸をしつらえたいのだと言って。この客は全く値切ろうとしませんでしたね。条件をつけたのはただ一点だけで、搬入、設置、カーテンや絨毯の取り付けまですべてを三週間でやってくれ、ということでした。つまり先週の月曜日までに、ということです』」
「お宅の店で」と彼は居酒屋の主人に尋ねた。「十人ばかりの男たちの集団が誰かを待っていませんか?」
「ああ、そういう人たちなら一時間ほど前から来てるよ」
「奥の大部屋にいるんでしょうな?」
「さようでございます」店の主人はたちまち卑屈な態度になった。相手が誰なのか、はっきり分かったわけではないものの、パリ警視庁のお偉方の匂いを嗅ぎ取ったのだ。だから、この押し出しの立派な紳士が自分の店の構造を知っていることや、ためらいもなく大部屋に通じるドアを開けるのを見ても全く驚かなかった。奥の部屋というのは擦り硝子で仕切られただけのものであった。その中で、見かけが様々に異なる十人の男がカードをいじくりながらビールを飲んでいた。
ルコックとプランタ親爺が入って行くと、男たちは恭しく立ち上がり、まだ帽子を被っていた者たちは帽子を取った。
「よろしい、ジョッブ君」ルコックは一団の頭らしい男に向かって言った。「言ったとおりやってくれた。満足だ。君が連れて来た六人で私には十分だ。今朝私から命令を受けた三名もここに来ているからね」
ジョッブは頭を下げた。普段はあまり褒めたりしない上司を満足させたことを喜んでいた。
「君たちにはもうちょっと待って貰うよ」ルコックは続けて言った。「まず報告を聞いて、それによって指示を与えるから」
それから、聞き込みに行かせた三人の部下に向かって尋ねた。
「君たちのうち、吉報を持ってきたのは誰かね?」
「私です」と一人が答えた。背が高く、顔は青白く、あるかなきかの口髭を蓄えた、典型的なパリっ子といった青年である。
「また君か、パロー君、君は確かにツキを持ってるね。私と一緒に隣の小部屋に来てくれ。しかし、その前にこの店の主人にワインを一瓶注文して、誰にも邪魔されないように見張っているよう、言ってきてくれ」
すぐに命令は実行され、プランタ親爺を座らせた後、ルコックは自ら小部屋の簡易差し錠を掛けた。
「さぁ、話してくれ」と彼は部下に行った。「手短に」
「それでは。業者十数人に写真を見せましたが不首尾でした。サンペール通りにさしかかったとき、フォーブール・サンジェルマンの業者でレッシュという名前の男が、この顔に見覚えがあると言ったんです」
「出来れば、その男が言った言葉を正確に再現してくれないか」
「『これは』とその男は言いました。『私の客の一人です。この客は、一ヶ月ほど前に私の店に来て、家具調度品を丸ごと注文したんです。サロン、食堂、寝室、その他、最近借りた小さな私邸をしつらえたいのだと言って。この客は全く値切ろうとしませんでしたね。条件をつけたのはただ一点だけで、搬入、設置、カーテンや絨毯の取り付けまですべてを三週間でやってくれ、ということでした。つまり先週の月曜日までに、ということです』」







