「さぁ、それでは、その人物の経歴、性格そして知能程度が分かっているとき、彼がどういう行動を取りそうか推測するには、どうすればよいか。まず、私は自分自身の個性を脱ぎ捨て、その代わりに彼のそれを身につけます。彼の知性を自分のそれと置き替えます。私は治安警察の刑事でなく、この男に、それがどんな人間であれ、なりきるのです。今の場合は、自分ならばどうするかは良く分かっています。どんな警察の追っ手でもまくことが出来るような手段を取るでしょう。ですが、ルコックのことは忘れてトレモレル伯爵がどうするだろうか、を考えてみます。さて、友人の妻を奪い、目の前でこの友人が毒殺されるのを放置しておくような卑劣な男の考える自己正当化とはどのようなものでしょうか。トレモレルは殺人を決意するまでに長い間躊躇していたことを我々は知っています。馬鹿者どもは運命と呼びますが、物事の論理的必然が彼の背中を押したのです。間違いなく彼はあらゆる角度からこの殺害を検討し、殺害後のことを考え、警察の捜査を免れる方法を模索したに違いありません。すべての行動はずっと前から計画され、決定されたのであり、なんの差し迫った必要にも不測の事態にも悩まされることなく練られたのです。彼が殺人の決意したとき、こう考えたでしょう。『さて、ベルトが殺され、俺の策略のおかげで俺自身も殺されたと人は思っている。ロランスは家から連れ出し、自殺を予告する手紙を書かせる。俺に金はある。さてどうすべきか?』
命題の立て方としてはこんなものですね」
「ああ、そのとおりじゃ」プランタ親爺が同意した。
「当然ながら、トレモレルは今まで話に聞いたことのある、あるいは自分で考えつく限りのあらゆる逃亡方法のうち、最も確実で迅速な方法を選んだことでしょう。外国への逃亡を考えたでしょうか? それは大いにありそうなことです。しかし、彼にも常識がないわけではないので、自分の足取りを消すには外国は全く適さないことが分かったでしょう。刑を逃れるためフランスを離れようとしてもろくなことになりません。犯罪者引き渡し協定というものがあるのに、国境を越えようなどというのは愚の骨頂というものです。その土地の言葉も話せない男と女がさ迷い歩いている図を想像してみてください。すぐに彼らは人目を引き、注目され、観察され、追跡されるでしょう。買い物をするたびにあれこれ言われ、一挙手一投足が土地の野次馬たちの好奇の目に曝されるでしょう。遠くへ行けば行くほど、捕まる危険性は高くなります。大西洋を渡って、弁護士が依頼人を食い物にするというあの自由なアメリカに行きますか? そのためには船に乗らねばなりません。ところが乗船用のタラップに足を乗せたその瞬間、もう終わりと考えた方が良い。二十対十九で賭けてもいいですが、港に着いた途端、逮捕状を持った警官が待ち構えているでしょう。言っておきますが、今言っているのは、外国人に対して目を光らせている逃亡先の国々の警察の調書を引いているだけです。ロンドンにおいてさえ、私はフランス人を一週間で見つけ出せると言えますよ。彼がイギリス人と見紛うほどの純粋な英語を話さない限りはね。トレモレルはこういうことを頭の中であれこれ考えたことでしょう。新聞に載っているような驚くべき出来事や、さまざまな失敗に終わった企てなどを頭に浮かべ、結局外国への逃亡は諦めたことでしょう」
「なるほど、たしかに」プランタ親爺は叫んだ。「まさに、そのとおりだ! わしらが探すべきはフランス国内じゃな」
命題の立て方としてはこんなものですね」
「ああ、そのとおりじゃ」プランタ親爺が同意した。
「当然ながら、トレモレルは今まで話に聞いたことのある、あるいは自分で考えつく限りのあらゆる逃亡方法のうち、最も確実で迅速な方法を選んだことでしょう。外国への逃亡を考えたでしょうか? それは大いにありそうなことです。しかし、彼にも常識がないわけではないので、自分の足取りを消すには外国は全く適さないことが分かったでしょう。刑を逃れるためフランスを離れようとしてもろくなことになりません。犯罪者引き渡し協定というものがあるのに、国境を越えようなどというのは愚の骨頂というものです。その土地の言葉も話せない男と女がさ迷い歩いている図を想像してみてください。すぐに彼らは人目を引き、注目され、観察され、追跡されるでしょう。買い物をするたびにあれこれ言われ、一挙手一投足が土地の野次馬たちの好奇の目に曝されるでしょう。遠くへ行けば行くほど、捕まる危険性は高くなります。大西洋を渡って、弁護士が依頼人を食い物にするというあの自由なアメリカに行きますか? そのためには船に乗らねばなりません。ところが乗船用のタラップに足を乗せたその瞬間、もう終わりと考えた方が良い。二十対十九で賭けてもいいですが、港に着いた途端、逮捕状を持った警官が待ち構えているでしょう。言っておきますが、今言っているのは、外国人に対して目を光らせている逃亡先の国々の警察の調書を引いているだけです。ロンドンにおいてさえ、私はフランス人を一週間で見つけ出せると言えますよ。彼がイギリス人と見紛うほどの純粋な英語を話さない限りはね。トレモレルはこういうことを頭の中であれこれ考えたことでしょう。新聞に載っているような驚くべき出来事や、さまざまな失敗に終わった企てなどを頭に浮かべ、結局外国への逃亡は諦めたことでしょう」
「なるほど、たしかに」プランタ親爺は叫んだ。「まさに、そのとおりだ! わしらが探すべきはフランス国内じゃな」








