エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

第二十二章 3

2018-04-01 07:02:57 | オルシバルの殺人事件
全員が急いでそれに応じようとした。ルコックはプランタ親爺のところに戻ってきた。
「間違いなく」彼はまるで脇台詞のように囁いた。「この灰は最近動かされています。そしてもし動かされたとすれば……」
彼はもう屈みこんでいた。そして灰を掻き除けると、火床の底にある石が露わになった。細い木片を取り、その先を石の窪み部分に容易に差し込むことが出来た。
「ごらんなさい」彼は言った。「セメントは全く使われていない。この石は動かせます。お宝はここに隠されているに違いない」
ツルハシが持ってこられた。たったの一振りでよかった。火床の石はぐらつき、かなりの深さの穴がぽっかり開いた。
「ああ」勝ち誇った調子で彼は叫んだ。「思ったとおりだ」
この穴には二十フラン金貨の棒包みが一杯詰まっていた。数えてみると、一万九千五百フランあった。このときプランタ親爺の顔には深い悲しみが刻み込まれていた。
『情けないことだ!』と彼は思っていた。『これが我が友ソブルシーの命の値段というわけか』
金と一緒に、ルコックは数字が一杯書かれた小さな紙切れを見つけた。これは骨接ぎ屋ロブローの台帳というべきものだった。左側には四万フランという数字が書かれてあり、右側にはさまざまな数字が記載されており、合計が二万一千五百フランとなっていた。それぞれの数字は彼が購入した物の価格を示していた。すべてが明らかになった。ソブルシー夫人はあの青いガラス瓶の代金として四万フランをロブローに支払ったのだ。ロブローの家で調べるべきことはもう何もなかった。プランタ親爺とルコックは隠されていた金を書き物机の中に入れ、至る所に封印をした。ここに居る男たちのうち二人がその警備のために残ることになった。
ルコックはまだ完全に満足はしていなかった。プランタ親爺が読んで聞かせてくれたあの原稿は一体何だったのだろう? ソブルシーが書いて彼に委託したという例の告発文書の写しであろう、と一時は思ったのだが、しかしそんな筈はない。ソブルシーは自分の最期のもがき苦しむ様まで書き残せた筈はないからだ。解明されぬままのこの点が、ルコックを苛立たせ、困難な仕事を成功裏に終えた喜びを曇らせた。今一度、彼はプランタ親爺から真実を引き出すことを試みようと考えた。それで、単刀直入に彼のコートの襟を掴むと窓際まで連れて行き、ごく無邪気な調子で尋ねた。
「ちょっとお伺いしたいのですが、我々はあなたのお宅には戻らないんですか?」
「その必要はないじゃろ。ジャンドロン医師が村長宅からここに来て我々と合流する筈でしょう?」
「つまり私の言いたいのは、あなたが昨夜読んで聞かせてくださったお話しの内容を予審判事にお伝えするのに、あの記録が必要なのではないかと思う、ということですよ」
ルコックは相手がこの提案に驚いて飛び上るだろうと待ち構えていたが、そうはならなかった。プランタ親爺は悲しげな微笑を浮かべ、ルコックをじっと見た。
「あんたは鋭いお人じゃな、ルコックさん」彼は言った。「じゃがわしも、あんたがあらかた察しておられるその最後の言葉は言わないでおくぐらいの才覚はあるのですよ」
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