タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

和食が中華料理!?。和食プロモーション痛恨のミス。

2021年09月26日 | Weblog
このブログで昨年秋に「ユネスコ登録版の「和食」は、中国文明に飲み込まれるリスク回避になる」https://blog.goo.ne.jp/ptamia/e/74c0b430cf1d05bdbd06f09f54416ddc
という文章を書きました。
2013年12月にユネスコが「和食」を登録した時の定義と、最近の食育で唱えられている「和食」の定義が実は違っていて、最近の食育で言う和食の中身が中国寄りだと指摘した内容でした。

そのときに、このまま放置したら「和食は中国文明の亜種」と誤解されかねないと指摘した訳ですが、それが今、実際にその通りになりつつあります。
先日、遠方に住む知人から、スーパーで買ったお惣菜の写真とレシートの写真が送られました。
「外見も味も、間違いなく和風おひたしなんですが、レシート上では『中華サラダ』と記されている。」と、知人は訴えるわけです。
写真をみたら確かにその通りで、菜っ葉のおひたしでした。

知人によれば、普通の和風だし+醤油の味付けだったとのこと。
「それなのにレシート上は中華サラダに分類されている。スーパーの担当者からは、和食も中華も区別されていないのでしょう。」ということですが、これはスーパーを責める訳には参りません。

 ユネスコに登録された和食は、新鮮な旬の食材を、おせちや節句などの家庭的行事で食べることで、しかも栄養バランスがとれることと定義されました。また、マスコミの取材に対し日本政府は、江戸時代の伝統食は栄養が偏り過ぎてたことから、日本の栄養バランスが改善された高度経済成長期に成立した食事が和食である、としました(この経緯は上記リンクからどうぞ)。

しかし、ユネスコに登録された定義は、次の3つの業界にとってはうれしくない定義でした。

 (1)高級日本料理店。なぜなら、職人の技を強調する日本料理は家族そろって食べる行事食ではない。
    節句など行事で食べるのでは無く、年がら年中接待などで食べるから。また、家族そろって食べるものではなく、子供抜きで商談などの場で食べるものだから。

(2)発酵食品業界。特に味噌や醤油など。なぜなら発酵食品は長期熟成して一年中食べるものであり、一方ユネスコ登録和食は、新鮮な旬の食材を行事で食べるものだから。

 (3)年中消費する伝統食材。例えば出汁。行事食は、七草がゆやぼた餅やひなあられ、丑の日のウナギ、のように、特定の時期に消費が集中するので、年中消費する食品のプロモーションにはうまくつなげられない。

こうした点などがあってなのか真相は不明ですが、ユネスコに和食を登録した直後から、農水省では和食の定義変更に着手しました。

電通を通じて日本館展示をしたミラノ万博で「和食の基本はお米中心の一汁三菜」と宣伝し、以降、日本国民に対してもそのような指導をなぜか押しつけています。そのため、家庭科教科書も近年そのように書き換えられました。
また、味噌や醤油などの調味料でおかずを味付けした「和ごはん」をもっと食べようというプロモーションを展開し、一方で、文部科学省ではお箸の正しい使い方指導に力をいれました。しかしそのようにすればするほど、和食は中華料理や韓国料理に似てくるのです。

なぜかというと、これら東アジアの食文化圏では、年中、お米を中心に味噌や醤油によく似た発酵食品で味付けした料理を、箸で食べているからです。

テーブルの形や箸の使い方など細部は違いますが、これらの食事形態は、他の文化圏から見たら酷似です。
「和食とは、お米中心におかずを味噌や醤油で味付けして、箸で食べるものだ。」と言い続けるほど、私たちの食事は、欧米やアフリカ・東南アジア・中央アジアから見て「中華料理とどこが違うの?同じじゃない?」と誤解されます。

そうならないためのユネスコ定義だったのではありませんか?


発酵食品ではなく新鮮な食材を吟味して上手に切って生食するか、調理するにしても煮たり焼いたりのシンプルな調理法を採用する、引き算の料理。そしてお祝いの行事で食べる、多様なものをバランス良くとる、箸かどうかなどは問わない、このユネスコ定義なら、手の込んだイメージの強い中華料理とは混同されないはずです。
中華料理は、ツバメの巣や北京ダックや月餅、肉と脂をふんだんに使う酢豚などの炒め物などが象徴するように、手をかけて食材を加工する足し算の料理であることを思い出してください。



「お米中心の一汁三菜にして味噌や醤油で味付けして箸で食べよう」と言う教育では、私たちは中国の属国と見なされます。和食とは何なのか、もう一度考え直さないと、もう後に引けない状況に来ているのではないでしょうか。

菜っ葉のおひたしが「中華サラダ」と表示される現状では、次のステージ到来もそう遠くない出来事でしょう。

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