Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

シチズンシップの未成熟な社会

2009年06月14日 | 「世界」を読む

今回のインフルエンザ騒動はいったん終息に向かっているようですが、これから冬に入る南半球での動向はWHOも、国内の専門家も注視しておられるようです。その動向次第では、今年の秋口より再び北半球で流行するかもしれません。

それで、正確な情報を得るために、このホームページをご紹介しておきます。

鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集

主宰しておられるのは外岡立人(とのおかたつひと)医学博士です。2008年3月まで小樽市保健所長を務めておられたようです。

この外岡博士が、「世界」09年7月号に今回のインフルエンザ騒動を振り返って、記事を一本投稿されておられます。その記事から、今回のというか、この度もというか、マスコミのパニック扇動報道を批判されている部分を書写します。

いつもながらわたしが強調したいのは、正確な情報を得たいのであれば、新聞、雑誌、TVを見るな、ということです。というのは、外岡先生のお話にこういうことがあったからです…


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4月30日、WHOがフェーズ5を宣言すると、日本の厚労省は待ってましたとばかり、用意していた「新型インフルエンザ対策行動計画」(2007年11月策定)をひもといた。

その行動計画はH5N1ウイルス(今回のウイルスは「H1N1」)を想定したものであったから、国内で発生しただけでたいへんな対策が始まり、都道府県で一人でも発病者が出たら、全学校を休校とする等の、全国的対策が盛り込まれていた。

しかし、どんな新型ウイルスによるものであっても、“新型インフルエンザ” という言葉で一括りにされてしまっていた。

ここから、日本におけるブタインフルエンザ対策は歯車が空回りしだす。

 


マスコミ各社は一様に “新型インフルエンザ” という呼称を使い出した。政府ももちろんそうである。行動計画にそって、対策はあっという間に進んだ。

各保健所に発熱相談センターが作られ、新型インフルエンザかどうかスクリーニングするための発熱外来も各地域で作られ始めた。もちろん寝耳に水に近い医療機関には、そうした外来をつくることを拒否した例も多かった。

国からの情報があまりにも少なく、ただただ行動計画に従っての指示だった。

かつての “仮想感染症” としてのH5N1ウイルスによる “新型インフルエンザ” 対策が、中身は問われずに、衣だけが取り扱われだしたのだ。

検疫が強化され、物々しい出で立ちで検疫官が空港ロビーや機内に乗り込む姿がTVで放映されるたびに、国民の多くは「あの」たいへんな新型インフルエンザが発生したと思ったはずだ。それは間違いなく錯覚だった。

TV局も各新聞社も、新型インフルエンザという “日本では定着してしまっていた” 言葉しか使わなかった。もちろん、ブタインフルエンザ由来で、その遺伝子にはブタインフルエンザウイルスの遺伝子以外にも、鳥とヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子が組み込まれている等の難しい説明はされていた。

しかし、こうした説明よりも、いま世界に登場した新型インフルエンザは、いままで耳にタコができるほど聞いてきたハルマゲドンのようなインフルエンザではなく、通常の季節性インフルエンザかそれ以下の病原性である説明を、国は十分にしなかった。

国の機関で働く医師の間でも実際に世界に広がりつつあるインフルエンザが、行動計画で対象になっている新型インフルエンザとは相当かけ離れて病原性が低いことを指摘し、過剰な対策は必要ないという意見も聞かれた。筆者のもとにも海外の国の機関で勤務している医官の方々から、日本の国の対策が過剰で、またマスコミ報道の過激さに驚いている、というメールが入ってきた。それは現地と比較してのことだから、海外では日本ほどの騒ぎになっていなかったようだ。

 


国内のマスコミの過激さは5月9日に国内初の感染者が見つかったという国の発表で頂点に達した。

「新型インフルエンザ陽性との結果が出たということであります!」

早口でまくしたてた舛添要一厚生労働相。TV各社はその発表を実況した。大臣はさらに次のように説明した。「落ち着いて対処をお願いしたい。早く発見し、早く治療すれば必ず治ります」。そう言って大臣は、三人の感染者が確認された旅客機の座席表を示しながら、機内にいた誰もが感染の可能性が高いことも強調した。

これは何の感染症のことを言っているのであろうか。エボラ出血熱患者でも見つかったというのだろうか。もし今世界中に広がりつつあるインフルエンザA(H1N1)だとしたなら、黙って寝ているだけで大多数は自然治癒するはずだ。筆者は耳を疑った。この大臣の発表内容に違和感を覚えた記者はあまりいなかったようだ。

翌日、筆者は以下のような内容をウエブ訪問者に伝えた。

 

 


【牙を剥いた日本のマスコミ】


久しぶりに獲物にありついたかのごとく、多くのマスコミは「新型インフルエンザ」なるものに食らいついた。

政府の閣僚会議よろしく、新聞社の編集委員会(…と言うのかどうか知らぬが)でひそかに記事プレゼンの方針が練られる。

そこでは、我が日本国民の安寧(社会生活の平穏の維持)のための記事作りではなく、いかに他者よりもインパクトのある内容にするかが議論される。

現代社会ではBCP(業務継続計画)は、危機発生時における社会の安寧のために、各組織で作成される。企業、自治体、マスコミ…。僕はマスコミのBCPはどういう内容なのかと想像してみる。

…(中略)…

単に他者と競争するように記事の掲載合戦をするのが、危機発生時のマスコミの役割と考えているのだろうか?

マスコミの新型インフルエンザ発生時の役割は、正しい情報を伝え、一般社会が平穏に向かうようなエネルギーの源となることだと、僕は思っていた。しかし、現在のマスコミには、新型インフルエンザに群がる、「新型インフルエンザグッズ」を販売する企業と変わらない姿勢を僕は見た。

なりふり構わぬ報道のなかには、非科学的記事や、煽りを目的としたような記事すら目につきだしている。マスコミは集団ヒステリーを起こすエネルギー源ともなりうる。日本のマスコミは未だその域を出ていないように筆者は感じる。

 

 

成田検疫で高校生たちの感染が確認されたとき、それを見越していたかのように各社は特集を組んだ。しかし、日本のマスコミは正しい事実を伝えなかった。それはマスコミ自身、正しい情報を知らなかったからではないか。

国は世界で発生しているインフルエンザ(H1N1)が、どのような特性を持っているのかをこの時点でマスコミにも、一般社会にも明確に伝えなかった。

ただ、世界で新型インフルエンザが発生したということと、それが成田空港で帰国した高校生で見つかったということだけしか語っていない。マスコミはそれだけの情報で驚くほどの多くの記事を書いた。

しかし、すでにこの時点で、 “新型インフルエンザ” の特性は米国でもWHOでも分かっていたし、それは絶えず発表されていたのだ。すなわち、抗インフルエンザ薬は服用しなくても自然治癒する、大多数の発病者は軽症である、ということなのだ。米国政府は5月6日、感染者が出た場合の2週間の休校の必要性を指示したガイドラインを改訂し、休校の必要性はないと発表していた。

日本にはすでにこのインフルエンザA(H1N1)ウイルスは入ってきていると、当初から筆者は思っていた。同じような考えを抱いていた専門家は少なからずいたはずだ。3月から4月にかけてウイルスはメキシコから米国南部に広がっていたのである。その間に感染して帰国した日本人がいないと考える方が無理である。感染していても潜伏期間中ならば発見できない。帰国後発病しても軽い。地域でインフルエンザは未だ流行していたから、そのなかに混じっていた可能性もある。

厳しい検疫は必要ないという声は現場からも出ていた。とくに医療職からそのような声が多かった。厳しい検疫の光景は、一見充実した対策がなされているような錯覚をわれわれに与えた。しかしその意義は医学的には疑問だったのである。

犯罪者のように隔離され、感染したことが感染者の責任であるかのようにバッシングされ、そして校長が父母たちに謝罪している報道すらあった。

明らかに日本は異常なのだ。
無知から来るパニック。

それは国に責任があるのか、マスコミに責任があるのか、それともわれわれ日本人がいまだ保有している閉鎖的感性にもとづいているのか、医学者である筆者には分からない。

ただ間違いのないことは、日本には健全な市民社会がいまだ確立されていない、ということである。

 

 

(「ブタインフルエンザは真の新型インフルエンザなのか?」/ 外岡立人・著/ 「世界」09年7月号より)


 

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