Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

アメリカに押しつけられる日本の政治

2007年05月27日 | 一般
今日のニュースによると、自民党の中からも、改憲を参院選の争点にすることに慎重な発言があることが伝えられていました。しかし、国民の意識はそんなに重大なことと受けとめてはいないようです。「60年経ったからそろそろいいんじゃないか」、「古い上着は入れ替えてもいい」と歌の詩のようなことばで受け答えする人がいるのも事実です。9条を変えたからといってそれで戦争ができる国になるとは思えない、という人もいます。

牧歌的だなあ、日本人は。つくづくそう思います。今月は憲法一色のエントリーばかりでしたが、日本の政治を操作するアメリカの思惑を書いた記事を紹介したいと思います。改憲ももちろんこの「アメリカの思惑」に含まれているのです。「アメリカの日本への思惑」は「アーミテージ報告」という文書で露骨に言い表されています。引用してみます。




「『第1次アーミテージ報告(2000年10月)』では、ブッシュ政権の対日指令のほぼすべてが盛り込まれていた」(「改憲を迫る米国の強圧」/ 本山美彦/ 「自然と人間」2007年5月号より)。

具体的には以下の諸事項があげられています。

1.
政治に関しては、政・財・官を結ぶ「鉄の三角形」を打破すべきであることを強調。

2.
安全保障に関しては、集団的自衛権を認めていないのは、日米同盟にとっての制約である。「日米防衛協力指針(ガイドライン)」は上限ではなく、下限(基盤)である。そのためにも「有事法制」を完成させるべき。ほかに、防衛産業面で日米が協力すること、MD(ミサイル防衛)でも両国は協力しなければならない。

3.
沖縄については、地勢的に依然として重要である。「日米特別行動委員会」合意に基づいて米軍基地の再編、統合、縮小を行うことが打出されているが同時に、アジア・太平洋地域への迅速かつ効率的に海兵隊が展開できる体制を整備すべき。

4.
諜報については、日米間の諜報能力の統合をめざす。その際、日本は日本固有の諜報能力を強化しなければならない。具体的には、諜報活動を合法化する立法の必要性がある。諜報活動の資金分担の均衡も日本に要求する。

5.
経済協力については、市場開放、グローバル化に民間部門が対応すること、規制緩和、貿易障壁の撤廃、経済の透明性を確保すること。日本はなかなかこの問題の解決に対応してくれなかったとして、次のような裏話を『第1次報告』は漏らしていた。

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業を煮やした歴代の米政権は、さまざまな通商政策のオプションを練り上げ、作り替え、日本政府がこれらを採択するように促してきた。(第1時アーミテージ報告)

***

何のことはない。米国の指令どおりに日本政府が動いてきたという国内からの批判に対して、日本政府は断固として否定してきた。しかし、このレポートは、米国政権がこれまでずっと日本政府に圧力をかけ続けてきたことを公然と漏らしていたのである。

ブッシュ・小泉政権下での「日米投資イニシアティブ」は、このレポートの要求の具体化であった。さらに、日本の労働者は「いごこちのよい終身雇用」の享受を止めるべきである、とまで「指令」されている。IT に関しては、それが規制緩和とビジネスの柔軟性をもたらすという位置づけが行われていた。

***

6.
外交に関しては、米国のアジアにおけるポジションを日本政府は支持すべきである、とした上で、日本が国連安保理常任理事国になる条件として、国際的な「集団安全保障上の義務を果たさねばならない」と「指令」していた。

こうした6つの分野への干渉以外に打ち出された事項を列挙しておこう。
銀行問題の処理、
財政金融刺激政策の継続、
橋・トンネル・高速鉄道建設の見直し、
会計制度の変更、
自由貿易協定をシンガポールだけでなく、韓国・カナダ・米国にも広げること、
農業保護の見直し、
ロシアの天然資源開発への協力、
インドネシア支援、等々である。


(同上)

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どうです、21世紀に入って、日本政府が行ってきた重要政策、法制定はみなこのなかに含まれているではありませんか。ため息が出ます。わたしたちって、いったいなんなんだろう。アメリカ人は19世紀にはアフリカ人を奴隷として買い付けて、使用していました。アメリカ人の意識の最も深いところでは、異民族、異人種、異宗教の人間観はまったく変わっていないんでしょうね、きっと。現行憲法がアメリカの押しつけだと騒ぐ前に、今現在の政策自体がアメリカの押しつけなんです。どうしてこのことにみんなもっと騒ごうとしないんでしょう。日本政府の現状とアフガニスタンの政府とどこがどう違うんでしょう。アメリカの傀儡同然じゃないですか。アメリカの軍事産業と政府のコングロマリットのための、日本は下請けなのでしょうか。こんな政治を続ける安倍自民党こそ売国奴だと罵倒されるべきではないでしょうか。

2007年2月に、今度は「第2次アーミテージ報告」が発表されたそうです。引用記事によると、「元駐レバノン大使・天木直人氏がとりあえずの評価だが、と断られた上で、『第2次アーミテージ報告』は、「日米安保条約の米国からの事実上の決別宣言である、と発言された。その根拠を同氏は2つ示している」。

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ひとつは、アジアの共産主義を防ぐことが目指されていた日米安保ではなく、米・日・中の調整によるアジア安全保障の構築を米国が考え始めていること、もうひとつは、自主防衛を目指した兵力充実、憲法改正、集団的自衛権の承認に踏み込もうとしている日本政府の動きを米国が歓迎していること、がそれである。

確かに、日米同盟のみを重視すれば、日米ともにアジアで孤立するといった認識が報告では示されている。アジア全体の安全保障を確保するためにも、「日本は自主防衛に責任を持つべきだ」と報告では書かれている。そのためにも、「日本は憲法問題を解決」しなければならないと指摘されている。

天木氏も危惧されているように、この報告を日本政府は、神の座に据えるのだろうか。


(同上)

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第2次報告は、アーミテージ自身はもちろん、グリーン前国家安全保障会議アジア上級部長といった、日本の財界に太いパイプを持つ人びとが作成に関与しているので、米国は必ず、この報告の内容に沿った対日圧力をかけてくるだろう、と筆者は見ておられます。その内訳の一部を以下のように紹介しておられます。

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日本の防衛費の増額要求。
「日本の総防衛費は世界で5番目であるが、対GDP比では134番目にすぎない。米国はなるべく早く、F22のような飛行連隊を日本に配置すべきだし、日本の航空自衛隊が、米国の最新鋭の戦闘機を導入するように図るべきである(同報告より)」と書かれている。

防衛庁時代には、独自の予算編成ができなかったが、「省」に昇格した防衛省は、首相を通さずに予算要求ができる。日本の防衛予算は、増額の一途をたどるであろう。高額の米国製最新鋭戦闘機、ミサイル、艦船を買わされるために。米国の軍産複合体にとって、日本はますますおいしい市場になるのである。

これまでの日米安保体制は、日本の軍事的強化を抑制する側面を持っていた。しかし、自主防衛を促し、憲法改訂までも示唆した今回の報告によって、日本はあたかも米国第51番目の州であるかのように、軍事活動を米国のために提供する義務を負うことになるであろう。

報告が、2020年以降も朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を開発し続けることの可能性を指摘し、「核問題は朝鮮半島の統一でしか解決できない可能性が高まっている」と叙述したことは、北東アジアでの軍事的緊張に日本の軍隊が対応すべきであることを示唆したものであろう。


(同上)

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21世紀に入ってこれまで、福祉・医療が効率重視に組み替えられ、国民の負担が増えてきていますし、増税も視野に入れられています。こうしたことが軍事費捻出を目しているとは、目の黒い多くの人びとが指摘してきたことですが、これからも確実に国民のための予算は削減され続けることが予測されます。防衛「省」昇格に見られるとおり、日本政府は確実にアメリカの要求どおりに政策を進めてきています。わたしたち国民はもはや感情にしたがって投票を行っているときではないのです。自分たちの生活が際限なく切り詰められてゆくのです。

第2次アーミテージ報告はさらに、アジアにおける市場支配をももくろみ、次のように指令を出しています。

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そうした軍事的な強化を促す一方で、報告には、APEC 重視の姿勢が見られる。2010年の日本でのAPEC 首脳会議の開催準備まで訴えているのである。これは日本やASEAN 主導下の東アジア共同体を牽制する意味である。APEC 中心のアジア編成を米国が日本に要求しているのである。おそらく米国は、中国を米国経済圏に組み込む決断をしたのであろう。就任後、まっ先に安倍首相が訪中したのは、そうした米国の対中戦略転換を反映したものだったのだろう。



この報告を梃子に、日米の「経済統合協定(EIA)」締結、憲法改訂と日本の自主的防衛力の増強を前提とした日米軍事同盟の強化が、安倍政権に突きつけられた米国の強硬な対日要求となることはまずまちがいない。


(同上)

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一般の、とくに若年層にみられる憲法改正賛成論者には、憲法に「日本の伝統色」をもっと明確に盛り込むべきといったような、牧歌的なイメージが持たれているようですが、米国が日本についてもくろんでいることは、もっと実利的で、もっと戦闘的な色合いのものです。わたしたちは今こそ、日本の自主統治、国民の真の益を考慮に入れた施政することと、国民の意識を形成を急がなければならないと、この記事を読んで、わたしはつくづくそう思いました。




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「憲法でこそ平和は守れる」

2007年05月27日 | 文学・芸術・雑学・健康
トリビア5




地方の「9条の会」に参加してみると、まだ年配者が優勢で、若い方々の関心が低いように感じられます。私自身も大学教員として、日本国憲法の問題が若い人たちに端的に伝わるように話しかけていく必要があると思っています。

その点で私は、「憲法守る」ではなく、「憲法守る」という言い方をしています。「憲法を守る」というと、「そんなことで日本の安全は守れるのか」と右翼的な人びとから攻撃されます。

それに対して、「日本国憲法の不戦平和主義でこそ、日本の平和と安全は豊かに守られる」と積極的に主張し、日本の安全保障政策をこの考えのもとに組み立てなおすべきだと主張しています。

最近の講演などで、もし安斎育郎(筆者)が内閣総理大臣になったらこうする、という安斎育郎の安全保障政策を「施政方針演説」として発表しています。

その内容は、今ある憲法を守れというのではなくて、憲法でこそ日本の平和と安全は守れる、我々の生きる将来が守られるというところに力点を置いて、積極的に打って出るべきだと言っています。

それが若者たちに理解してもらえていると感じています。


(「改憲論にダマされないために」/ 安斎育郎/ 「自然と人間」2007年5月号より)

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いい視点だな、とおおいにわたしは感心しました。憲法は神棚の飾りではないのです。現にこれまでは、憲法は神棚の飾りでしかなかったわけです、日本では。

たとえば、過重労働でうつ病に追い込まれ、年間何万人という人が自殺する、でも労働基準法を主張すると、クビにされるのが怖いからいいなりになっている、これは明らかに人権侵害です。憲法を活かして、労働者の人間としての尊厳を守るべく、主張するべきなのです。

たとえば、イラク人民への支援なら、なぜ自衛隊という武装した人びとが行かなければならないのか。非戦闘区域で働くというのであれば、民間の活動でも同じかそれ以上の効率でできるのです。なぜ憲法解釈を強引に変更し、または憲法にそぐわない法律をつくってまで、自衛隊が外国へ行くのか。(*1)

(*1)
日本国憲法98条:
この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

この憲法98条を活用すれば、「改正」教育基本法もイラク特措法も無効にできるんじゃないのかなあ…。(法律に詳しい方がもしこのブログをご覧になってくださっていたら、教えていただけないものでしょうか…)

憲法はもっと活用するべきだと、断然思っちゃいます…。

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