……というわけで,フタタビ,マタタビ抽象的マニュアル論の話であります。
ま,実を言いますと,以前,鏡スコットくん(注)に勧められて,どうにも短期療法というものがわかっていないと(小馬鹿にされ),読んだわけなんですね,↓↓↓↓
もう何年前になるでしょうか。この↑の「緑」の奴(第二版)じゃなくて,最初の青い表紙だったと思います。
まあ,はっきり言ってね,衝撃的だったわけです。
いや,ほんと,明日からも出来そうな気さえしたので……ま,できないと思いますけどね。
徹底的にマニュアルなわけですね,この本。原書のタイトルは,Interview for Solutionでありまして,「マニュアル」とも「手引き」とも書いていないのですが,でもやっぱ,マニュアルであり,手引きであって,そこにはいわば解決志向短期療法的な「ミラクル・クエスチョン」などいろいろ入っているわけですが,基本的には「傾聴」の技術を有効に使い(ロジャーズも引用していたんじゃないかと記憶),その思想的背景に「ノット・ノウイング」を用い,しょっぱなから「問題」を明確していくことで(まずはじめに「ゴール」を聞きますね),短いあいだに解決をめざすということが,非常に的確に書いてあります。
それはそれは鮮やかなほどでありますよ。皆さん,食わず嫌いは行けない。ちょっと読んでみたほうがいい。「マニュアルだろ?」と馬鹿にするのは(ワタシもしたんですが)もったいない。きっとどっか近しい人が持っている本だと思うので,じっくり読んでみるといいと思います。
真似しろ,というのじゃなく,その人なりの熟成度によって,何か自分のことが整理できるんじゃないかと,そんな風に思います。
というのも,この本,いろんなものの中心にいる気がするんですね。ロジャーズの傾聴やパーソンセンタード,ノット・ノウイング(これは,「ナラティヴ」のアンダーソンとグーリシャンの考えですね)は言うに及ばず,認知行動療法っぽいところもありますし,インスー・キム・バーグが韓国系米国人だからか,なんとなく東洋的な楽天的な諦観あるいは諦観的な楽天性,ま,いうなれば,ZenやTaoを感じる部分もあります。要するに,ごったまぜなわけです。けれども,心理療法とか心理援助というのものの,コアはがっちしと掴んでいて,普遍性がある。ユング派から行動学派まで,広くオススメしたいわけです。別にね,明日からスケーリング・クエスチョンを使え,とかいうことじゃないですけどね。
で,ワタシは読んでいて衝撃を受けたわけです。ジャパニに
こんな本を書ける人,いるの?
という感じで。
ま,でもね,マニュアルって作るの,難しいわけです。ほんとに。
他の人の考え→自分の仕事・経験←自分の考え
↓
他の人の考え→体系化←自分の考え
↓
マニュアル化
つて,書くの簡単だけど,これをやって,しかも,マニュアルが普遍的ないいものであることはとても大変だ!と,思ったわけであります。はい。たいていの本は,「体系化」以前の代物ですからね。
で,まあ,それ以来,会う人会う人に,「マニュアル」の話を聞いているわけです。聞くだけでなく,書いてみないか,とさえ言うわけです。仕事ですからね。
ところが,やっぱ,「マニュアル」って皆さん,あまりいい印象をお持ちじゃない。「手引き」とかいうと,多少,いい顔するんですが,それでも「手引き,ねぇ」(嘆息),という顔をする。
で,まあ,この「マニュアル」にいたる作業は,けっこうタイヘンなわけです。いや,まあ,ね,まず,できないですよ,できない。作業手順が決まっているような,例えば,車の修理だとかね,そういうのだったら,出来るかもしれない。でも,書いてみるとわかるんですが,読み手の理解度を想定しつつ書くわけで,読み手の理解度を低く見積もった場合,ケッコウ説明というのはメンドクサイ。ミミズを見たことがない人にミミズを言葉で説明するのは難しいのと一緒であります。でも,こうした簡単なマニュアル(辞書的な意味でのマニュアルはコレですね)は,修理や部品の交換が出来るだけでして,故障箇所の判定がつくわけではない。車の故障箇所の判定はけっこう難しいわけですよ。ウチの車,スピードメーターのバックライトが時々消えるんですが,修理工場持って行くと,ライトが点いている! 点いていると,どうして壊れたのかがわからない。でもやっぱ走っていると明かりが消えたりして,電線ケーブルを探ってみてもよくわからないという。ケーブル交換すればなくなるはず,というので,交換してみてもやっぱ同じ症状が出たりするわけですね。システムが複雑になっている。そうすると,個々の修理交換手順表では覚束ないわけでありまして,車のマニュアルにしても実際には膨大な量になるわけですよ。そんな感じで,「マニュアル」を書くのはタイヘンなわけです。
というわけで,複雑な対人心理援助サービス(そもそも不健康な人ほど複雑なところもあるでしょうし)は,マニュアルにするのはとても難しい。となると,「マニュアル化不可能」→「心理臨床にマニュアル不要」という図式になるんじゃないかと妄想的に思うんですが,ま,確かに,その通り。「解決のための面接技法」だって,全てを網羅しているわけじゃない。
同じように,
これらも,マニュアルとしてよく出来ている。でも,あらゆる場面で使える!ってことはないですけれどね。
だって,何にせよ,例外はあるもんです。あるいは例外だらけかも。
でもね,ほんと,書くのは苦労したろうな……。
で,まあ,なんで,ワタシがマニュアル化について,いろいろと考えているかというと,ま,ひとつに専門職の質の低下に関心があるからです。
こっちも,誠実さも,心意気も大してあるわけではないですが,やっぱ,対人援助サービスの専門職の質の低下は由々しきものがあるのではないかと考えてしまうわけです。
実際ね,きょうびの若い学生さんは……ま,ちょっと,まずい,アレなこともあるわけですな,ほんとに。
で,ま,これ,偏差値の問題とかじゃなくて,根本的に気がきかない奴が増えているような気がするわけです。
それは相対的な問題なのか,対人援助サービスになりたい青年たちにおける特殊な問題なのかわかりませんが,ちょっとまずい気がするわけです。
あっ,これ,気だけですよ。ほんと,母集団15人とかで話してますから。
ともあれ,そういう人がプロになる。下手をするとその人が次世代のプロを育てることにもなる。
職業としても学問としても崩壊します。
それは困る。
だから,マニュアル化です。マニュアル化をどんどこやって,質の低下を食い止めなくてはならないのではないか。かように思うわけでありますね。マクドナリゼーションって奴ですね。
いや,ほんと,事態はそこまで深刻なんじゃないかとさえ,思わないでもないわけです。
そういうわけで,マニュアル。
学派を越えんでも,統合せんでもいいんで,マニュアルを作るんがいいのでは,と,かように思うわけであります。
ガイドでも,手引きでも名称はどうでもいいんですけれどね,どうやったら自分たちの知見や経験や技術を,次の世代にうまく伝えられるか,ということを真剣に考えて,本を作らなければなりません。いや,ほんと,自戒を込めて,そう思います。インスー・キム・バーグ先生はそれをやった。バーグがやれたのは,アメリカの援助文化が成熟を迎えた,という地点にいたからじゃないかな,とも思いますが。ま,あと,マニュアル文化もある国ですしね。
そういう意味では,日本はこれから。萌芽は,あります。私の卑見で申し訳ないんですが,成田善弘先生の一連の書籍を見ていると,カッコつきの「マニュアル化」をされているのかな,という気がします。
そして,成田先生の心の師であろうところの(勝手な推測です),
という名著あり。
これらをマニュアルというと申し訳ないと思うんですが,大文字のマニュアルは,これらを消化した上で成り立つべきなんではないか,と力強く思うわけでありますよ。個性を超え。そして,個性へ。
遅れましたが,
nocteさん
すえぞうさん
トラバ,ありがとうでふ。
インスパイアされました。
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まあ,はっきり言ってね,衝撃的だったわけです。
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徹底的にマニュアルなわけですね,この本。原書のタイトルは,Interview for Solutionでありまして,「マニュアル」とも「手引き」とも書いていないのですが,でもやっぱ,マニュアルであり,手引きであって,そこにはいわば解決志向短期療法的な「ミラクル・クエスチョン」などいろいろ入っているわけですが,基本的には「傾聴」の技術を有効に使い(ロジャーズも引用していたんじゃないかと記憶),その思想的背景に「ノット・ノウイング」を用い,しょっぱなから「問題」を明確していくことで(まずはじめに「ゴール」を聞きますね),短いあいだに解決をめざすということが,非常に的確に書いてあります。
それはそれは鮮やかなほどでありますよ。皆さん,食わず嫌いは行けない。ちょっと読んでみたほうがいい。「マニュアルだろ?」と馬鹿にするのは(ワタシもしたんですが)もったいない。きっとどっか近しい人が持っている本だと思うので,じっくり読んでみるといいと思います。
真似しろ,というのじゃなく,その人なりの熟成度によって,何か自分のことが整理できるんじゃないかと,そんな風に思います。
というのも,この本,いろんなものの中心にいる気がするんですね。ロジャーズの傾聴やパーソンセンタード,ノット・ノウイング(これは,「ナラティヴ」のアンダーソンとグーリシャンの考えですね)は言うに及ばず,認知行動療法っぽいところもありますし,インスー・キム・バーグが韓国系米国人だからか,なんとなく東洋的な楽天的な諦観あるいは諦観的な楽天性,ま,いうなれば,ZenやTaoを感じる部分もあります。要するに,ごったまぜなわけです。けれども,心理療法とか心理援助というのものの,コアはがっちしと掴んでいて,普遍性がある。ユング派から行動学派まで,広くオススメしたいわけです。別にね,明日からスケーリング・クエスチョンを使え,とかいうことじゃないですけどね。
で,ワタシは読んでいて衝撃を受けたわけです。ジャパニに
こんな本を書ける人,いるの?
という感じで。
ま,でもね,マニュアルって作るの,難しいわけです。ほんとに。
他の人の考え→自分の仕事・経験←自分の考え
↓
他の人の考え→体系化←自分の考え
↓
マニュアル化
つて,書くの簡単だけど,これをやって,しかも,マニュアルが普遍的ないいものであることはとても大変だ!と,思ったわけであります。はい。たいていの本は,「体系化」以前の代物ですからね。
で,まあ,それ以来,会う人会う人に,「マニュアル」の話を聞いているわけです。聞くだけでなく,書いてみないか,とさえ言うわけです。仕事ですからね。
ところが,やっぱ,「マニュアル」って皆さん,あまりいい印象をお持ちじゃない。「手引き」とかいうと,多少,いい顔するんですが,それでも「手引き,ねぇ」(嘆息),という顔をする。
で,まあ,この「マニュアル」にいたる作業は,けっこうタイヘンなわけです。いや,まあ,ね,まず,できないですよ,できない。作業手順が決まっているような,例えば,車の修理だとかね,そういうのだったら,出来るかもしれない。でも,書いてみるとわかるんですが,読み手の理解度を想定しつつ書くわけで,読み手の理解度を低く見積もった場合,ケッコウ説明というのはメンドクサイ。ミミズを見たことがない人にミミズを言葉で説明するのは難しいのと一緒であります。でも,こうした簡単なマニュアル(辞書的な意味でのマニュアルはコレですね)は,修理や部品の交換が出来るだけでして,故障箇所の判定がつくわけではない。車の故障箇所の判定はけっこう難しいわけですよ。ウチの車,スピードメーターのバックライトが時々消えるんですが,修理工場持って行くと,ライトが点いている! 点いていると,どうして壊れたのかがわからない。でもやっぱ走っていると明かりが消えたりして,電線ケーブルを探ってみてもよくわからないという。ケーブル交換すればなくなるはず,というので,交換してみてもやっぱ同じ症状が出たりするわけですね。システムが複雑になっている。そうすると,個々の修理交換手順表では覚束ないわけでありまして,車のマニュアルにしても実際には膨大な量になるわけですよ。そんな感じで,「マニュアル」を書くのはタイヘンなわけです。
というわけで,複雑な対人心理援助サービス(そもそも不健康な人ほど複雑なところもあるでしょうし)は,マニュアルにするのはとても難しい。となると,「マニュアル化不可能」→「心理臨床にマニュアル不要」という図式になるんじゃないかと妄想的に思うんですが,ま,確かに,その通り。「解決のための面接技法」だって,全てを網羅しているわけじゃない。
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こっちも,誠実さも,心意気も大してあるわけではないですが,やっぱ,対人援助サービスの専門職の質の低下は由々しきものがあるのではないかと考えてしまうわけです。
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で,ま,これ,偏差値の問題とかじゃなくて,根本的に気がきかない奴が増えているような気がするわけです。
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学派を越えんでも,統合せんでもいいんで,マニュアルを作るんがいいのでは,と,かように思うわけであります。
ガイドでも,手引きでも名称はどうでもいいんですけれどね,どうやったら自分たちの知見や経験や技術を,次の世代にうまく伝えられるか,ということを真剣に考えて,本を作らなければなりません。いや,ほんと,自戒を込めて,そう思います。インスー・キム・バーグ先生はそれをやった。バーグがやれたのは,アメリカの援助文化が成熟を迎えた,という地点にいたからじゃないかな,とも思いますが。ま,あと,マニュアル文化もある国ですしね。
そういう意味では,日本はこれから。萌芽は,あります。私の卑見で申し訳ないんですが,成田善弘先生の一連の書籍を見ていると,カッコつきの「マニュアル化」をされているのかな,という気がします。
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方法としての面接―臨床家のために土居 健郎 医学書院 1992-03売り上げランキング : 29995Amazonで詳しく見る by G-Tools |
という名著あり。
これらをマニュアルというと申し訳ないと思うんですが,大文字のマニュアルは,これらを消化した上で成り立つべきなんではないか,と力強く思うわけでありますよ。個性を超え。そして,個性へ。
遅れましたが,
nocteさん
すえぞうさん
トラバ,ありがとうでふ。
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