PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

精神保健福祉法の改正とPSWの魂

2013年06月21日 22時19分24秒 | 精神保健福祉情報

今日は日中、清瀬であれこれやって済ませて、
夕方から、四谷の日本社会福祉士会に行って、
会議を二つ済ませて、22時前に帰ってきました。

それでも、23時過ぎの帰宅が常態化していたので、今日は早い方です。
その時間からの夕飯は、本当は良くないのはわかっているんですけど。
なかなか、そんな生活スタイルが改まりません。

明日、明後日は、いよいよ学内学会。
丸二日間、フル稼働になります。
どうか、参加者がたくさん来てくれますように♪

僕たちが日々慌ただしく過ごす間にも、政治は動いています。
今回の国会は、福祉やソーシャルワーカーにかかわる法律が目白押しでした。
それにしては、目立ったアクションもないままだったのが、気になりますが。

今日は、そんな中から精神保健福祉法改正の概要をピックアップ。
もう改正内容は、既にネットで十分周知されていると思いますし、
1250人集まった、先週の日本精神保健福祉士協会全国大会でも報告されましたが。

今後の精神保健医療福祉を占う、大事な法改正ですので。
やはり、ここで、きちんと取り上げておきたいと思います。
穴ぼこだらけの眉をひそめる困った改正法でも、その影響はやはり甚大です。

今回の法改正は、精神障害者の地域生活への移行を促進することを目標に掲げていますが、
その内容としては、精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)を策定し、
保護者制度を廃止し、医療保護入院における入院手続等の見直し等を行う、
といった、抜本改革には程遠い、いささか淋しいものでした。

医療保護入院は一切いじらないまま、保護者制度だけを廃止する…。
非自発的入院の同意を家族の責に帰すという、昔ながらの性格は何も変わっていません。
「なぜ精神保健福祉士が、家族に代わって担わないのか?」というご意見を頂きましたが、
「Y問題」同様の事案が起きることは明白で、当事者の権利擁護にはならないでしょう。

改正法の他の条文にも、精神保健福祉士がやたらと登場してきます。
国会の論戦でも、精神保健福祉士がやたらと語られています。
閉塞的な事態を打開するPSWへの期待の大きさが、表れているのでしょう。
パターナリズムではない価値を掲げるPSWが、ようやく認められてきたのでしょう。

ただ、そうした期待の大きさにPSWが充分に応えられているかというと、やや疑問です。
経営者や管理者と、十分に渡り合える「戦うPSW」がどれだけいるか?
他職種や他機関など、異なる文化・価値を持つ者と、どれだけ対等に協働できているか?
そして、何より当事者・利用者の主体性を尊重し、その利益をどれだけ追求できているか?

さまざまな場面で、精神保健福祉士が取り上げられる度に、思います。
先週、金沢であった全国大会のテーマは「PSWの魂の再生」でした。
新しい法律、新しい制度、新しい時代の中で、「戦うPSWの魂」とは何であったか、
多くの仲間たちと考え続けていきたいと思います。

 

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「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」概要

(1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定
厚生労働大臣が、精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとする。

(2)保護者制度の廃止
主に家族がなる保護者には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されているが、家族の高齢化等に伴い、
負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定を削除する。

(3)医療保護入院の見直し
1)医療保護入院における保護者の同意要件を外し、家族等のうちのいずれかの者の同意を要件とする。
  *「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人をさす。
    該当者がいない場合等は、市町村長が同意の判断を行う。
2)精神科病院の管理者に、以下を義務付ける。
  ・医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)の設置
  ・地域援助事業者(入院者本人や家族からの相談に応じ必要な情報提供等を行う相談支援事業者等)との連携
  ・退院促進のための体制整備

(4)精神医療審査会に関する見直し
1)精神医療審査会の委員として、「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」を規定する。
2)精神医療審査会に対し、退院等の請求をできる者として、入院者本人とともに、家族等を規定する。

2.施行期日
平成26年4月1日(ただし、1.(4) ①については平成28年4月1日)

3.検討規定
政府は、施行後3年を目途として、施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、医療保護入院における移送及び入院の手続の在り方、医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方、入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議
                                                                               
平成25年5月30日
参議院厚生労働委員会

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一、精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で高ぜられること。

二、精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。

三、精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、非自発的入院者の意思決定及び意思表明については、代弁を含む実効性のある支援の在り方について早急に検討を行うこと。

四、非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件を含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。

五、精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の機能強化の在り方を検討し、必要な措置を講じること。

六、非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。

七、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。

右決議する。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

平成25 年6 月12 日
衆議院厚生労働委員会

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づき、これを具現化する方向で講ぜられること。

二 精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。なお、指針の策定に当たっては、患者、家族等の意見を反映すること。

三 「家族等いずれかの同意」による医療保護入院については、親権を行う者、成年後見人の権利が侵害されることのないよう、同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと。

四 精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること。

五 非自発的入院の減少を図るため、「家族等いずれかの同意」要件も含め、国及び地方自治体の責任、精神保健指定医の判断等、幅広い観点から、速やかに検討を加えること。

六 精神疾患の患者の権利擁護を図る観点から、精神医療審査会の専門性及び独立性を高めることや精神医療審査会の決定に不服のある患者からの再度の請求への対応など機能強化及び体制の整備の在り方を検討し、必要な措置を講ずること。

七 非自発的入院の特性に鑑み、経済面も含め、家族等の負担が過大にならぬよう検討すること。

八 精神科病院の管理者に対し、医療保護入院について、可能な限り、患者の人権に十分配慮した入院、入院後の治療行為の患者本人への説明に加えて、速やかな退院の促進に努めることを指導徹底するとともに、医療保護入院等の患者の退院後における地域生活への移行を促進するため、相談対応や必要な情報の提供、アウトリーチ支援など、その受け皿や体制整備の充実を図ること。

九 認知症の人については、あくまでも住み慣れた地域で暮らし続けることを基本に置き、
精神科病院への「社会的入院」の解消を目指すとともに、地域の支援・介護体制の強化に
取り組むため、「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」の推進など医療福祉全
般にわたる総合的な対策を講ずること。

十 認知症の人の本人意思を尊重する観点から、成年後見制度の改善・普及のほか、本人の意思や希望をできる限り早期に確認し、それを尊重したケアの提供を確保する取組を進めること。

右決議する。

 

※画像は、エクセル東急金沢に掲げられた「PSW石川大会」の看板。