PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

「PSW研究室」炎上の弁明

2011年04月18日 03時53分00秒 | ブログのこと

先の「『心理カウンセラーお断り』の貼り紙」の記事について、記したいと思います。
この記事については、予想外の反響があり、おおいに物議を醸しているようです。
この際、発信した者として、僕の率直な意見と感想をコメントしておきたいと思います。

まず最初に、臆せずコメントを寄せて頂いた方々に、お礼を申し上げます。
僕の記した内容へ賛否両論ありますが、いずれの方にも感謝したいと思います。
それだけ、この記事の内容に、関心を持って真剣に受け止めて頂いたと考えるからです。

本来であれば、寄せて頂いたコメントの方、お一人ずつに返コメしたいところですが。
さすがにこれだけの数のコメントを頂くと、なかなかそう言う訳にもいきません。
この記事をもって、返コメに替えさせていただくこと、お許し下さい。

今日までに頂いた68件のコメントは、かなり多種多様です。
記事内容の事実関係を問うものから、僕自身の立場や人格を批判するものまで。
すべてに答えるのは無理がありますが、いくつかに整理して返答させていただきます。


■1.ネットの影響力について

率直に言って、今回の反応には、いささか僕はビックリしました。
ある程度の反応は予想していましたが、ここまでとは思いませんでした。
こんな個人ブログの一記事が、ツイッターで拡散していくとは、想定していませんでした。

ただし、ネットの影響力について無自覚であったかと言うと、そうではありません。
ネットは豊かな可能性を秘めていますし、まだまだ潜在する力があると思っています。
個人ブログを始めたのも、自分なりの情報発信を通して何か伝えられたらと考えたからです。

今回の東日本大震災については、マスメディア中心に被災地の様子が伝えられています。
でも、僕たちが仕事の上でも危惧している領域については、情報は乏しいままです。
様々な団体・個人から発信されているネットの情報が、本当に貴重に思います。

SNSの伝達力についても、今回、僕は身をもって直接感じることができました。
ただ、残念なのは、この記事の取り上げ方には、ややネガティブな扇動があったことです。
ツイッターを拝見すると、同一人物が繰り返し、この記事を取り上げているようです。


■2.コミュニケーションについて

ネガティブでアグレッシブな批判は、僕はとても大事だと思っています。
どろどろぐちゃぐちゃの怒鳴り合いのコミュニケーションも、時には必要です。
そういった議論がし難くなっている最近の学会等は、大変紳士的すぎて物足りなく、何も生まないのではとも思います。

少なくとも、ここにコメントを寄せて頂いた多くの方々は、真剣に考えて下さっている。
やや言葉足らずな僕の記事に対して、向き合い受け止めて下さっている。
被災地への支援のあり方を論じるそのことには、本当に僕は感謝しています。

ただ、そうは言っても、文字を介してのネット上のやりとりは限界があります。
特に、ネットの強みでもある匿名性が前提となっている点で、歪な関係が固定しがちです。
記されただけの文字は、ネガティブな感情反応を惹起する傾向が、どうしてもあります。

願わくば、この意見対立を止揚していくような、相互の共通理解が築ければと思います。
2チャンネルのような、匿名ゆえのネガティブな毒の吐き合いで終わるのではなく。
仮にも、僕たちは、対人支援サービスにかかわる者同士なのですから…。


■3.僕の立場について

コメント中に、僕の所属と氏名を明らかにせよ、との要求がありました。
その意図は、実名をネット上に流して、社会的に批判を加えたいということだと思います。
一応これ、匿名ブログなので、回答は差し控えさせて頂きます。

ただ、このブログの読んで頂ければわかりますが、僕の所属と実名はバレバレです。
防衛的になる必要もないので、実名を挙げて批判して頂いても、構いません。
ただ、その際は、ご自身の所属と実名も明らかにして頂ければ、幸いです。

やはり、他者を実名をあげて指弾し批判するには、それ相応の覚悟が必要です。
リアルな社会的存在である、自身のアイデンティティも賭しての討論になります。
そうでなければ、前述のコミュニケーションも成立しないでしょうし。

近しい方からは、一旦ブログを停止した方が良いのでは?というご忠告も頂きました。
大学に迷惑をかけ、僕自身もなんらかの処分を受けるのでは?との心配する声もあります。
色々と親身になって、この間メッセージを寄せて頂いた皆さんには、本当に感謝します。

でも、個人ブログでも言いたいことが言えない、自己検閲が働くのは危険です。
また、関係がまずくなったからといって、回路を閉ざさないのがSWの姿勢だと思います。
むしろ、今回の記事を契機に、大学と臨床現場が率直に語り合えれば良いなと思います。


■4.事実関係について

さて、「心理カウンセラーお断り」の貼り紙が、本当にあったのか?ということですが。
僕自身の遠慮もあり、婉曲的表現で曖昧な表現になっていたことが想像を膨らませてしまったのかも知れません。
しかし、その文言通りの貼り紙があったのは、紛れもない事実です。

ここにその場所を記すことで、現地の方に何かご迷惑がかかることを恐れます。
岩手県の沿岸部で、街全体が壊滅的打撃を受けたところです。
大規模な仮設住宅が建ち並びつつある場所です。

入れ替わり立ち替わり訪れる「心理カウンセラー」に、住民が怒ってしまったそうです。
支援体制に入るボランティアのコーディネートの重要さを、表していると思います。
それは、心理職に限らず、ワーカーだろうが医師・看護だろうが、同じだと思います。

僕は、基本的には、やはりユーザー側の反応や声を大事にするべきだと考えています。
専門職を名乗る側が、ユーザーの批判に謙虚であるべきだというのが、僕の主張です。
精神保健福祉士等のソーシャルワーカー側の自戒として、僕は記したつもりです。

貼り紙が本当にあったのか?という疑念が、まず表明されたのは、残念なことです。
善意のボランティアは感謝されているはずという前提は、危険だと思います。
むしろ、貼り紙に記された言葉の意味を考えるのが、専門職を名乗る側の義務と考えます。


■5.「心理カウンセラー」について

「心理カウンセラーお断り」との貼り紙なので、僕は「心理カウンセラー」と記しました。
「心理カウンセラー」イコール臨床心理士とは、考えていません。
本文中にも、そのような記述はないはずですし、心理の民間資格は数多あるのが現状です。

むしろ、臨床心理士会は今回の震災当初から、組織的対応を早期から組んでいます。
阪神淡路大震災の経験と教訓も踏まえて、臨床心理士の危機対応体制は明確です。
政府への対応、現地への派遣体制調整等、もっとも早かった職種といえます。

コメントを読んでいくと、いつの間にか「臨床心理士VS精神保健福祉士」のようになっていますが。
住民の怒りを買った方が、「心理カウンセラー」を名乗った、あるいは受け止められたということであり、資格は特定されていません。
一般の方にわかりやすい肩書きかも知れませんが、曖昧な名称であることは確かです。

被災地という特殊な状況下では、感情的反応も昂進し、精神的な深い傷跡を残します。
カウンセリング技術を駆使しての、心理的介入やケアの必要な方が、たくさんいます。
他職種と連携して、心理職の方々が果たす役割は、本当に大きいと僕は認識しています。


■6.心理職とワーカーとの関係について

「心理職とワーカーが元々仲が悪い」というコメントがあり、僕は少し意外でした。
確かにそういう職場はあるのでしょうが、僕はむしろとても近しい職種と感じていました。
少なくとも、僕が勤めていた病院では、常に一緒に仕事をしているチームの仲間でしたし。

今回の記事を投稿する際にも、その時の同僚の顔が浮かんで、考えました。
この記事内容は、彼ら彼女らを批判することになるだろうかと、僕なりに考えました。
でも、自らの専門職種としての襟を正すという趣旨で、職種が異なっても共有して考えてもらえる課題であると思いました。

自職場だけでなく、各地の臨床現場で奮闘している心理職も、多数知っています。
心理職の国家資格化についても、僕なりのスタンスで応援してきた経緯もあります。
異なる職種ゆえに、お互いの差異を認め合い、差異を共有する関係が築けるはずです。

心理職と精神保健福祉士は、現場では相補的な関係にあると、僕は考えています。
スクールカウンセラーとスクールSWも、タッグを組めると本当に力を発揮できると思います。
お互いの認識や方法に違いがあって当然だし、覇権争いのようなコンフリクトが生じるとしたら、やはりコミュニケーション不足があるのではと思います。


■7.「心理職を蔑視している」との批判について

コメント中で、僕が心理職の方を蔑視している、との批判がありました。
心理職と精神保健福祉士を比較して、PSWの優位性を誇示しようとしていると。
問題のあった事例を取り上げて、心理職全体をネガティブに批判していると。

記事本文で僕が記しているのは、残念ながらこういう方もいるという例示です。
少なくとも、心理職全体がそうであると批判するような意図は、毛頭ありません。
ましてや、PSWの優位性を示そうなどという考えはなく、優劣をつけられるはずもありません。

なお、仮に「精神保健福祉士お断り」との貼り紙があった場合には、記事で取り上げないのでは?という問いかけがありました。
これについては、僕はまったく逆に考えています。
むしろ、そのような貼り紙が掲示されていたら、もっと厳しく問題にするでしょう。

被災地の方からの無言の抗議を、いかに受け止めるべきかの自己検証を提起するでしょう。
PSWの被災地支援の入り方が、どのように問題とされているのか。
PSWとして何が問題であったのか、自身も反省的にやはり考えると思います。


■8.「専門職種の対立を煽っている」との批判について

僕自身の言葉足らずな記述が、心理職の方々に不快の念を与えたとしたら、それはお詫び致します。
ただ、僕の考えている心理職の方とSWの関係については、これまでに記した通りです。
専門職種同士の対立を煽るような意図は、まったくありません。

むしろ、本当に意外だったのは、寄せられた数々のコメントの展開でした。
僕の記事を契機に、なんでそこまで話しが展開するの?と思える記述が多々ありました。
記事の言葉に対して、一気に日頃の不満が投影されているような印象さえあります。

相互の職種に対する、異和感や不満が、そんなに各現場でくすぶっていたのでしょうか?
僕のように、自分の現場で相互に言いたいことが言えていた関係は、まれなのでしょうか?
だとしたら、本当に不幸なことで、チームで働く臨床現場では深刻な事態と言えます。

先に記したように、僕にとっては心理とワーカーは、車の両輪のような関係です。
対象者への視点や働きかけ・かかわりの深さや広さを、相互に刺戟し合える職種です。
デイケア等のリハビリ活動でも、退院・地域移行支援でも、常にそうでした。

現場によって、異なる専門職種間のコンフリクトが生じがちなのは、確かでしょうけど。
そんなに、心理職とPSW、対立していますか?各現場で?
これは、僕の率直な疑問です。



まだまだ、たくさんお答えしなければならないことがありますが。
とりあえず、今の時点での僕の率直な感想と意見を、記させて頂きました。

このコメントが、更に火に油を注ぐようなことにならないか、やや危惧もあります。
それでも、率直にディスカッションするのは、いいことだと思います。

この記事のコメント欄に、どうぞご自由に、ご意見ご批判をお寄せ下さい。
物議を醸した張本人の僕も、できるだけ、自分なりにお答えしていきたいと思います。



※4月25日、画像を差し替えました。