F & F嫁の “FFree World”

※PCでの閲覧を前提とした構成です。文字サイズは「大」推奨です 

シュツットガルト・バレエ 「 眠れる森の美女 」 

2008年11月24日 | Ballet
 
F log


3年ぶりの来日となった ドイツ シュツットガルト・バレエ団来日公演 初日を F 嫁と観に行った。


持って来た演目は、ハイデ版 「 眠れる森の美女 」 と 十八番 「 オネーギン 」 である。
緊縮財政中の我が家、今回は初日のマチネ 「 眠れる森の美女 」 オンリーである。
ツアーは両演目ともに 3 公演というコンパクトなもの。
「 シルヴィア 」 5 連発などと冒険したロイヤルと違って堅実






仕事先からの直行してくる F 嫁と、東京文化会館で待ち合わせ。
各美術展が目白押しで、あいかわらず混雑している上野界隈。
上野の森も緑と黄色、一部赤が混在している。







さて、公演前に招聘元やダンス雑誌などで様々な情報が飛び込んでくるのだが、宣伝に使われた写真を見て
ものすごく期待だけが膨らんで、実際は ??? となった公演もないことはない。
もちろん宣材などは、ここ一番上手く撮れているのを使うだろうから、良いのはあたりまえだが・・・


F がシュツットガルトのハイデ版 「 眠れる森の美女 」 でもっとも心惹かれたのはこの一枚。


            


また財団に怒られるので小さな写真を(笑)


色を失った背景をバックに、ダイナミックに跳躍するカラボス。
ハイデ版のカラボスは男性が踊るのは知っていたが、白塗りのなんとも妖しい風体。
メイク、衣装、中性的な魅力が感じられる。
そして跳躍もキレイなクラシックのグランジュッテではない。力技で浮いている感じ。
この写真になんとも惹きつけられて、「 眠れる森の美女 」 一本に絞ったのだ。



 

主要キャストは・・・

オーロラ姫    マリア・アイシュバルト
デジレ王子    フリーデマン・フォーゲル
カラボス      ジェイソン・レイリー




シュツットガルト・バレエの水準の高さと、練り上げられた演出と美術、照明を堪能することが出来た。
アイシュバルト&フォーゲルも初日とは思えぬ素晴らしい出来だったが、F はなんといってもカラボスのジェイソン・レイリーである。
そう、写真の期待は裏切られなかったどころか、何倍にもなって返ってきたのである。







プロローグ


客席に向かってコの字型の回廊が配されている。
回廊の上下は通路になっており、一階と二階の高低差を効果的に使う。


そして特筆すべきなのは この回廊、全幕に渡ってこのまま置かれていたのだ !!


要するに舞台転換なし。
というとショボイ低予算の舞台を想像されるかもしれないが、まったくそんなことはない。
逆に大がかりなセットを持ち込んだロイヤル・バレエが過多に思えるほど。( あれは眠りのスタンダードだと思うが・・ )


バックは自然の緑。
おそらく客席側に城があり中庭を表しているのだと思う。
リラの精以下 5 人の妖精たちがオーロラ姫の誕生を祝している。
王、王妃は本当の年齢を重ねられた重厚感ある配役。
カタラビュットは最初女性かと思った。配役表にはトーマスとあるので男性のようだ。


いよいよドジなカタラビュットが招待リストから漏らしたカラボスが激怒して会場に乱入してくる。
落ち武者のような髪形をした手下を数名連れているが、彼らはほとんど踊らない。
なぜならカラボス自身が、ものすごく踊るからだ。


今回 3 公演でカラボスを演じるのは、日曜マチ・ソワのジェイソン・レイリー。
そして明日月曜日のフィリップ・バランキエヴィッチのふたりだけ。
お気づきのように、ふたりともプリンシパルである。
おまけにどちらもデジレ王子のレパートリーも持っている。


以前にロイヤル・バレエの重鎮、サー・アンソニー・ダウエルのカラボス がカッチョイイと書いた。
演技と存在感で魅せるサー・アンソニーと違って、ハイデ版のカラボスは踊って踊ってまた踊るのだ。


それだけではない。
ある種の狂言回し・・・カラボスを中心に話が進んでいくのである。
プロローグから終幕まで出ずっぱりである。
並みの体力とテクニックでは舞台が持たない。


黒衣で長い黒髪のカラボスは、存在感たっぷりである。
その上、王子のいないプロローグ、第1幕ではこれ以上の目立つ役はない。
とにかく圧巻のカラボス。
「 眠れる森の美女 」 を見慣れた方にこそ観てほしい。


そして F が惹かれたカラボスの写真。
周囲の色が無くなり、カラボスだけが天然色で浮かびあがっている。
てっきり写真を加工してあるのかと思っていたが、実際の舞台がその通りになってビックリ。
周囲を暖色系の単色で塗りつぶし、モノクロームのように見せる照明スタイル。
そして主役にはピンスポで色彩 ( カラボスとて黒単色ではない ) をしっかり見せる。
本当に見事である。舞台美術とともに照明も称賛に値する。












幕間


カラボスを象徴する黒の巨大な布が緞帳の前に降りていて、それを巧みに使ってオーロラ姫の成長と
カラボスの長年に渡る監視の目を表現する。じつに巧みだ。
そしてカラボスが黒い布を身にまとい、見得を切る場面は最高。客席も沸き上がる。









第 1 幕 オーロラの誕生日


石材だけだった回廊にキレイな花々が咲き誇っている。


オーロラのアイシュバルトはとても端正な踊り。
この人、音をたっぷりと使える踊り手で、F & F 嫁のタイプである。
ローズで同じパを 4 回繰り返す場合が多いが、必ずひとつづつニュアンスを変えてくる。
小柄だしダンサーとしてのプロポーションもそんなに凄いわけではないのだが・・・
さすが初日のトップを任されるだけはある。


F 嫁はといえば、フォーゲル王子登場前に 4 人の求婚者を含む男性陣にノックアウトである(笑)
ベルリン連呼 の後は、シュツットガルトであろうか(爆)















第 2 幕 狩りの場。幻を見るデジレ王子、オーロラの目覚め


木々が絡みついて森に没しているが、回廊はそのまま存在している。


デジレ王子が登場する。
フリーデマン・フォーゲルはバレエフェスなどのガラで何回か見ているが、成長した姿に驚かされた。
あいかわらず気のイイ兄ちゃんという雰囲気は気さくだが。


ところがどうしてどうして、堂々とした王子ぶり。
元来のプロポーションの良さも相まって F 嫁ウットリ。
シュツットガルトの男性陣は全員つま先がめちゃめちゃキレイである。
跳躍中もしっかり甲が出てるし。
フォーゲルくんはひざ下の長さが驚異的。あんなスタイルだったらタイツも堂々と穿けるわなぁ(笑)


第 2 幕で主流と異なるのは、カラボスが滅びないこと。
王子がオーロラに接吻 ( そういえば寝台ではなく王子が膝に乗せてだった ) すると呪いは解けるものの、カラボス自体は死なない。








第 3 幕 オーロラの結婚式


ここからは華やかな結婚式。
結局最後まで存在していた石の回廊。
正面上階に玉座が用意され、周囲はキャンドルで飾られる。
そして基調となる色、赤が大胆に配され祝典の雰囲気を盛り上げる。


この美術は本当に見事である。
セットの大筋は変更せずに、色彩を自在に変化させる。
それでいてチープ感は一切感じさせない。
大がかりな転換が不可能な劇場でも、これなら上演できるだろう。う~む素晴らしい。


お祝いに駆けつける面々はいつも通り。
ディヴェルティスマンとしてアリ・ババとジュエルズが踊るが、アリ・ババはまんま 「 海賊 」 のアリ。
ジュエルズは身長もバッチリ揃って素敵だった。


F 嫁は青い鳥とフロリナ王女の PDD で、青い鳥を踊ったウィリアム・ムーアにぞっこん。
たしかにカッコイイわ。
長身だしプロポーションも良い。


オーロラ姫とデジレ王子の GPDD も盤石。
両者とも余裕をもって踊っているので、とても楽しく観られる。
フォーゲルくんなどマネージュの途中でも笑顔を絶やさず、観ていて幸せになれる、と F 嫁。
当然、フィニッシュと同時にブラヴォ~の嵐である。


そこで驚いたのは、回廊上の左端からカラボスが現れたことだ。
一瞬、場面がロック(笑)するが、リラの精がすぐに解除し滞りなく進行する。
結局カラボスは華やかな宴を羨ましそうに眺めるしかないのだ。


そして大団円。
緞帳が降りる時、ひとり外側に残されたカラボス。
一瞬のタメの後、上手から下手へと黒いマントをたなびかせて全力で駆け抜ける。
このエンディングは大好きである。
いや~本当に堪能した。素晴らしい舞台だった。












カーテンコールでは、主役のふたりを凌駕する拍手とブラヴォ~を浴びていたカラボス。
F も大拍手とブラヴォ~で加担。
ハイデ版のその役はたいへん興味深いし、ジェイソン・レイリー自体が素晴らしいダンサーである。
彼のデジレも観てみたいのと、バランキエヴィッチのカラボスにも興味津々。
最終日が仕事なのはホントに残念である。


時に冗長に感じることもある 「 眠れる森の美女 」 通称 「 眠り 」 は伊達ではない(笑)
しかしながらハイデ版は全く弛緩するところがなかった。
プロローグでカラポスの魅力に引き込まれ、そのまま最後の幕が下りるまで・・・
いや幕が降りた後まで楽しめるのだからいうことなしである。


ただそれをより楽しむ為には、スタンダードな 「 眠れる森の美女 」 を観ておく必要があろう。
そうした意味で、ロイヤル・バレエのバージョンもやはり必要だ。
もちろんアクのないメイスン版の方が好きな方も多いだろう。







F 嫁はその後ベリーダンス関係のイベントに行くため、カーテンコールもそこそこに退出。
会場でお話しさせていただいた方々、ありがとうございました。









 おまけ



ジェイソン・レイリーの素晴らしい身体能力を実証する映像。




Jason Reilly - 101






上のカラボスがジャンプしている写真はポジション 87 だとわかる。





コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クロのあら炊き | トップ | 本土寺の紅葉 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしかったです~ (ogawama)
2008-11-24 00:34:08
Fさんいらっしゃらないなあと思ったら、マチネだったんですね。
私はアリシア・アマトリアンとバランキエヴィッチのソワレを観てきました。
ジェイソン・レイリー、素晴らしいジャンプでした!惚れました~。
返信する
不覚でした (F)
2008-11-24 08:24:48
ogawamaさん、おはよーございます。


すみません。ボケてました
普通に考えたらナチョが午前中から演ってるわけがなく、ogawamaさんはソワレだと分かりそうなものですが・・・
コメントいただくまで気付かず、会場でルルベでキョロキョロしてました(爆)

F 嫁は最初バランキエヴィッチを観たがっていたのですが、その後予定が入っていたので諦めました。
カラポス役のダンサーの怪我でレイリーがマチ・ソワで踊ったのですが、パワーは衰えなかったようですね。
あのアクの強さでデジレも踊るらしいので、かなり楽しみなダンサーとなりました。

今回は失礼しましたが、またどこかの会場で見かけたらお声掛けくださいね

返信する
木の写真が (かめきち)
2008-11-25 23:22:52
Fさん
こんばんは~
木の写真に目が止まってしまいました

木の写真ってその場で見て「お~良い感じ」と思って撮っても家に帰ってみてみると「う~ん」て感じになることが多いです
迫力がでないんですよね
Fさんの写真は今にも木が動き出しそうな感じがして素晴らしいですね(^^)v

話は変わりますが、今日久しぶりに35-35をつけて料理を撮ったのですがやっぱりいいですね~
最近はめっきり12-60ばかりで撮っていたんですがどうしても迷いがでてしまうんですよ

ズームが付いてる分微妙に構図を考えてしまいます
その点、単焦点でしたら迷いはないです

本来の私の撮影に戻った気がしました(笑)
レンズの使い分けは大事ですね・・・今更ながらですがね(汗)
返信する
どうしても横着に・・・ (F)
2008-11-26 00:56:47
かめきちさん、こんばんわ。


やはり35-35は銘玉ですね
私、活躍してくれる御褒美に35-35にお化粧してあげました。
それはまた別の機会に・・・(ニヤリ)

仰る通りズームレンズは便利ですが、どうしても横着になってしまいます。
単焦点で足腰を使って寄ったり離れたり・・・それまた楽し、です。
もっともズームとは違った明るくキレの良い絵を期待してのことなんですが。

私は標準ズーム(14-54)を処分して、現在のズームは11-22mm F2.8-3.5 のみです。
あとは単玉ですが、11-22とてほとんど両端しか使っていないので、換算22mmと44mmの単焦点みたいなもんです。

オリやパナには安くて明るめの単焦点をどんどん出して欲しいですね。


返信する

Ballet」カテゴリの最新記事