プリマベーラ進化論。

不思議の国のアリスは、
大海原に小舟で漕ぎ出ました。

沖くん①

2006-08-20 21:08:55 | Sound Schedule
高校の入学式のこと。誰が言っていたのかはもう覚えていないが、とても印象に残った一言がある。

  これから君たちが迎える青春時代というのは、毎日が決して楽しいだけのものではないでしょう。
  おそらく悩みと葛藤の連続です。けれどそれが青春というものなのです。
  毎日大いに悩んでください。そして君たちの手で未来を切り開いてください。

希望に満ちていた私は、それは本当だろうかと疑問に思った。不思議だった。
しかしそれは真実だった。形容しがたい閉塞感とどこか捉えどころのない不安にいつも苛まれていた。
唯一の希望は、入学式のときのその言葉。それを頼りに、私は自分探しの旅をしていた。

そして浪人時代を経て、大学時代。
相変わらず毎日自分探しだが、その方向性がだんだん変化してきたのを感じる。
高校時代は内向きに自分を見つめていたが、浪人時代から外向きに自分を見つめるようになったのだ。
つまり友人と本音で語り合うことで、お互いに何か答えみたいなものを探しているということ。
カフェで、公園で、あるいは町の片隅で。ときにはオールで語り合ったりして。

もうすぐ就職という岐路に差し掛かろうとしている。
だんだん現実社会に組み込まれていく私たちは、きらきらした夢や希望を失わずにいられるだろうか。

そんな若者たちの微熱のような葛藤を描いた作品がこちら。

『僕らの行方』
ベース沖くんによる作曲作品!2ndアルバム「456」に収録されている。
「456」全体のカラーを決定付けているのは、この曲だと言っても過言ではないだろう。
楽曲やジャケット写真ともに、テーマカラーは灰色と光。このイメージは「僕らの行方」に最も色濃く表現されているのである。

この曲は沖くんお気に入りの小説『ロックンロールミシン』を表現したものだそうだ。
『ロックンロールミシン』は鈴木清剛著、新潮文庫で380円で販売されている。
また行定勲監督、キャスト池内博之、りょう、加瀬 亮、水橋研二、SUGIZO、宮藤官九郎というメンバーで映画化もされている。
ちょっとでも作品の背景に触れたいと思い、小説を読み、映画も見た。
平凡な会社員と自由に夢を追いかけ続けるデザイナーの3人がひたむきに生きる姿を描いた青春ストーリー。
すごく気に入って、何度も何度も読み返しては「僕らの行方」を聴いた。
小説の世界観と曲が見事にマッチしている。沖くんがどんなにこの小説が好きか分かる。

けれど出来上がった曲に歌詞をつける作業は結構難航したようで、
雑誌なんかには「沖くんに小説を借りて読んで、沖くんの中のイメージを壊さないように詞を作った」的なことが書いてあった。
語り合ったりもしたという作業を通じて生まれた歌詞もまた、小説の世界観をぴたりと表現していると思う。
曲だけ聴くのもいいけれど、小説と合わせればもっと深く味わえる。
そして聴き終わったらふっと背中を押してもらえる・・・ちょっと荒削りなやさしさのある曲。

沖くんの紡ぎだしたメロディー。
「僕らの行方」をライブで演奏しているときの沖くんは、いつもの2割増しで頭を振っていて、とても嬉しそうで、
それだけ自分の楽曲を愛してることがひしひしと伝わってきた。