マインドフル・プラネット

北米ジャーナリスト、エリコ・ロウ発

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偉大なるエリザベス・キューブラー・ロス

2008年01月29日 | Weblog
久方ぶりに快晴の日々が続いているので、いまは晴れ晴れとした気持ちで書けるのだが、数日前、朝起きて、いつものように窓の外は真っ暗で雨まで降っていたのを見て、突然怒りがこみ上げてきた。「もう雨は嫌だ!」とついに自分で認めてしまったのだ。

冬の米大陸北西海岸沿いは、ちょっとした雨期なみなのだが、私はこれまで、ずっと、「雨?雨なんか気にならないわ」「雨が降ると木々の緑も生き生きするし」「雪ごもりになるイサカの冬に比べたら、極楽だわ」などと、言い続けてきた。
のだが、それが、エリザベスの五段階理論でいうところの「否定」に過ぎず、心境がついに次の段階の「怒り」に移行したのかもしれない。

エリザベスの五段階理論とは、死に直面した人がたどる心の軌跡を解き明かした功績で名高い精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスが唱えた理論。
「死に直面した人ははじめはそれが事実であることを否定し、無視するが、やがて避けられない現実であることを認識し、運命や自分、周囲の人への怒りを感じる。「これからは心を改めますから」「財産はみな慈善に寄付しますから」「せめて息子が卒業するまでなどと神に交渉を持ちかけ、慈悲を乞い、死を回避しようとする。そのうちそれにも疲れて、ウツ状態に落ち込むが、多くの人はそうした様々な心の葛藤を経たのちに、抗うことを辞め死を受け容れることで、心の平安を取り戻す」というものだ。この心の軌跡は、、死だけでなく、失業、失恋など人生で人が出会う様々な逆境にもあてはまる、とされているのだ。

エリザベスは半生を終末期患者やその家族の心の癒しに尽くし、それを可能にする制度としてのホスピス、終末期医療の充実を半世紀近く前から訴え続け、推進させてきた偉大な人物。なのだが、つい数日前に、日本の終末期医療の先駆者から、自らの死への葛藤をあからさまに世に知らしめたエリザベスの人生終盤の生き方がメディア報道を通じて誤解され、彼女の日本での評価は下がってしまった、と知らされ、ショックを受けた。死をテーマにした新刊拙著の出版のご挨拶へのリスポンスとしてご連絡いただいたのだ。
 私は葛藤のさなかのエリザベスに会ったことがあり、もっともプライベートな内なる心の葛藤まで公衆の目にさらす生き方に圧倒された。そもそも、それが死に方についての本を書く動機にもなったのだ。羞恥心やプライドを捨て、死んでいく者のあがきをエリザベスが見せたのは、最後まで人を導き、より多くの人の救いになろうとする教育者、医師としての強い信念に基づくものだったのだ。
 彼女の死への過程は陳腐なセンチメンタリズムに浸ったものではなかったのだ。

 ということもあり、「出版のご挨拶」を貼付させていただく。これまで本は出しても自らそれを喧伝することなどなかったのだが、この本で紹介している情報はきっと多くの人の役に立つと確信するので、その存在を広く世に知らせたいのである。


謹啓

新春の候、皆様ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
在米ジャーナリストのエリコ・ロウです。私は長年暮らしました米国から国境を越え、バンクーバーで心機一転、新年を迎えました。今後は米国流価値意識に毒されぬより広い視野から未来を見つめていきたい所存です。
これまでの並々ならぬお力添えに深く感謝申し上げると共に、引き続きご指導ご鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

さて、ご挨拶が遅れましたが、このたび、拙著「誰もが知りたい 上手な死に方 死なせ方・・・円満でやすらかな終末期への道しるべ」が講談社より刊行されました。
「新年早々、縁起でもない」と咄嗟に顔を顰められた方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな方にこそご一読いただきたい 内容です。
数年前、私は、死に向かう心理の研究者、終末期患者の代弁者として名高いエリザベス・キューブラー・ロス医博が自らの終末期をどう生きているかをドキュメントしようというNHKの番組取材のために、エリザベスの自宅を訪ねました。終末期の理想像を見せてくれるだろうという私たちの期待に反して、エリザベスは寝たきりになってもひとり暮らしを続け、怒りに満ち孤独に自分の死を待ち望んでいました。彼女が赤裸々に見せ語った終末期の苦悩と葛藤に衝撃を受けた私は、どんなエキスパートにとってもどう死んでいくは人生最後で最大のチャレンジであることを実感しました。そして、生身を晒してきれいごとではすまない死への過程の現実を教えてくれようとしていたエリザベスの志を私なりの理解と言葉で受け継ぎ、死に向かう人、親しい人の死の過程を見守る人の助けになり癒しになる本が書きたい、と思いました。そして、終末期医療の現場や識者、自分や近親者の死に直面した一般の人々の取材や私的な体験を通じ、死に向かう本人や周囲がたどる様々な心身の変化への知識と理解を深めていくうちに、ともすれば濁流に流されるように過ぎていく終末期、人生のラストスパートをしっかり意識的に生き続けることができれば、からだは癒されずとも魂は癒され、満ち足りた人生のゴールを安らかにくぐれると確信するに至りました。

拙著では、死に向かう人が体験する普遍的な心の軌跡とからだの変化、悔いなく安らかに人生を終えるためのヒント、近親者の終末期を周囲が無理せず支え、愛する人を亡くした悼みから立ち直っていくための心得などに加え、終末期の本人や近親者の心身の痛み、苦悩、悼みをやわらげるための実用的なテクニックを紹介しています。
また、親しい人を亡くした人ならきっと誰もがもつ「ああしてあげていれば」「あんなこと言わなければ」「死に目に会えなかった」といった後悔や悼みを癒していくための一助となる、新たな視点も提供しています。
死のタブー視、死を意識のなかから遠ざけることをやめ、死に至る心身の過程について事前に学ぶことは、やがては来る自分や近親者の終末期への備えとなるだけではなく、自分の人生をいまから真に有意義に生きはじめるための道標にもなります。
人生についての想いも新たな初春の読書リストに拙著をあえて加えていただき、忌憚のないご意見、ご感想をお聞かせいただければ幸いです。

「人は生まれた瞬間から死に向かって歩みはじめる」・・ダライ・ラマ
「死は求めなくてもやってくるが、満ち足りた死への道は、自分で探さ なければみつからない」・・・ダグ・ハマーショルド


敬具

エリコ・ロウ
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2 コメント

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Unknown (eriko)
2008-01-31 05:04:07
izumi さん

コメントありがとうございます。お友達への拙著のご紹介も、どうもありがとうございます。

お問い合わせの歌と健康の関係、
Victoria Meredith, a University of Western Ontario
の研究を言及した記事がバンクーバー・サン紙に出ていました。
メールアドレスを教えていただければ、記事、お送りします。

私のアドレスはeriko@mindfulplanet.comです。



今、読んでます! (バードランドの王様)
2008-02-11 18:16:01
初めてここに書き込みさせて頂きます。
私の叔父が5日に帰らぬ人となりました。
私が最後にその叔父と話をしたのが1月12日で、その直後にエリコさんの本「誰もが知りたい…」を購入し少しずつ読んでいます。私はもう1冊買い求め、別の叔父にプレゼントしました。親戚皆で本を読ませて頂きます。
この本のお陰で、両親や自分自身の人生の最終章に直面した時に少し冷静でいられると思います。
ありがとう御座いました。

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