満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

楽園 作:宮部みゆき

2010-06-28 | 本の紹介


「模倣犯」で犯人ピースに翻弄され最後まで戦い、そして勝利した
あのフリーライター前畑滋子の9年後のお話。

あれだけ大きな事件を扱ったフリーライター前畑は、
結局のところ本も出版せず、あの9年前の事件について何も語らずにいた。
知人の経営する小さな出版社に身を置き、細々と仕事を続けていた前畑の元へ
ある日、萩谷敏子という主婦が尋ねてくる。
「死んだ息子の描いた絵を調べて欲しい」というのだ。
彼女の息子「等」の描いた絵を見た前畑は愕然とする。
等の描いた絵の中に、9年前のあの事件の現場である山荘の絵があり
そこには、警察と前畑しか知りえない物が描かれていたからである。

等には何らかの超能力があったのだろうか?

さらに前畑が等の絵を調べていくと、
最近ワイドショーを賑わせていた事件の現場が描かれている絵があった
蝙蝠の風見鶏の付いた家の床下には、少女の死体が横たわっている絵
しかし、等はこの事件が発覚する前に交通事故によって亡くなっていたのだ
どうやって、等はこの事件のことを知り得たのだろうか?

事件の現場である土井崎家は火事により焼失した
火事現場にたたずむこの家の主、土井崎夫婦は自分達の住んでいた床下を指差し
「家出をしたと言っていた長女の茜を、自分達が殺し床下に埋めた」と供述する
しかし、娘を殺害してから既に16年の月日が流れており時効が成立していた。

等の能力の裏づけを取るために、沈静化しつつある事件を掘り下げていく前畑は
土井崎家のもう一人の娘、殺された茜の妹である「誠子」と会う。
誠子もまた、両親がなぜ茜を殺したのかという疑問を抱えており
それを前畑に調べて欲しいと依頼してくる。

一人息子を交通事故で亡くし、悲しみのなか、息子の遺品を調べているうちに
息子には、誰にも言えなかった秘密の能力があったらしいと感じた母。

16年ものあいだ、共に生活していた家の床下に、家出したはずの姉が埋められており
その姉を殺害し埋めたのが両親であったと知った娘。

9年前の事件を引きずり、あの事件について語ることも書くことも出来ずにいる前畑

放っておいても害はないが、絶えず喉元に掛かる小骨のようなそんな出来事に心を縛られ、
前に一歩を踏み出せない女性3人。三者三様の心の動きが絶妙に描かれている作品である。

読んでいるうちに、「もう、いいんじゃないの?」っと思う場面が何度かあった。
なぜそこまで前畑が固執し調べるのかが解らなかった。

9年前の事件もそうだが、今回の出来事も彼女は本にする気がない。
どこに発表するわけでも、誰を救う訳でも、何の益になるわけでもない。
それなのにナゼ彼女はこうまで固執し、調べを続け、全てを明らかにしようとするのか?
そんなことをズ~っと考えながら、読んでいた。

最たる理由の一つは…「自分の為」なんだろうな。

9年前、「模倣犯」を読んだ時、実は前畑のことが好きになれなかった。
自己中な行動が多くみられ、むしろ嫌いな部類に入る人だったと記憶している。

今回の前畑は、やっぱり自己中的な要素も残っていたけれど
「自分の為」に動く彼女を、そんなに嫌いじゃないと思った。
私が歳を取ったことと、なにか関係があるのだろうか?(笑)

最近私も先を見据える年齢となり「まず、自分のために生きたい」っと思う気持ちが
強くなったからかもしれん(ハハハハハ)

「模倣犯」を読んでいなくても、読める作品ではあるが
「模倣犯」を読みたくなる作品でもある。
すっかり「模倣犯」の内容を忘れていた私であったが、チラっと読み返してみたくなった

でも…「模倣犯」って…もの凄く、文章量が多いのだ
しかも、大判の本なのに上下二段に分かれて書かれておるので字が小さい。
9年前は、この程度の文字でも何の苦もなく読めていたんだの
少し老眼気味になって来た今の私の目には、可なりシンドイ(笑)
この先、こんな文字をまた読めるようになる日が来るんじゃろうか???

気力が快復したら、また読んでみたいもんだ(アハハハハハ)

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22 コメント

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宮部さんの現代ものは… (asagi)
2010-06-28 14:15:19
「模倣犯」を読んだ後くらいから、ほとんど読まなくなりました(^^;
あの分厚くて重い本を発売直後に買って、貪るように読んだんだけど、読んでる間中胃が捩れるほど腹が立つわ、気が重いわで、もう…(^^;
なのに途中でやめられない。
このひとはなんでこんな救いのない話を書くんだろうってずっと思ってました。
犯人が捕まったからって誰の心も救われるわけでなく、読後も嫌~な気分がずっと尾を引いてて何日も気分が悪かったのよ(^^;

私も、前畑滋子が嫌いでした。
最後のあのシーンではカッコよかったけど。

この続編は、久々の超能力もの?
「模倣犯」とはかなり趣が違いますね~
私はおそらく読まないと思うので、満天さんのレビューが読めてよかったです^^

あ、下の記事のコメント、ほんとはもっと長かったんだけど、投稿したらなぜか途中でぶった切れてました(^^;
ミニスカ似合うよ~って書いてたのに(>_<)
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ご返事どす~ (asagiどんへ)
2010-06-28 15:54:45

うん。久々の超能力話が出て「オッ!?」っと思ったけど…絡みが少ない~(ハハハハハ)
キッカケは超能力なんだけど、その裏づけ捜査をしているうちに違う事件と繋がって
結局、何だったのかは霧の中ってな感じっす

私も「模倣犯」で嫌になって、この本を買う時に可なりな葛藤があっただよ
また、嫌な思いをしながら読むかも?っと思っての~(笑)
asagiどんも同じ気持ちだったのが解って笑ってしまっただ。私だけじゃなかったんだの~

今回の前畑さんは、以前の事件の時と違って少し大人になっておった
人を思いやる気持ちが生まれておっての~。でも、その気持ちは人としては素晴らしいが
こういった事件ルポを扱う職業としてはどうかな?って感じただ
少し大人になったとは言え…私とは別次元に住んでいる人なので解り合えはしないがの~

今回も模倣犯に引き続き、どの登場人物も皆
とても嫌な部分が見えてくるもんで、やっぱりウンザリしただ
ただ、自分の息子に超能力があったかも?っと前畑を頼ってきた萩谷敏子さん。
彼女には何度も救われた(笑)
キャリアな前畑や他の女性と比べ、思いっきり主婦な萩谷さんだけど
だから何?っと思わせる知性と強さ、相手を思いやる心を持っておった
人というのは「思い上がった」瞬間に、救いようのない深みにハマルのな~(ハハハハ)

やっぱり長文な作品なので、ウンザリする部分もあってどうかと思っただよ
私も宮部作品なら江戸ものが一番好きかな~(笑)現代モノは辛すぎる(ハハハハ)
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Unknown (木家マス)
2010-06-28 17:39:34
宮部みゆきって、本の分厚さを見ただけで敬遠してる木家マスどす。

でも、満天しゃんの書評を読んで、なんか読みたくなったどす。(って言いながら、読まないほうに5.000点!)

最近、とんと読書から遠ざかってます。
またいろんな書評書いて下さいね。

お客様に読んだフリして話しますさかい・・・・。    
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Unknown (作太郎)
2010-06-28 23:38:54
模倣犯
本好きの僕でさえ、あの文字量には圧倒され
あのあと、宮部さんの作品あんまりよんでないのですよね。

僕にとっての超能力を感じるのは
満天どんが僕のブログにコメすると
必ずその前後で木家マスがあらわれるところですかね。
この息のあい方、超人です(笑)
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模倣犯 (長友)
2010-06-29 08:46:00
読み応えがありました。あの頃は、あの重い
本を一気に読める若い頭脳してたんだな~と
振り返るくらい今は重いのを読む気力が
失われています。

でも、何か気になる本を昨日、見つけて
しまいました。
「小暮写真館」って題名だったかな?
宮部みゆきファンの一人として買いたく
なったんだけど・・・
「楽園」も読みたくなりました。
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おっとと・・・ (長友)
2010-06-29 08:49:12
入れ忘れ~~。

満天さん、ミニスカ姿がカッコいいじゃんす♪
もうちょっとカメラが近くてもOK♪
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もう読めません。。。 (トミー。(管理人))
2010-06-29 10:02:52
 文庫本はおろか、こんな重そうな本はもう絶対読めないトミー。どす。(笑)

 10~40代までは電車の中で歴史もの文庫など読んでいたんですが、最近はとんと文章を読まなくなり、もっぱらマンガ、それも家で寝転がって BL 何ぞという気楽なものしか読まなくなりました。

 自分の現実の方が大変…てな感じで、娯楽は映画も本も楽しく気楽でってな方向にばかり行ってます。少し反省。

 でも宮部作品て、映画では見ても本は読まないだろうな~。
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新聞連載小説 (トマトジュース)
2010-06-29 17:08:49
前に「ブレイブストーリー」という小説が新聞で連載していて読んでいました。
ロールプレイングゲームのようなファンタジーな物語でした。
連載終了後に刊行された本は加筆されて分厚い上下巻本になってました。
さすがに戦意喪失しました(笑)
新聞の連載小説を読むのが好きなんです。挿し絵入っているからそこから内容を想像しつつ小説を読むのです。だから挿し絵がよくないと小説はスルーしてしまうのもよくあります。気まぐれな読者(笑)
わたしは夢中になると生活忘れてしまうので最近は小説は読んでないです。今は新聞の連載小説は「図書館戦争」を書いた人の小説が連載されてますが、時々読む程度。
満天さまやトミー。さまのレビューを読むと読んでみたいと思ったり、読んだ気になったりするので楽しいです♪
書店に行くと文庫本くらいは読みたいな~と思うけど何がいいのか迷うくらい積んであるとまた戦意喪失…
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こんばんは! (tenma_21)
2010-06-29 21:18:32
読みました模倣犯、僕も・・・。
長編でした。スリリングな部分もあったような
その頃宮部みゆきの作品に嵌ってましたから、
しかし、中居くん主演で映画化されて驚いた事を憶えています。続編になるのですか?
読んでみたい気もします。
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Unknown (ブータン)
2010-06-30 20:32:15
模倣犯は、読んだよ~
だから、これも読んでみたいです。
宮部ワールド、はまると長いのよね~
でも、夏派ゴロゴロしてるからちょうどいいかも。
たくさん読む本がふえてきたぞφ(..)メモメモ

映画と本、満天どのは、どっちが先がいい?
わたしは、たまに、本読んで映画見てがっくしすることがあるよ。
でも、逆はつまらない気もして。
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