満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

おそろし 宮部みゆき

2008-11-13 | 本の紹介

宮部みゆき作「おそろし」で、ある。

17歳の「おちか」の家は、川崎宿で旅籠を営んでいる。
ある日、17歳の少女にとっては重しとなるような事件がおきた
それをキッカケに「おちか」は「希望」や「夢」を持つことを諦めた

若い身空で将来を捨てた「おちか」を心配して
父と母は、江戸・神田三島町で袋物屋を営む叔父夫婦「三島屋」へ
「おちか」を預ける

「おちか」は三島屋主人「伊兵衛」の親戚筋の娘である。
本来ならお嬢さんとして奥座敷に座り
物見遊山で江戸見物をしていても良い身分であった
だが「おちか」はそれを嫌い、奉公人として「三島屋」へ入る

「楽しいこと」「嬉しいこと」を感じてしまったら
自分自身が許せないとでも言うように「おちか」はがむしゃらに働いていた
そんな「おちか」を見て、叔父の「伊兵衛」は一計を案じる

三島屋には主人「伊兵衛」が友を向かえ、碁を打つ「黒白の間」がある
世間に「三島屋は、変わり百物語集めております」っと触れ回り
語り部を「黒白の間」に引き入れ「おちか」にその相手をさせようと算段した

世間には「おちか」が経験したよりも、もっと数奇な運命に絡めとられた話がある
それらを聞いて「おちか」の心が少しでも開けば…
そう「伊兵衛」は思ったのかもしれない

現に一話、二話っと話を聞くうちに「おちか」の心の扉は開きはじめてくる
だが…「おちか」の心の扉が開かれてくるにつれ
なにやら恐ろしげな扉も少しずつ開いてくる。そしてその扉の向こうから
冷たい何者かが話の糸をたどり「黒白の間」の畳をつたい
「おちか」の着物の裾にヒタヒタと絡み付いてくるのであった

「おちか」を変えてしまった事件とは? 
イグサで畳が編みあがるように、それぞれの話が絡み合い
「黒白の間」を敷き詰めてゆく

第一話「曼珠沙華」、第二話「凶宅」、第三話「邪恋」、
第四話「魔鏡」、最終話「家鳴り」

話は面白く、さすが物語の紡ぎ手「宮部作品」っと思うのだが…(笑)

「変わり百物語」の内容は、怖くはないのだが面白いことは面白い
ただ、話が絡みあっての最終章がイマイチだと思う
宮部氏は私よりも一歳年下。
最近、私も思うのだが自身の終焉までの残り時間を考える
気になるのは「死に方」と「死後の世界」
誰もが経験したことがないのに、誰もがいずれ経験する世界
少々ワクワクする気持ちと「おそろしい」と感じる気持ち

生前犯した「あやまち」は死んで清算されるのだろうか?
江戸の物語の中で、最後の最後にこの西洋の宗教感がチラリと垣間見える
そこに違和感を感じてしまったのだが…はてどうであろう

大変面白かったと言う人も多い作品なので
読んでみるのも悪くはないかもしれん(ハハハハハ)

第二話の「凶宅」で「100両やるから一年、この家に家族で住んで欲しい」…
っと持ちかけられる話がある
夫はウハウハと話に乗るのだが…妻は躊躇する

自分達にとって100両は大金だが…相手にとっても100両は大金なのか?
彼女はそこを考える

100両が相手にとって「はした金」か「大金」かによって
「この家に住んで欲しい」っと言う意味あいが違ってくるのである

相手にとって「はした金」なら…たいした仕事ではないが
相手にとっても「大金」なら…何か別ないわくのある仕事かもしれない
そこに妻は恐怖を感じてしまう
今、急場しのぎに家計が潤っても子供の将来に不幸が待っているのなら
それは何の意味ももたない

大金に目が眩んでしまった夫の耳には妻の恐れは届かず
一家は大変な出来事に巻き込まれて行ってしまうのである

「10億で自分の曲の著作権を買わないか」っと持ちかけたプロデューサー
彼にとっては、ノドから手が出るほど欲しい10億
10億では安すぎる著作権の売買に、買い手は不信感を持たなかったのだろうか?

総額二兆円の定額給付金
一人あたま1万2千円だそうだが…受け取る人の所得によって意味が違ってくる
確かヨーロッパでは経済の活性化に成功したバラマキ戦法なのだが
国の借金返済用の大事なお金を、本当にバラマイて良いのだろうか?
今、18歳未満の子供は一人2万円をもらい
彼等が二十歳を超える頃には、消費税が10%を超え
そして彼等が中年になる頃に…国が破綻しなければよいのだがっと考える
二兆円という金額。天文学的数字過ぎて
誰も本当の価値を解っていないのではないだろうか

いやはや…本当の「おそろし」は、我等の回りに常に見え隠れしておる

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