満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

弟と「のっぺら」…①

2008-04-21 | 昔話のハチャメチャ
久々の昔話のハチャメチャシリーズである…
続くので…メンドーな人はスルーしてくれ~~

私には一人弟が居る
名前を「満月君」と言う
歳は7歳離れておる
私の母は父の一番最初の妻
満月君の母は、間に一人置いて父にとって3番目の妻である

小学2年の初夏、学校から帰ると満月君は産まれておった
家族総出で病院に見に行ったが、彼は人間ではなかった
猿でももっと可愛いだろうってな代物であった
同じように並んだ他の赤ちゃんの可愛らしさを横目で眺め
ひときわ頭がデカく赤ムケた猿もどきな弟に、立ち眩みを覚えたもんである

まぁ~最初、ひときわ可愛い赤ちゃんを見て
「コレが我が家の新入りだ」っと言った父の言葉を鵜呑みにし
全員で「可愛いね~」「目元は満天似かね~」
なんぞとワイワイやったのがいけない

一度可愛い物を見た目は、ソレ以下の物を拒否してしまうもんである
実際本物の満月君を見た瞬間、全員が無口になったとしても…いたし方ない

そんな人間もどきの満月君であったが
成長と共に人間らしさを取り戻してきた

相変わらず頭はデカく異様さを放っておったが
その頭に、ラーメン丼の図柄の様な巻き毛が生えてきて
赤むけた肌も乳色に変色していった

乳の出が悪かった継母に代わり
森永の粉ミルクを作っては、与えていたのは私である
森永の商標エンジジェルを見ながら
巻き毛といい、白いムチムチした体といい
同じ分野のモノを持っているハズのコイツは
何時になったらエンジェルに変身するのだろうか?っと
ミルクを湯銭しながら思ったものである

とはいえ…あの顔のヘチャむくれた犬…フレンチブルドックでさえ
飼い主は可愛いと言う
世話をしながら「飼う」と、それなりの愛情が湧くらしい…

ミルクにオムツ、添い寝…ありとあらゆる世話をしておったが
「愛情」っと言うものが生まれて来たのは
満月君が「歩行器」に乗り出した頃まで「おあずけ」であった

「歩行器」っという代物が今でもあるのかは解らんが
「歩行器」とは、丸いドーナツ型で足にキャスターが付いた
赤ちゃん用の歩行補助器である

何度も言うが、頭が異様なデカさを誇っておった満月君は
寝返りの段階から苦戦しておった
ハイハイの段階では、頭が地面から上がらず三点ハイハイ状態であった
立ち上がっても頭が重く、つたえ歩きすら出来ない

歩くことを諦めたのか、彼は「ウンチ」をいきむ時のみ立ち上がり
いきみ終わるとドシンと座るという暴挙に出た
紙おむつなんぞ無かった時代である
布にこびり付いたウンチをバケツで漬け置きするために
部屋中に異様な匂いが立ち込めてしまっておった

それまで歩みの鈍い「ゾウアザラシ」を笑って見ておった両親も
これには閉口したらしく足腰を鍛えようっと買ったのが歩行器である

水を得た「ゾウアザラシ」は部屋中を駆け巡った
何よりも何時も面倒をかけている姉にベッタリとくっ付き
片時も離れようとはしない

あの時も…目の端に映った姉の姿を追いかけ
歩行器で走り出した「ゾウアザラシ」は
日本家屋特有の段差にキャスターを取られ思いっきり転んだ
歩行器に乗った状態で転んでも大きな円形のテーブルが付いているので
そんなに痛くないハズであったが…

何度も何度も言うが、この「ゾウアザラシ」の頭はデカイ
どうすればそんな転び方が出来るのか?っと思ったほどの転び方をした
逆さまになり頭を床にシコタマ打っていた

大泣きしている「ゾウアザラシ」を助け起すと
そこで産まれて始めてコノ物体は言葉を発した
「ね~ちゃ~」

赤子が初めて発する言葉で一番多いのは
「食い物」と「母親」の同義語である「マンマ~」であると聞いていたので
「ね~ちゃ~」っと彼がしゃべったとたん
私の目には「ゾウアザラシ」が「エンジェル」に変幻して見えた
キラキラとした姉弟に愛が生まれた瞬間である

その後、涙と鼻水とヨダレにまみれた弟の顔を見て
瞬間的な愛は消えたがの~~

つづく

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