満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

名もなき毒 作:宮部みゆき

2007-05-29 | 本の紹介
     
「名もなき毒」                  「誰か」

2003年に出版された「誰か」の続編ともいうべき小説が
今回紹介する2006年出版の「名もなき毒」です

数十万人の社員を有する今多コンツェルン総裁の「今多会長」
今多会長の愛人の娘である「菜穂子」
その娘婿である平社員「杉村三郎」が主人公です

杉村三郎さんは、ひょんなきっかけで出会った菜穂子を愛してしまい
結婚を決意した時に始めて「実は…私の父は今多コンツェルン総裁なの」っと
打ち明けられ驚いてしまった大層オトボケな逆玉さんです

しかし…世間で考えるほど以上に逆玉人生は辛かった~

義父となる今多会長は二人が結婚するにあたり幾つかの条件を出して来ました
一つは…
杉村が勤めていた子供向けの雑誌を出版している「あおぞら書房」を退職する事
そして会長自らが発行人になりグループ全体の社内報を作成している
本社広報室の編集者に転職させ~
尚且つ
娘の菜穂子を担ぎ今多グループの経営に関与しない事
菜穂子をビジネスに巻き込まない事
菜穂子の財産を使って企業しない事を条件に結婚を許すと言います

杉村の両親は逆玉に良い印象を受けず
菜穂子が全ての財産を放棄し、杉村が「あおぞら書房」を退職せず
今多グループと完全に手を切るなら結婚を許すが
そうでなければ断絶するっと言います

菜穂子の父である今多会長と
自身の両親の考えの相違に挟まれ苦しむ杉村ですが…
心臓の弱い菜穂子の事を考え今多会長の条件を呑むことにします
両親には絶縁されてしまいますが…
医療の発達に伴い一粒ダネの娘の桃子にも恵まれ
この三人が仲睦まじく幸せな生活を送っているのです~
一般的よりも…リッチに…(笑)

が…世間の目は杉村三郎に冷たく
「金目当ての結婚だろう」などとヤッカミ半分の嫌味を言われる事も
しばしば。

前回の「誰か」では
今多会長の運転手・梶田が自転車にひき逃げされ命を落としてしまい、
会長自らに「遺された梶田の二人の娘の相談相手をするように」と
頼まれてしまった杉村が、ひき逃げ犯を探しだし
運転手梶田の過去の知られざる秘密を暴き
二人の娘の過去からの確執を紐解いた~っというお話でした
とは言え…ごく普通の編集者である彼は
探偵でも刑事でもないので…転びまろびつながら
色々な問題の解決に振り回されていたっと言った方が
正しいかもしれません(笑)

今回の「名もなき毒」では
前回と打って変わり連続無差別殺人が絡んで来ます
毒物を混入した飲料水をコンビニなどに置き
それを飲んでしまった見知らぬ人間が殺されるっという
犯人も被害者もお互いに顔も名前も知らない状況で起こる殺人事件が
ベースに進行して行きます
この事件に使用された毒物は「名がある毒物」

それと同時に杉村が席を置く本社広報室で雇い入れた
アシスタント「原田(ゲンダ)いずみ」が心に秘める「毒」
たえず何かに怒りをぶつけ
ののしり、わめき、泣き叫ぶトラブルメーカー。

理想が高く、人にも自分にも厳しく、
思い通りにならない事の多いこの世の中で
何もかも思い通りにしたいと踏ん張る。
人の幸せが妬ましく、平気でウソを付き周りの人間を不幸へといざなう
大人の年齢なのに大人に成りきれなかった子供の様な人
「毒」を絶えず撒き散らし周りの人間を弱らせる
この毒は「名もなき毒」

その他、様々な人間の織り成す「名もなき毒」の数々が
事件を複雑に入り組んだモノへとしていきます

現実の世界でもこの「名もなき毒」の何と多く氾濫している事か
刑事事件に発展しない小さな毒に日々さらされる我々は
知らず知らずのウチに…自らも毒を発しているのかもしれません

我が社にも何人かの「ゲンダ イズミ」が居ります
訳もなく社員をののしる上司も居ります
人の幸せに唾を吐く人も居ります
登りつめようと一生懸命な人の足を引っ張る事に至福の喜びを見出す人も…
ムカつくという理由の元に虐める人も
あまりにも多くの「名もなき毒」に囲まれ
それでも…毒を吐かずに生きて行ける人は…
杉村一家の様に…何の心配もなくお金があり、満たされた人達のみが
なしえる特別な事なのでしょうか?
っと作者は問いかけております

最近のニュースを見てもゲンナリしますが…
ニュースにならない日常でも毒を吐く人のなんと多い事か
「名がある毒」なら刑事事件になり罰せられ
「名もなき毒」ならいくら吐き出し、人を傷つけても罰せられない
そういう日常が当たり前にになりつつあります

友人、知人、同僚…3人集まれば必ず毒を吐きます
「そんな事を言うのは辞めましょうよ」っと言うと奇異な目で見られ
「話の通じない人」っと言われます(笑)
また…毒のある話の方が楽しい時もあります
何と言っても人のウワサ話程面白い話もないですから~(ハハハハ)

相手が傷つく程の毒は吐いた事は無いっと思っても
相手がどの程度の毒で傷つくのかは自分じゃないので解りません

少しキツ目のジョークで毒を食らったと倒れる人も居りますし
被害妄想で毒を受けたと反撃してくる隣人も居ります

ハッキリ言えるのは…
相手が立ち上がれない程の毒を吐く事は…犯罪です
刑事事件ではないですし
「名もない毒」でも…犯罪です

そんな風にこの本を読んで感じました~

ハテ…最近私は毒を吐かなくなりました~(笑)
お金は無いけれども…辛酸をなめる程には貧乏ではなく
子供は居ないけれども…愛する最高のダンナ様が居て
体重は増えるけれども…美味しい食べ物に恵まれて
私の人生って…もしかして…イイかも~っと思ったら
心が満たされ幸せを感じ毒を吐かなくなったみたいです…

いや…まてよ…
ブログで…好き勝手に毒を吐きまくっているから…
実生活では毒を吐かなくなったのか…も…な~


何時も…聞いてくれて…
ありがとうございます!

(ガハハハハハハ)