NPO法人POSSE(ポッセ) blog

3月2日に新宿七夕訴訟の傍聴に行きました!


2011年3月2日、生活保護申請を不当に却下した新宿区を相手に、保護申請をした原告が却下の取消を求めた裁判における原告本人による証人尋問が行われ、NPO法人POSSE(ポッセ)法人メンバーで裁判の傍聴へ行きました。原告の証人尋問では、原告が新宿区に生活保護を断られるまでどのような人生を歩んできたのか、その経緯を知ることができました。


【原告が生活保護申請に踏み切るまで】
原告は、路上生活で生活に困窮していました。そこに至る前、原告は生活保護を申請しており、派遣でスーパーの警備の仕事をしていたそうです。寮で寝泊まりをし、そこから仕事に通っていたのですが、夜勤が中心で、仕事柄、長時間立ったままだったので、非常に疲れ果てていました。しかし、寮は個室ではなく、数人が寝泊まりをする大部屋でした。それぞれがそれぞれの仕事をしており、生活時間も異なるので、寮に帰ってきても、他の人を起こさないように休むなど気をつかわなければならず、プライバシーも守られていないので、精神的にも身体的にも休まらなかったそうです。そのため、原告はこのまま寮にいても社会復帰は難しいと考え、寮を出ることにしたのでした。このような経過があり、路上生活を余儀なくされたのだそうです。

寮を出た後は、その前まで仕事をしていたときの給料などを駆使して、生活をしていました。あるとき、支援者の方に声をかけられ、その支援団体が主催していた法律相談会に参加しました。原告は当初、路上生活で住所がないので生活保護の申請はできないと思っていました。その相談会で、生活保護はたとえ住居がなくとも、どんな人でも無差別に適用されるものだと知り、改めて生活保護の申請を行うことを決めたそうです。


【新宿区福祉事務所の対応】
2008年6月2日、支援者らと共に生活保護申請をするために新宿区福祉事務所を訪れました。しかし、担当の職員は「生活保護ではなく仕事をすることを考えろ」などと言ったり、東京都の独自制度である「TOKYOチャレンジネット」に行けとチラシを渡したりして、申請を受け入れようとはしませんでした。原告は、自身の経験から大部屋では社会復帰が難しいと思っていたので、寮ではなく、アパートへの入居を求めており、支援者と共に強く主張を続け、その結果、何とか生活保護の受給は認められます。

しかし、新宿区側は、緊急性が感じられない、稼働能力を十分に活用していないと主張し、生活保護の申請を却下としてしまいました。

そして、2008年7月7日に原告は本件を提訴するに至ったのです。

なお、この処分を受け、生活の安定を優先させる事を本人と弁護団や裁判を支える会で検討した結果、都内の板橋区に生活保護申請することになりました。その結果「要保護性があり、緊急性が高い」ということで即日保護が開始決定され、開始決定通知と8月分の保護費の受給が行われました。このことからも、新宿区の生活保護の申請を却下する判断がおかしいということがうかがえます。


【法的問題点】
本件における法的な問題点は以下の2点です。

第一に、申請を受理せず、自立支援施設に誘導したこと。また、申請を受理しても、急迫性を理由とする職権保護を利用し、アパートに住ませなかったことです。生活保護は住宅・アパートで受けることが原則とされているのです(生活保護法30条)。そもそも申請を却下することに問題がありますが、申請を受理する以前に事態の急迫性を評価してアパートでの保護を認めるべきだったといえます。新宿区側のこうした対応は、ケースワーカーが訪問する手間を省こうとするのが一因と考えられます。

第二に、生活保護法1条「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、
国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」及び、同2条「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。」に反しています。日本国憲法25条は、「すべての国民は健康で文化的な生活を営む権利を有する」と定めて「生存権」を保障しており、その生存権を具体的に実現するために制定されたのが生活保護です。

生活保護制度は「生存権」の保障を実現する為のものであり、「最後のセーフティネット」と言われているものです。しかしながら、現実には、申請に来た人に対して「あなたはまだ働ける」「家がないと認められない」などと言って申請を認めずに役所の窓口で追い返す門前払い(いわゆる水際作戦)が横行しているのです。

今回、原告は安定した職に就けず、収入もない中で路上生活を続けており、生活保護の受給が当然に認められる状態でした。現に、板橋区では申請が認められています。しかし、新宿区は、法的に見ても受給要件を満たしていて、今まさに生活に困窮している人に対して「君は働けるのに働いていない」などと言って、最初は申請を受け付けることすらしませんでした。

更に、原告が支援者の力を借りて新宿区の「水際作戦」を破り、ようやく勝ち取ることができた生活保護の申請を却下するという信じられないことを行ったのです。


【本裁判の意義】
今回の裁判は、こうした新宿区の暴挙を問いただすものであり、生活保護申請のあり方を争うものです。つまり、こうした門前払いや不合理な却下に関して、正当性を争う、極めて重要な裁判と言えます。

裁判の結果は、社会の中で一つの規範となります。この裁判で原告が敗訴してしまうと、生存権の保障を実現する為の生活保護自体を否定することになります。つまり、生活に困窮して生活保護を求める人に対して「そうなってしまったのはあなたのせいである」という自己責任を社会的に認めることになり、言ってしまえば路上生活の人には生活保護を認めないというような差別的運営を容認する規範となってしまうのです。そういう意味で、単に原告一人の問題ではなく、私たちの生存権の保障のあり方を問うというところに、本件裁判の社会的意義があります。


【次回裁判のお知らせ】
6月21日14時から東京地裁にて結審が行われる予定です。

繰り返しになりますが、本件は生活保護のあり方を問うものであり、憲法で定められている生存権の保障を問う、非常に重要な裁判です。裁判の結果次第では、生存権の保障を否定するとんでもない規範となってしまいます。このような誤った規範にさせない為、正しい規範とする為に裁判支援は重要な意味を持っていますので、皆さんも是非裁判所へ足を運んでみて下さい。



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