ぽせいどんの今日の一枚

写真とかCGとかを気ままに + DIY

パラオ共和国(ベラウ共和国) 1993年  その3

2021-08-03 12:13:28 | 写真 海

 スターン(船尾)に腰を降ろした。特等席を占めていた。辰也が隣に座した。目の前に美女?が四人。 
 後ろの艇にNAUIのキャップを被った中年の男。おそらくこのサービスのチーフだろう。雑誌広告の中で視たような記憶がある。
 私に向かって会釈をした。私もそれに応えた。いつものことだが、黙って構えていれば私は名の有るダイバー・・・・・・に見えるらしい。

 二十代半ば頃か?、日に焼けた男が二名、女が一名乗り込んで来た。
 それが自己紹介をした。ガイドが細身のハル。サポートが太めのオチ(通称ジャイアン)ともっと太めの真っ黒な女。艇長は現地人。ここではオペレーターと呼ばれていた。

 離岸。ガイドがPPRに寄ると言った。PPR(パラオ・パシフィック・リゾート)はパラオ唯一の高級リゾート?。
 若いカップルが一組乗り込んで来た。新婚旅行と言う雰囲気でもない。まあいいだろう、詮索はすまい。

 百五十馬力のツインは流石に速い。おそらく二十ノット以上は出ているだろう。フラットな水面に曳き波を残してただひたすらに走る。
 振動がもの凄い。ニコノスを床に置くことは危険だ。スピードフラッシュのグリップを持ち続ける。
 水中では浮力が働く所為で大した負担では無いが空中重量はかなりのものがある。

 女の子四人はご機嫌な様子だ。行き交う艇の殆どが手を振る。それに応えている。
 この種のツアーでは同好の士と言うことで話が弾むのだが・・・・・・。
 打ち解けて軽口を交わすにはまだだいぶ時間が掛かりそうだ。
 PPRのカップルは我々と離れて二人でバウ(船首)に座している。
 だからと言って二人の世界に浸るっているほどではない。
 僅かの経験ではあるが私の見たところによると、ダイビングツアーにカップルで参加するのは少々考えた方がよい。
 二人だけの世界を造り上げるには狭い艇の上では無理がある。
 だからと言って周囲とコミニュケーションを量ろうと努めても大多数を占める若いオネーサン方は容易に受け入れてくれない。
 まあ、どうでもいいことだが。

 島。いったいいくつあるのだろうか?。実数は誰も掴めてはいないのでは?。
 その陰に時折停泊中の帆船を視る。できることなら私も愛艇でここを訪れてみたいものだ。

 パラオ松島の異名をもつロックアイランドを通り抜けた。
 そしてセブンティーンアイランドを横目で視た。
 間も無くポイントだろう。

 一本目 ゲドバス・コーラルガーデン

 停船。ガイドがアンカーにロープを結んでいる。ロープワークは素人だ。だが海は穏やか。口を挟まなくてもいいだろう。
 「ウェットスーツに着替えてください」ガイドが声を掛けた。
 私は新品のファブリックスーツ。身につけるのは非常に簡単だった。
 辰也も私と色違いのそれを購入してきた。『おホモだちみたいでイヤだな』
 四人のうち二人は自前のそれ、簡単に着込んだ。
 一人はアポロのプレステージ(高級品)。カラーはピンク。(中肉中背の女の子。以後ピンク)
 もう一人の痩せ型の方はブルーのスーツ。袖を切り落としてシーガルにしていた。(BCがSAS製でしたので以後はSAS)

 だがフィジーと丸ポチャが苦労していた。『ダイエットしなきゃ。ダイエットを』
 レンタルのスーツは標準体型の者以外には多少無理がある。
 『ん!』彼女達は前後を逆に着ようとしている。
 『かず少ない前ファスナーのスーツだそれは』・・・
 「前後逆」・・・
 丸ポチャがどうにかスーツの中に身体を押し込んだ。
 フィジーは身長の方が影響をしているのだろう涙ぐましい奮闘を続けている。
 乾いたウエットスーツは着辛い。濡らすと水が潤滑剤の役をするのだ。
 「水の中に入って着たら」とアドバイスをした。
 「エッー?」どうも信用されていない。
 漸く着用できたと思ったら今度は船酔いを訴え始めた」こればかりはどうしようもない。
 「本当に船酔いか?・・・悪阻じゃないのか」冗談にも反応しない。これは重症だ。
  
 ブリーフィング。早い話がポイントの説明。ガイドの声が小さくて聴き取りにくい。ポイント名さえも不明。
 ギアを装着。潜行準備完了。だが、いっこうにエントリーのサインが出ない。
 スタッフの手際が悪い。何故かもたもたしている。
「もう水の中に入ってもいいかな?」沈んでしまえば船酔いはけっこう治まるものだ。顔色の悪いフィジーだけでも水に漬からせてやりたかった。
 暫くしてやっとエントリーのサインが出た。乾舷の低いボートからのエントリーはバックロールが基本。
 ところがフィジー、バックロールエントリーに難色を示した。
 後に聞いた話では海洋実習はビーチエントリーのみ。ボートダイビングそのものが初体験。
 『世話のやけるオネーサンだこと』
 結局空身でエントリー。BCは海上でスタッフの手により装着。
 辰也が先行してバックロール。艇の上からニコノスを一時預けた。
 さて、いよいよパラオにおけるファーストダイビング。
 乾舷に腰掛けレギュレターを咥えた。
 マスクを片手で押さえた。重心を艇の中に残したまま尻を舷の外にスライドさせた。
 海面に誰もいないことを確かめて脚を伸ばした。
 飛沫。私はパラオの青に染まった。

 『ん!』想像していたよりも透明度が悪い。時期が悪かったか?。しかしダイビング雑誌によれば今のパラオはベストシーズンの筈。
 『沖縄の方が綺麗だな』偽らざる感想だった。
 潜行。BCのエアを抜いた。ウェイトは2kg。ファブリックスーツは浮力が無い。充分すぎる量だ。
 耳抜きもすんなり。水深10m。魚影は豊富だ。
 ニコノスのスピードフラッシュをアームの先端まで移動。角度を合わせて固定。スイッチオン。チャージ。
 レンズの距離目盛りは取り合えアズ1m。ファインダーを覗いて露光測定。絞りをホンの僅かアンダーに設定した。

 全員が揃ったようだ。ガイドが『ついてこい』とサインを送って来た。フィンキック。
 岩陰にエンジェルフィッシュがいた。(水槽で飼っている淡水魚のそれではなく海のエンジェルフィッシュはヤッコの類の英名)
 ニコノスの出番だ。しかしパーティのペースが速すぎる。と言うよりもガイドの移動速度が速すぎるのだ。
 珊瑚を保護するためにアンカーリングポイントから、かなりの距離を取り水中移動をすることはしばしばある。
 てっきりそれだと思った。この先に素晴らしい水中パノラマが展開することを信じて疑わなかった。
 だがガイドのスピードはいっこうに緩まない。ビギナーがいるのに気を使うことは無いのか?

 パーティが停止した。ガイドが指差す方向を視た。



 砂地に横たわる影。『サメ!』・・・和名、ネムリブカ。ホワイトチップだ。こいつは危険性はまず無い。
 だが、遠巻きに眺めるだけのようだ。
 サメを鑑賞しているパーティを一枚撮る。朧気でかまわないから鮫の影が写っていればよいのだが。
 岩陰にを再び発見。
 もういつもの通りの自分のペースで行くことのした。
 パーティから離れて静かに接近。シャッター釦を押した。

 淡い緑がかった黄。全身に散りばめられた水玉。そして何よりの特徴は黒い横縞が六本。
 和名、ロクセンヤッコ。英名シックスバンデッドエンジェルフィッシュ。
 日英どちらも同じ感覚の命名だ。線にしろバンドにしろ片側六本である。両側ではその倍の十二本の縞がある。
 だからジュウニセニャッコ。ツエルブバンデッドエンジェルフィッシュと呼ぶべきである。
 これを屁理屈と言うならばミツボシクロスズメダイはイッテンゴホシホシクロスズメダイだ
 ※スズメダイ科、体色は黒、身体の両側と額部分に白色の斑点を計三個持つ。
 他にも、わかりやすい例を挙げるならば、ナナホシテントウムシはサンテンゴホシテントウムシだ。

 視界の端にパーティを確認しながらもう一枚。



 沖縄で撮り損ねたセグロチョウチョウウオがいた。閃光。
 フィンキック。パーティに合流。残圧チェック。・・・残り時間は十数分と言うところか。
 減圧停止。中層に漂いながら周囲を見回す。バラクーダーの大群だ。それが帯になって何処までも続く。
 体長1mを超すアオヤガラが目の前を横切った。
 辰也がそれに気づいて指を差した。
 『もとより招致』

 浮上。BCにエアを供給。ボートが近寄って来た。舷から梯子が垂らしてある。まずガイドとサポートの二人が乗船。
 感心できないシステムである。一人は海上に留まるべきであろう。
 「まずBCを脱いで渡してください。艇の上からジャイアンが叫んだ。
 私はまずニコノスを預けた。両手がフリーになれば何でもできる。
 BCはフロントバックルを外してカマーベルトを剥がす。肩を抜いてワンキック、するりと脱げた。艇の上のジャイアンが引き上げた。
 辰也が苦戦していた。身軽になった私は辰也の傍へ。
 「どうした?」
 「上手く脱げません」
 「まず、肩を抜け」
 「さっきからやっているんですけど脱げません」
 辰也の背負っているタンク上部のファーストステージを掴んだ。半ば強引に両肩から引き剝がした。
 梯子の周囲は団子状態だった。揺れる艇に上がるのはなれない者にとっては困難がつきまとう。まして固定されていない梯子ではなおさらだ。
 私は右手で舷側を掴み左手で梯子のサイドを掴み固定した。
 フィジーが苦しそうな顔をしている。
 「お先にどうぞ」
 ・・・・・・辰也を最後に押し上げた。フィンを艇の上に投げ上げて素早く乗船。
 スーツのファスナーを降ろして深呼吸。
 やはりレギュレターから送られてくる乾いた空気よりも直接吸い込む大気の方が数段に美味い。
 目の前にピンクがいた。スーツの上半分を脱いでくつろいでいる。
 双の膨らみがこぼれ落ちそうだ。
 本人はまったく気づいていないだけに・・・さてどうしたものか?
 「写真撮れましたか?」SASが訊いた。
 「駄目ですネこのペースでは」 SASが黙って肯いた。
 フィジー、苦しそうだ。船酔いが治まらないのだろう。

 「どうだ感想は?」
 「凄いですね来て良かったですよ。でも・・・」
 「でも、なんだ?」
 「慶良間の方が綺麗ですね」
 「透明度に関しては同意見だな。で、調子はどうだ。だいぶなれたか?」
 「ええ、多少の不安は有りましたが・・・いけそうです」
 「BCはどうしたんだ?」
 「脱げないんですよね」
 「ショルダーベルトを調節した方が良さそうだな」

 「水中では、ぽーさんが写真を撮るのを視ていたんですよ。イヤァ大変ですね」
 「そうだな、目測でのピント合わせはけっこう苦労するよ。それにフラッシュの調整も必要だし・・・」
 「僕には撮れそうもありません」
 「うん、いまのお前には無理だろうな」
 「二本目は俺の後ろに付いてみろよ」
 「何かあるのですか?」
 「別のキックの仕方を教えてやるよ」
 「いま、教えてくださいよ」
 「見本を見せた方が分かりやすいのだが・・・まあいいだろう。お前のは所謂バタ足キックだ。これは簡単でスピードもあるが弊害も多い。
  例えば海底近くでは砂を巻き上げたり珊瑚を傷つけたり・・・」
 辰也が頷いた。
 「そこでどうするかと言うことだが。まず脚を水平に開く。四十五度くらいでいいだろう。閉じながら足の裏をやや内側に合わせるようにする。
  脚力の弱い女子供と一緒の時はこのスピードくらいがちょうどいいな」。それに楽だぜ。もうひとつおまけに、そこそこに上手くみえる」
 「やってみよーっと」

 「入ってすぐにカメがいましたね」。皆さん視ましたか?」ジャイアンが笑顔で聴いた。
 私にはその記憶が無かった。ラストエントリーだったのでそのころにはすでに逃げてしまったのだろう。
 「ナポレオンがいましたね」辰也が目を輝かせて言った。皆一様に頷いた。
 『エッー!?』どうも視なかったのは私だけのようだ。
 「何処で視たんだ?」
 「サメのすぐ後ですよ」それで分った。私はパーティから少々離れてエンジェルフィッシュを追っていたのだ。
 ナポレオン。和名メガネモチノウオ。ベラ科。
 ダイバーならば一度はお目にかかりたい魚のひとつ。見逃したのは残念だ。だがここは日本ではなくパラオだ。
 最もポピュラーな魚の一種だ。後五本潜るうちには必ず出会えるはずだ。
 
 艇が移動を始めた。五分ほど走行。目の前に小さな島が近づいてきた。
 すでに数隻のダイビングボートがアンカーリングしている。
 Nikon L35AWADを持って上陸。
 小島はその懐に小さなビーチを抱えていた。そこに五六十人のダイバーが犇めきあっていた。
 女の子四人は波打ち際の近くの岩陰に身を寄せた。我々も同様にその脇で涼をとった。
 
 辰也が弁当を運んできた。受け取って蓋を開いた。
 『なんだこれは?』粗食とよぶ以外の何物でもない。
 日本のテイクアウトの弁当屋。その最低ランクの物の方がはるかに豪華である。

 だがここはパラオ。しかも格安ツアー。贅沢は言うまい。
 持参したミネラルウォーターで無理やりに胃に流し込んだ。
 ロングピースに点火。『さて出航まで約一時間・何をして過ごすか?』
 
 文庫本を開いている男がいた。だがどうもこの風景には似合わない。
 読書量に関しては人後に落ちない私ではあるがこの男の真似は出来ない。また、したいとも思わない。



 
 スーツの上半身を脱いで袖を腰前で縛った。
 ダイバーズナイフを片手に浅瀬で遊んでいる辰也に近寄った。辰也が足元を指さした。二三センチのシャコ貝が岩の中に埋もれるように息づいている。


 その周囲には鮮やかなコバルト色。ソラスズメダイ?の群れだ。ムラサメモンガラも数匹泳いでいる。
 「ウミヘビだ」辰也が叫んだ。小さなウツボだった。ちょっかいさえ出さなければ危険な魚ではない。
 SASとピンクの二人も浅瀬で魚を視ている。丸ポチャは岩陰を散策している。若いだけに元気いっぱいだ。
 その連れのフィジーはと言うと・・・昼食を摂る元気もなくぐったりと横たわったままだ。そっとしておくのが一番だろう。
 PPRの二人は何処に行ったのか姿が見えない。印象の薄いカップルであったから大勢に紛れ込んだらもう見分けはつかない。

 早めにボートに引き上げた。せっかく持ち込んだF4だ。周囲の風景を撮影しようとアルミバッグから取り出した。レンズは28~85mmのズームを装着した。数カットを撮影。
 本当は走行中に周辺の風景を撮りたかったのだが、甚だしいスプレーの中ではその度胸は無かった。

 つ づ く

 

 

 


 


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