木工挽物という仕事

基本的には時代遅れの仕事
正反対の位置にいるブログから発信してみます
でもブログも先端じゃなくなりましたね

ねじ巻き時計

2011-06-21 23:56:21 | タイムマシン
昔の家の工場に古い柱時計があった
いや小さいから掛け時計だ
1週間に一回くらい僕が脚立を持ってきてねじを巻く
巻くねじ穴は2つあった
4の脇と8の脇
4のねじは左に巻いて8のねじは右に巻く
両方とも内側6に向かって巻いた巻いた巻いた・・巻いた


別に疲れたわけじゃない
もう巻きたくないと言ったわけじゃないけど
いつの間にかその時計は姿を消した

工場の中は埃だらけだ
その埃の中でいつもしっかりと時を刻んで
僕の仕事が終わるのを待っていてくれた
忘れたころにガラスを拭いてやるとまた新しい顔になる
いつも仕事しながら振り返ってはその文字盤を覗いた

いやな仕事の時はちっとも進んでくれないけど
楽しい仕事の時はめちゃんこ速い
モーターの音に負けないようにボ~~ンと鐘を鳴らす
最初のころは5つ鳴っても仕事は続き
6つ鳴ってもまだ終わらなかった
6つの次の1つが鳴ると仕事が終わる

やがて時は過ぎ、6つの鐘で仕事が終わるようになった
もっと過ぎると5つの後の1つで終わった

今は違う時計だけれど 音はしないけれど
5つ鳴るはずの時に仕事は終わる

とにもかくにもこの時にはホッとする
また今日も頑張れたと


その古い時計は親父が近所の喫茶店のママさんに上げたのだ
もう巻く必要が無くなった僕は
子育てを終えたような気持ちでその喫茶店の時計を見上げた

それからもう20年ほど経った
たくさん生きたよね

コメント (4)
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