アート・スピーゲルマン「マウス」


 漫画、アニメ系が続きますが、漫画で忘れられないのが第2次世界大戦でのユダヤ人迫害、アウシュビッツの様子を描いたアート・スピーゲルマンによる「マウス」という漫画です。
 漫画といっても1992年に漫画としては初めてピュリッツァー賞の特別賞を受賞した作品です。父親の経験談を息子であるアート・スピーゲルマンが描くという構成で、ユダヤ人はネズミ、ドイツ人はネコ、ポーランド人はブタとして描かれています。
 例えるならば、「のらくろ」や「はだしのゲン」のような戦時の漫画、決して上手い絵ではないんだけど、真実味に溢れていてドキドキする漫画と表現したらいいでしょうか。

 ユダヤ人迫害、アウシュビッツの真実については私もよく分かりません。「アンネの日記」、「夜と霧」、映画の「シンドラーのリスト」などで断片的に理解している程度です。関心があって、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、関連する1900年代の動きに関する歴史物はたまに読むのですが、いくら読んでもよく分からないというのが実感です。いつの日かエルサレムを訪問したいなあと思うのですが、我々が生きている間に可能になることを本当に祈りたいです。

 素晴らしい漫画です。著者の父親が体験した個人的な悲劇、惨劇ですがそれが普遍性を持っています。父親と息子と家族の話しでもあり、結局、父親が生き延びることが出来たのは狡賢かったからだということを明らかにしていきます。迫真のドキュメンタリーでもあります。「はだしのゲン」、「アンネの日記」、「夜と霧」に感動した方であれば必ず共感できると思います。ⅠとⅡと2巻ありますが、是非手に取っていただきたいと思います。

 なお、アート・スピーゲルマンのその後の活動状況については全く情報がなかったのですが、最近、ニューヨークの9.11に関する漫画を描いたがあまり評価されていないという記事を読みました。いずれにしてもなつかしい名前でうれしかったです。是非その新作を読んでみたいです。

(国内版の表紙映像が見つからなかったのでほとんど変わりませんが洋書の表紙を使用させていただきました。)

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