川上未映子『黄色い家』




 『夏物語』に続いて手に取ったのはおそらく最新作の『黄色い家』です。まるで宮部みゆきの犯罪小説でも読んでいるようなスリラータッチのエンターテイメントです。読売新聞の連載小説だったようで、多くの人が読み易く興味を惹くような内容、展開になっています。

 親切にしてくれた大人へのノスタルジーを縦糸に、カード犯罪・お金のリアルを横糸に織り交ぜて全く飽きさせない。経済学からでなく文学からお金とは何かにアプローチした野心作でもあり、成功しているかどうかはよく分かりませんが興味深くて面白かったです。

 個人的には在日韓国人の泥臭い苦労、苦悩を使うと小説としては比較的簡単に面白くなるんだよなぁとか感傷的なシーンも結構多いなぁという思いや主要人物の一人である黄美子さんの人物像が今ひとつはっきりしなかった印象は持ちました。

 それでも最後の最後まで隅々まで読み通せました。純文学系作家によるエンターテイメント小説で不思議な読書感はありましたが読み物としては一級品です。
 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「サルバトー... 「はしご」(銀... »