ザ・ドアーズ「ザ・ドアーズ(ハートに火をつけて)」

             

 村上春樹の「雑文集」という新刊が本屋に並んでいました。村上春樹のエッセイというか小文の大ファンには季節のプレゼントのようなものです。「序文・解説など」、「あいさつ・メッセージなど」といった珍しいものから、鉄板の「音楽について」など様々な70近い文章が収められています。

 その中から、まずは「音楽について」を先に読みました。一番おいしそうなところをまず食べないと落ち着いて読み進められません。82ページから186ページまで。期待をはるかに超える面白くて深みのある文章ばかりです。過去最高の充実ぶりではないでしょうか。その中の「ジム・モリソンのソウル・キッチン」に次のような記述がありました。

    僕にとってはLP『ザ・ドアーズ』を越えて戦慄的なレコードはなく、
    『ストレンジ・デイズ』を越えて美しくシンプルなレコードはなく、
    『LAウーマン』を越えて粗々しい優しさを秘めたレコードはない。

 これを読むと、ドアーズを聴きたい気持ちを止めることは出来ません。これまでドアーズというと映画「地獄の黙示録」の挿入歌「ジ・エンド」しか聴いたことはありませんでした(今回、ディスクを聴いて「ハートに火をつけて」は耳にしていました)。その他知っていることといえば、ボーカルのジム・モリソンがカリスマ的人気の中で多くの同時代のスター同様に麻薬か何かで早死にしたことくらいです。

 先日、横浜のタワーレコードに寄ったのは、ドアーズのディスクが目的でした。DのコーナーでCDの帯を眺めると、「雑文集」で取り上げられていた「ライト・マイ・ファイア(ハートに火をつけて)」と「ソウル・キッチン」はデビューアルバム『ザ・ドアーズ』に入っていました。「ジ・エンド」がラストを飾ります。まずは『ザ・ドアーズ』です。それと『ストレンジ・デイズ(まぼろしの世界)』の2枚をとりあえず購入しました。どちらも2000年代にリマスターされているようです。

 最近、たまげてばかりですが、これにはたまげました。『ザ・ドアーズ』はまさに戦慄的なアルバムです。私は史上最高の映画は「地獄の黙示録 特別完全版」(始めの上映のやつではなくて再編集して3時間20分になったバージョン)が有力候補の一作と思っているのですが、全曲、地獄の黙示録のサントラのように聴きました。ギターが前面に出る訳ではないのですが、リズムとボーカルとオルガンとでめちゃくちゃロックしています。これは凄い。ロックを聴き始めてから25年以上経ちますが、本物の最高のロックアルバムをこれまで知らなかったとは。

 心が震えた『ザ・ドアーズ』に比べると、『ストレンジ・デイズ』は心地よく聴けましたが今はまだ十分には価値を理解できないようです。ただ、シンプルな美しさは感じられます。もう少し聴き込めば分かるんだと思います。

 録音の良さ、音のキレも最高水準で全く問題ありません。いやぁ、これがロックなんだ、ロックだよなぁという驚きと溜め息です。




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