村上春樹/小澤征爾「小澤征爾さんと、音楽について話をする」

              

 指揮者の小澤征爾へのインタビューを村上春樹がまとめた一冊です。小澤征爾の病後のリハビリ期間を利用して、国内外でクラシック音楽について語り尽くした。

 師事したバーンスタインやカラヤンのこと、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーやオペラをオーケストラを統率して演奏すること、音楽家として生きることなどなど・・・クラシック音楽好きには堪らない、とにかく面白い。村上春樹がいい話しをどんどん引き出しています。どこも興味深くて楽しい。これからの音楽、ディスク鑑賞にも役立つ情報満載です。

 ただ、通常この手の本を読むと紹介されている演奏のディスクを何枚も購入したくなるものですが、小澤征爾のディスクを改めて聴いてみたいという気にならないのは残念です。日本人が持つリズム感が合いすぎるのか、どの演奏を聴いても普通過ぎて楽しめないのが正直なところです。おそらく実演に接すると印象も随分違うのでしょうが機会に恵まれません。

 ここで語られた内容だけでも十分面白いのですが、村上春樹もコメントしているとおり、語られなかったことが多くあることが行間から読み取れます。いろいろあったんだと思います。開拓者でありその点では本当に尊敬できます。

 意地悪な質問もなく、極めて和やかな雰囲気の中での対話です。このあたりの再現は村上春樹は超一流ですから最高の読み物になっています。一気に読めました。
 クラシック音楽に興味のない方、基本的な知識のない方が読んでも面白いとはいえませんが、ファンなら絶対です。


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