パタネ/ミラノ・スカラ座「ヴェルディ リゴレット」


 クラシック音楽ファンで海賊盤を含めたディスクをコレクションするのが好きな方であれば、お好みのライブ爆演があると思います。
 ゲルギエフのヴェルディレクイエムのように正規盤で聴かされると“それはいくらなんでもやりすぎだよ”と食って掛かりたい演奏でも、ライブの海賊盤となると凄い!と思えるから不思議です。

 以前はよく海賊盤を探しに渋谷の音楽ショップに通ったものですが、最近はあまり海賊盤を見なくなりました。クライバー、チェリビダッケなどのライブ演奏が正規盤で出だしたこと、何らかの規制が強化された(?)、ショップが自粛している(?)ことが理由でしょうか。

 私が大好きな爆演は海賊盤ではありませんが、新潮オペラブックという以前発売されていた企画盤でのヴェルディのリゴレット、1970年4月6日のミラノ・スカラ座でのパタネ指揮の演奏です。オペラではヴェルディ、モーツァルト、ワーグナーと大好きな曲が沢山ありますが、強いて一番好きな曲を挙げるとなると今のところリゴレットでしょうか。

 この演奏の面白さは解説書にも「歌手たちのあまりの白熱の名演ぶりに、観客も頭に血が上って、アリアなどが終わらないうちに拍手や歓声を飛ばしている(それに対して「シー、シー」と制している様子も聴こえる)」とありますが、現地ではオペラはこういう風に聴かれてるんだという発見があります。
 最大の当たり役であるリゴレットを歌っているカプチッリもアリアの最後を伸ばーーーします。これは歌手がノッた時に臨機応変にやっていることなのか、指揮者の指示なのかよく分かりませんが興奮させられます。気合の入った歌が続き、えっ、そんなところでブラボー入るのという驚きもありますが、パタネというメジャーではないけど優秀な地元指揮者の時には観客が自然な感情を遠慮なく表しているのでしょうか。

 因みにリゴレットはこのディスク以外ではムーティのスタジオ録音盤が何といってもいいです。その後すぐに再発売されたスカラ座ライブ盤や世評高いカラス盤、ジュリーニ盤は好みではありません。

 このシリーズを企画した永竹由幸さんは、元商社マンの愛好家から転じて、クラシック関係の事業、評論、大学講師などをされている方で私の大好きな執筆者の一人です。ヨーロッパでの劇場経験豊富でそれを何ともいえない自然な表現で伝えてくれます。永竹さんの解説書が欲しくて同シリーズのワーグナー指環も買いました(演奏のマゼールのバイロイト盤はいまいちですが)。永竹さんがいなければこのライブ演奏も日の目をみなかった訳でありこの慧眼に感謝したいと思います。

 高いお金を払っても日本ではこのような爆演が実際に聴かれることは稀です。正規盤でも海賊盤でも構いませんが凄演を疑似体験できる機会があるとうれしいです。


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