習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ジュノ』、『さようなら窓』、『乱暴と待機』

2008-06-13 23:02:14 | その他
 とてもいびつな恋愛を描いた小説を2冊続けて読んだ。この2つに『ジュノ』を加えると、偏った恋愛三部作の誕生だ。ジュノは、妊娠出産する16歳の少女の驚きの日々のスケッチというよりも、大好きな男の子に「好きです」と告白して、2人で初めてデートするまでを描いた初恋物語のように、僕には思える。  ジュノはポーリーにうまく気持ちを伝えきれないので、セックスを先にしてしまう。話も出来ない彼に対して、まずセッ . . . 本文を読む
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小川内初枝『長い予感』

2008-06-12 23:42:33 | その他
 どうしてこんなにも悲しい気持ちを描こうとするのだろうか。ひとりぼっちで生きていくことに痛みをこの小説はとても静かに描いていく。物語としてではなく、情景として切り取っていく。  27歳から40歳までのいくつかの時間。6つの短編。姉と妹。それぞれの風景。最後にはふたりがいる風景まで。  27歳、30歳、37歳。この10年間を通して、紗絵はひとりを生きていく。キャンプ場での孤独。男が部屋に連日のよ . . . 本文を読む
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France_pan『Hamlet!!!!!!!!~遊ぶ編~』

2008-06-12 22:24:59 | 演劇
 『ハムレット』を使ってこんなにも真剣に遊んでしまうなんて、伊藤さんはなんて素敵な方なのだろう、と改めて彼のファンになってしまった。今までもずっとFrance_panは大好きだったが、なんだかタイミングがあわなくて、全然見れないでいた。今回だって連絡を頂かなかったら、また見逃していたかもしれない。でも、これからはちゃんと全部見るから。全てに優先して見ようと心に決めた。(大袈裟だなぁ)それくらいに、 . . . 本文を読む
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PM/飛ぶ教室『きょうも恋唄』

2008-06-12 22:22:32 | 演劇
 ウイング・フィールドを中心に上演していた初期の頃の作品はすべて見ている。扇町ミュージアム(懐かしい)に拠点を移してから少しずつ違和感を感じてきた。でも『水嶋さんのストライキ』(再演)まではほぼ欠かさず見てきた。だが、その後、疎遠になり今回である。  久々のウイングということにも興味を惹かれた。この狭い空間は、今の蟷螂さんにとってどういう意味を持つのかも、今回の興味の焦点だ。僕が飛ぶ教室を見れな . . . 本文を読む
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『ザ・マジック・アワー』

2008-06-12 21:43:40 | 映画
 三谷幸喜の第4作は、かなりヤバイ映画だ。興行的にも作品的にもとても危険な綱渡りをしている。映画のバックステージものは絶対ヒットしないという定説があるが(あると思うが)敢えてそんな禁を破り挑戦したのは、それでも映画が好きだという彼の熱い思いであろう。  楽屋落ちになりがちだし、へんな薀蓄は一般の人の興味を削ぐことに成りかねない危険がある。そんなこともわかった上でやはりこの題材で作ろうと思ったのは . . . 本文を読む
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演劇集団よろずや『Io sto bene,grazie』

2008-06-09 22:15:37 | 演劇
 『盆がえり』以来、三年ぶりとなる寺田夢酔さんの待望の新作だ。これだけ長いスパンが必要だったのは、彼が自分の劇団を大切にして、チームで作品作りをしていく上でのどうしても必要な時間だったのだ、と思う。別に慌てて新作を発表していくことはない。自分のペースで焦らずゆっくりと熟成させていけばいいのだ。  今回の作品はセドリック・クラピッシュ監督の傑作『スパニッシュ・アパートメント』を想起させる群像劇だ。 . . . 本文を読む
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ババロワーズ『KICK』

2008-06-09 21:41:46 | 演劇
とてもゆる~いストーリーラインの輪郭を残しながらも、そこに囚われることなく自由に連想からイメージを膨らませたり、脱輪したりしながら、コントと芝居の中間くらいのラインで2時間を見せていく。  とても見やすくて、おしゃれで楽しい。こんなふうにババロワが進化してきてるんだ、と認識させてくれる作品だ。もう既に15回公演を数えるということにも驚いた。初期の頃と、途中何度か見ただけで、最近ずっと見ていなかっ . . . 本文を読む
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『僕の彼女はサイボーグ』

2008-06-08 23:48:07 | 映画
 メインタイトルまで、約20分。主人公の2人が出逢い、別れて行くまで。一夜限りの切ない恋物語が描かれていく。これだけで1本の短編映画として成立する。しかし、この映画はここでは終わらない。当然。  ここから映画は始まる。このちょっと風変わりな男女の物語を導入部として、その1年後、彼が彼女とそっくりなサイボーグと出会うという本題に入る。ラブストーリーである。なのに、このメインストーリーのラストは、唐 . . . 本文を読む
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妄想プロデュース『風の左手』

2008-06-08 23:11:20 | 演劇
 芝居を見てから既に一週間が過ぎた。忙しくて書く暇がなかったのだが、本当はすぐにでも書きたかった。最近見た中で一番気合いの入った芝居である。こういう芝居が見たかったのだ。思いのたけを全てぶつけるような、玉砕覚悟の芝居だ。  上演時間2時間45分。これでもか、これでもかと自らのイメージを展開していく。この上演時間は作、演出の池川辰哉さんにとっては短すぎるのだ。完成台本はこれを遥かに超える長さだった . . . 本文を読む
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楽狂プロデュース『居酒屋の怪人』

2008-06-02 22:53:40 | 演劇
 一体なんでこんなにも歌を歌うシーンがあるんだろう?全く意味がない。もちろんそのくだらなさが作品の魅力になるのならそれもまた一興と言えるだろう。だが、これだけひつこくやっているのにまるで楽しくならない。全22曲なつかしの名曲が出てきたらしい。たしかにそうだと、思う。だが、それがどうした?  こういう毒にも薬にもならない話を芝居にしようとなぜ思ったのだろうか。バカに徹してくれたならまだ許せるが、そ . . . 本文を読む
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劇団乾杯『V{breath}』

2008-06-02 22:15:11 | 演劇
 だいたいこの芝居自体には、本当は何の意味もない。だいたい普通なら「演劇とは何か」というテーマのもとに作られた芝居なんてとても見る気にならない、というのが本音ではないか。なのに、このとても見る気が起きないような芝居がとんでもないエンタメしてるのだ。驚け!(いや、驚いたのはこの僕なのだが)  正直言ってかなり驚いた。これをメタ演劇なんていいません。これは演劇コントとでも言うべき性格のものだろうと思 . . . 本文を読む
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