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映画・演劇のレビュー

井嶋敦子『ひまりのすてきな時間割』、まはら三桃『かがやき子ども病院 トレジャーハンター』

2022-03-19 12:46:25 | その他

2冊連続で児童書を読んだ。どちらも病気を扱う。前者はADHDの小学6年生の少女が主人公、後者はさまざまな病気で長期入院している病院が舞台となる群像劇。児童書だけれども、扱う内容は重いし、しんどい話だ。だけど、そこから逃げることなく、それをきちんと描きつつ、彼らの想いを伝える。他人事としてではなく、身近な問題として、受け止めることができるのがいい。子供たちがこういう本に触れて、いろんなことを考えてくれたならうれしい。もちろん、2冊とも大人が読んでも十分に、いろんなことを考えさせられる小説だ。

『ひまりのすてきな時間割』はADHD、自閉スペクトラム症(ASD)の少女が自分の生活を小説として書くお話。朝起きたことろから、寝るまでの1日のスケッチ。それを長編小説に仕立てようとする。彼女はこのささやかな小説を通して、自分を見つめることになる。書いたものを書いたところまで毎日親友に見せて、読んでもらい、感想を聞く。書くこと、伝えること、伝わること。客観的に自分を見つめ、信頼できる友人と共有することで、ほんとうの自分を知る。そこから成長していくことになる。描かれる1日は繰り返される彼女の毎日の姿で、6年生になり担任の先生と合わず、引きこもりになっていた彼女が、自分と向き合うことで、変わっていく姿がしっかり伝わってくる。

『かがやき子ども病院 トレジャーハンター』は病院内にある院内学級に通う子供たちの生活のスケッチだ。後半は、タイトルにあるように宝物探しになる。ささやかな宝物(失くしたノート)を取り戻すため病院の屋上に行くという、ただそれだけのお話なのだが、彼らにとっては壮大な冒険譚になる。病院から出られない彼らにしてみたらこれは確かに大冒険なのだ。まはら三桃の小説としては少しもの足りないけど、こういう子供目線による子供たちのための本格的児童文学への挑戦は支持したい。彼らに読んでもらいたい、という思いが伝わってくる。


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