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映画・演劇のレビュー

『億男』

2018-11-02 20:49:24 | 映画

とてもよく出来た寓話になっている。最初は少し嘘くさくて鼻に付くが、わざとこういうタッチで見せようとしているのだということがわかると、この映画のスタンスに乗ることで気持ちよくこの物語の世界で遊べる。リアルなんか最初から目指してはいないから、何を伝えようとして、この人たちをここに登場させるのかを、のんびりと感じながら見たならいい。

 

最初の男(あのわざとらしい付け髭としゃべくりでやりたい放題の北村一輝!)が教えてくれること、さらには、次の男(嘘くささでは引けを取らない藤原竜也)や、その次の女(あの質素な生活を体現する沢尻エリカ!)と、とんでもない曲者を用意するから、最初の高橋一生が自然体に見えてくるほどだ。映画のハイライトは学生時代のふたりでのモロッコの旅。そこに戻ってくる。

 

3億円を手にした男が何を思い何を感じるのかを、コミカルに描くのではなく、おとぎ話として、教訓さえ携えて、でも、それが嫌らしくはならない、という実にバランスの良い映画に仕上げる。大友啓史監督はこういうタイプの映画さえそつなくこなすのだと、驚かされた。主人公は佐藤健。いつもとは雰囲気を変えて、嘘くさい。似合わない眼鏡をかけて、わざとさえないダサ男を体現する。

 

このしょぼくれた男に訪れた3億の夢。そんな彼の夢の後先を通して、お金とは何なのか、を彼の旅を通して考える。わざとらしい映画がだからこそなんだかとても素直に胸に迫るのだ。砂漠での落語にシーンが胸に沁みてくる。自分たちがまだ何者でもなかった頃、日本から遠く離れた場所で、雄大な風景に先に何を見たのか。お金では手に入らないものを、お金を通して描く、という実にあざといコンセプトが、なぜかここまでやられると素直に入ってくる。

 

3億円で子どものために自転車(たぶん、2万円程度だろう)を買う。そんな素敵なラストまで、実に丁寧に的確に説明してくれる。お金って、何なのかを。ほんとうに欲しいものは、お金では手に入らない。でも、お金がなくては生きてはいけないときもある。そんな当たり前の話がしたいわけではないけど、そんな当たり前のことを感じさせられる。

 

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