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映画・演劇のレビュー

劇団きづがわ『愛と死を抱きしめて』

2018-06-06 21:22:43 | 演劇

 

半年という短いスパンでの再演というリスクを負ってでも、今一度、この芝居を同じメンバーでするということ。その意味をしっかりと受け止められる芝居だった。初演では時間が足りなくて実現できなかったレベルにまで作品をブラッシュアップするというのは、今までもきづがわが何度となくやってきたことだった。だが、今回はこれまでとはいささか趣が違う。

 

前回と同じ芝居のはずなのに、見終えた時の印象はまるで違うのは何故だ? キャストもスタッフもセットも含めて、変わらないはずなのに、全く違う作品ではないか、と思わせる。それは見ている僕の問題なのかもしれないけど、それだけではないことは明らかだ。芝居がとても軽くなっている。この作品の意図がより明確に実現したからだ。これは人間喜劇だ。笑って、泣いて、バカバカしくて、深刻で。その瞬間、瞬間、本気で必死に生きている。そんな人たちの群像劇だ。

 

なのに、初演時には、そこよりもこの悲劇性ばかりを見てしまっていた。作り手も同じだったのではないか。福島であることを殊更強調していた気がする。挿入される現在のドラマが余りに生々しく、そこに中心を置いて見てしまった気がする。2011年以降へとカウントダウンしていく芝居として、作品全体を見てしまっていた。声高に叫ぶラストを「無言のラスト」と初演には書いている。言葉を失うくらいに強烈なメッセージを発しているのに、それが声なき声として届いたのだ。

 

今回、芝居を客観的に見ることが出来たのは、2度目だから、ということもあるだろうが、それ以上に芝居自体が丁寧に作られたことが大きい。完成度が上がったことで、芝居本来のひとりひとりのドラマが際立った。その結果、メッセージ色が薄まり、本来の「人間喜劇」という側面が鮮明になる。この作品においては、悲劇よりも喜劇のほうが痛い。そんな当たり前の事実を目の当たりにさせられる秀作だった。

 

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