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映画・演劇のレビュー

浪花グランドロマン『舞え舞えかたつむり』

2019-07-06 08:21:14 | 演劇

こういう芝居を見るとなんだか安心する。これは別役実の戯曲なのだが、浦部さんのオリジナルだと言われても納得するくらいに自家薬籠中のものとしている。自身のアトリエで余裕をもって作られた作品はちゃんと浪花グランドロマンのテイストを体現しており、円熟の極致に到る。小さな芝居でいいし、だからこそ、繊細に見せることができる。主人公の2人(というか、2人芝居だ)がこの空間で向き合い、無理がない。

冒頭は思い野未帆のひとり芝居。緊張感のあるドラマが展開する。ここにいるはずなのに今は不在の家族に声をかける。かあさんと弟への声掛け、でも、ふたりの返事はない。確かにいるはずなのに、応答しない。彼女自身には不安はないけど、僕たち観客は不安が募る。そこに関角直子の刑事が現れる。噛み合わない会話の数々を通して、次第に状況が明らかになっていく。

いつもの不条理劇だ。40年も前に書かれたものなのに、まるで古くならない。ここには時代から取り残された人々がいる。そしてそんな彼らの日常の営みがそこからは垣間見れる。覗き込むように、昭和の残像がそこにある。だが、それは懐かしさではない。でも、この惨劇は悲惨でもない。こんなふうにして時代の片隅でひっそりと生きていた人たちがいることを思い出させてくれる。それは大阪本町のビルの地下にある小さなアトリエで上演される。痕跡は残らない。


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