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映画・演劇のレビュー

『建築学概論』

2014-02-25 20:26:38 | 映画
 なんとも無味乾燥なタイトルだが、このそっけなさは、悪くはない。こういう硬いタイトルがこの映画にはぴったりなのだ。これは、その辺によくあるような、ただ、甘いばかりのラブストーリーなんかではないからである。

 10代の男女の恋物語が、等身大に描かれる。このなんとも言えないもどかしさは誰もが心当たりがあることだろう。もう少し上手は、やれるはずだろ、と見ていて歯がゆくなるのは自分たちがもう大人になってしまったからで、あの頃の僕たちはこの2人のように、どうしようもなく、ダメなやつだったのだ。そんなこと、十二分にわかっているから、なんとも言えないし、どうしようもない。

 彼らの不器用さを笑うことなんて、きっと誰にも出来はしないだろう。なんだかとんでもなく、切ない気分になる。10代の僕たちはいつもこんなふうに、恥ずかしい存在だった。でも、だからこそ一生懸命だったのだ。彼女の帰りを、彼女のために作った家の模型を持ち、アパートの前でずっと待ち続けるシーンなんて、なんてバカなんだ、と思いつつも、その気持ち、とてもよくわかる。夜遅くなって酔っぱらった彼女が先輩と一緒に帰ってきて、先輩が介抱しながら、家に入る。ドアの前で聞き耳を立てる場面なんて、もう切なさ100%で、心が痛む。

 あれから10年以上の月日が経って、もう充分に大人になったはずだと、思っていた。映画は、大人になり、設計士になった今の彼を描くシーンから始まる。


 突然、彼女が現れる。最初は忘れていた。でも絶対にそんなはずはないだろ、と思う。きっと忘れた演技をしていたはずだ。でも、この映画はそんなそぶりも見せない。だから、本当に忘れてしまっていたのかもしれない。でも、もし、そうならそれは酷いことだ。彼女はずっと彼のことを忘れることなく、引きずってきたのだから。いろんなことが、わからないままで展開していく。彼女は本当に離婚しているのか。もしかしたら、今も結婚もせずにひとりだったのではないか、とか。百歩譲って3年前に離婚していたことにする。

 父親の介護をしながら暮らす今の生活の中で、彼女は勇気を振り絞って彼のもとを訪れる。「あなたに、私の家を建ててもらいたい、」と。今の彼女の置かれた状況を懇切丁寧に描くわけではない。だが、彼女のさびしい思いさえ伝わればよい。ソウルから済州島に帰る。あとわずかの命である父を看取るため、島に戻る。そこで、ふたりで暮らす。でも、やがて父はいなくなる。たったひとりになる。本当は彼との初恋を最初からやり直したかったのだ。強がるのは不安だったからだ。だが、残酷にも時間は過ぎてしまい、彼には彼の今がある。そんなこと、最初からわかっていた話だ。ドラマのようにハッピーエンドにはならない。でも、夢を実現させた彼に夢の家を建ててもらう。彼の設計で、ふるさとに理想の家を建てたのだ。もうそれだけで、新しい人生を踏み出せる。

 あの頃(大学1年生の頃)と今が交互に描かれていく。記憶の中のふたりと、今のふたり。夢と現実。時には残酷すぎる。でも、時には甘く切ない。あの頃も今もある意味では同じだ。映画としては作りが緩くて、完成度は高くはない。流れるような映画ではない。どちらかというと、ごつごつした映画だ。

 この程度の韓国映画のラブ・ストーリーなら、ざらにある。だが、この映画のよさは、その緩さにある。決して上手い映画ではないから、応援したくなる。不器用な主人公である彼らと同じように、不器用な映画だから、僕たちが愛してあげなくては、この映画自身が埋もれてしまう。そんな気分のさせるような作品なのだ。
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