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映画・演劇のレビュー

長岡弘樹『教場』

2014-02-25 20:04:59 | その他
 6話からなる短編連作スタイルの長編作品。最近はこのパターンの小説がやけに多くなった。要するに読みやすく(書きやすく、でもある)するためだ。読み手の力量に合わせて書かれてあるのかもしれない。長い文を読む力のない(時間もない)読者のニーズに作者が合わせているのなら、なんだか少し悲しい。(もちろん、書き手にもそれほどの力量がなにのかもしれないけど)

 警察学校を舞台にしたドラマである。彼らがここに入り、立派な警察官として旅立つことになるまでのお話だ。教官と生徒たちとの交流を描くハートフルなものを期待したなら肩すかしを食らう。ここは地獄だ。不条理なことばかりが横行する。こんなところで過ごした人間が警官になるのなら、そりゃぁ、世の中よくはならないだろう。そう思わせる。もちろん、警察とヤクザは紙一重だから、実際にもこんなものなのかもしれないけど、読んでいて殺伐とした気分いさせられる。

 もちろん、そこまでが作者のねらいなのだろう。きっと、わざとデフォルメしている。しかし、実情はここに描かれてあることと、あまり変わらないのかもしれない。怖いことだ。きれいごとではない、ということはよくわかるが、こんなにも酷いところで、犯罪予備軍が収容されているところが警察学校なのか、と思うと改めて警察はこわい。国民を守るためにある警察なのに、その実情はそうではない。

 ラストまで読むと、ほんの少しほっとさせられるけど、よくある「お仕事小説」の警察版だと期待して読み始めると痛い目にあう。あまり後味はよろしくない。

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