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映画・演劇のレビュー

チャイカ『姫首輪』

2014-02-04 22:14:47 | 演劇
 これは短編5本を、2本ずつセットにして、上演した辻野加奈恵さんの個人ユニットの公演。僕が見たのは『訪問者』『皮膚と心』の2本。どちらもevkkの外輪さんの演出作品だ。久々に外輪さんが出演されると聞けば、それを見ないではいられない。

 外輪さんが出演した『訪問者』は、ちょっとしたホラーで、ドキドキさせられる。話自身は単純な構造なのだが、こういう話はそのほうがいい。どこまでも単純な話を、どこまで突き詰めるか、そこが作者の腕の見せ所だ。ちょっとヤクザでふてくされたような芝居をする外輪さんがなかなかいい味を出している。主役は劇団「くすのき」のト田麻耶さん。もう着くはずの両親はいつまでたってもやってこない。電話で、何度となく母親(思い野美帆さんが声で出演しているが、彼女の淡々とした声がいい)と話をするのだが、要領を得ない。いらだちが不安になり、徐々に恐怖になっていく心理がよく表現できてある。

 それにしても太宰治の短編を辻野さんのひとり芝居として見せる『皮膚と心』は素晴らしい。こういうさりげない話こそ、太宰の真骨頂だろう。それを外輪さんと辻野さんは気負うことなくさりげない描写で見せる。やりすぎると白々しくなるところだが、寸止め。しかもオチをあっさり流す。その結果、見終えた後に爽やかな余韻を残すのもいい。30分という長さがこんなにも心地よい。初演では15分のショートヴァージョンだったらしいが、このくらいの尺がこの内容にはぴったりだろう。胸の下に出来た吹き出物を気にする彼女と、他人事で平気そうにいなす夫とのやり取りも含めて、とても丁寧に不安な彼女の心情が描かれていく。それを演出は優しい気持ちで見守る。そんな暖かい視線が感じられるから、この作品は成功したのだろう。ライトスタンドを効果的に使ったのもよかった。ただスタンドを抱えたり、動かすだけではなく、その明かりをうまく使って彼女の心情を表現しているのだ。


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