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映画・演劇のレビュー

芝居屋さんプロデュース『トイレはこちら』

2015-12-16 22:23:09 | 演劇

本当に久々に田口さんが別役実の2人芝居に取り組む。一体いつ以来になるのか。もう思い出せないくらいに久々だ。以前はずっとやっていた。毎年何回か、見た気がする。80年代終わりから90年代にかけて一体どれほど見たことか。そんな気がする。(でも、実際はそれほどではなかったかもしれないけど)条あけみさんと田口さんのコンビの別役作品を見た昔からスタートしてさまざまな組み合わせの芝居があった。

今回その流れを汲み、新しいパートナーとして超人予備校の日枝美香Lを起用した。彼女の醒めた視線が田口さんに向けられる瞬間が快感だ。だが、それは拒絶ではない。このとんでもないオヤジが自分の世界に土足で踏み込んできて困るけど、常識ある人間である彼女は冷静に対応する。そんなスタンスが面白い。それは彼女が超人予備校の公演でも見せるスタンスと同じだ。だが、あそこでは彼女が向き合う変な人たちは1人ではない。みんな変人ばかりで、まともな人は彼女だけ。それに対して、今回の2人芝居では、変な人は田口さんだけなのだ。その違いは大きい。

別役の芝居は一種の不条理劇だが、田口さんはそれをとても素直に見せる。なんら不条理ではないよ、というように。ふたつの不条理な存在がぶつかることで、化学変化が生じるというのがパターンなのだが、今回のふたりは、あくまでも変なのは田口さんで日枝さんはおかしくないという風に見えてくる。この確固としたものは彼女の持つきりっとした姿勢にある。まっすぐに目の前を見つめる彼女の視線に射抜かれると、自分の非を認めるしかなくなる。圧倒的に田口さんのほうがおかしいよ、と。こんなふうに見えるなんて本当に不思議だ。きっと台本にはそんなふうには書かれていないはず。

今回で終わりではなく、せめてもう1本このコンビでの別役を見てみたいと思った。今回僕が感じたことが、他の台本でも同じようになるかどうか、それを知りたい。そこには正しいこととは何なのか、ということへの普遍的な答えがありそうな気がするのだ。まぁ、そんな大袈裟なことではなく、このふたりのコンビがおかしくて楽しい、ということなのだが。


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