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映画・演劇のレビュー

コンブリ団『ムイカ 再び』

2018-03-02 19:56:10 | 演劇

ムイカ再び、どころか今回で三度(みたび)、なのだが、それでも新鮮な感動がここにはある。それはこれが広島を扱った芝居だから、はなく、はしぐちさんの語り口が見事だから、ついつい乗せられてしまうのだ。同じ話を3度見ても鮮度が落ちないのは、わかった話を語るからではなく、どこに行きつくのかわからない話を語るからだ。もしかしたら、これは広島にも原爆にもたどりつかないのではないか、とすら思う。そして、もうそうならそれはそれ面白いかも、とも思う。

彼女たちの話は、別に特別な話ではない。たわいもないおしゃべりでしかない、と言っても構わない。何度も繰り返されるそれは、繰り返される日常だ。あの日、いくつもの「6日」が、いくつもの世界が、あった。彼女たちの特別なことではなく、彼女たちの個人的なものでもなく、誰もが感じた、考えたこと、それを描く。

 

あの日、たったひとり生き残った子供が、70年経ち、老婆になり、子供や孫たちに見守られながら、やがて死んでいく。3人の女たちのところへ他者が入っていくという図式がまずある。だが、彼女たちは家族であることがやがてわかる。記憶を失った老婆が冷静に世界を見る。感情を抑えたまま、ラストまで。ある家族の話へと収斂していくのだが、そこが帰着点はない。そしてもちろんあの日の風景が描かれる。なんでもないある夏の日。くりかえされる日常。

 

初演を見た時は、これが広島についての、いや原爆についての作品であるということすらも知らずに見た。『ムイカ』というタイトルが「8・6」のことだと、しばらくして気づく。これは原爆をテーマにした演劇作品という高いハードルを易々と越えていく。故郷である広島、そこに帰っていく自分という視点がまずある。いつものようにはしぐちさんの前説から始まり、広島の話になり、お話の中に入っていく。この芝居が観念的な作品であるにも関わらず、難しい作品にならないのは、この「自分」という視点がまずあるからだ。それを普遍性のある小さな物語として再生産する。

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