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映画・演劇のレビュー

本若プロデュース『喫茶テキサスの陽気な日々』

2009-10-07 21:19:46 | 演劇
実にバカバカしい芝居だ。見ていてうんざりする。だが、このバカバカしさは嫌ではない。「うんざり」なんて書いてしまったが見ているうちにだんだん彼らのペースに乗せられて、それなりにこれを受け入れている自分に驚く。「作、平宅亮。演出、本若」とクレジットされているが、たぶんみんなでわいわい言いながら作ったのだろう。なんだか楽しそう。まぁ、芝居自体はいくら考えてもたわいないだけだし、残念だが、ここには何もない。そして、もちろん、バカは最後まで変わらない。

 だが、彼らはこの自分たちのバカを楽しんでいる。実はそこが一番大事なところなのだ。ただふざけているだけなら、これは見てられないだろう。だいたい芝居自身は何度も言うがつまらない冗談のような話だ。この話自体にはなんの意味もない。だが、彼らはこの空間を楽しんでいる。カウボーイごっこやら、ドタバタ騒動。そんなたわいないことを、しっきゃかめっちゃかして遊んでいる。

まるで客が来ない(当たり前だ。こんないいかげんな店にだれが来ようか!)喫茶店の主人と、やる気のないバイトの女の子、開店前からやって来る常連の客。普段ならこの3人しかいないはずの店に、なぜか今日は変な客がどんどん来て、てんやわんやの大騒ぎなんていうまるでどうでもいいような話なのである。

 店の奥に闇で射撃場を作ったとか、なんか訳のわからない会社に就職したとか、そこを首になったとか、さらには無銭飲食の男までもがやってきたりする。だが、そんな彼らのぐだぐだぶりを見ていると、なんだかどうでもいいことがけっこう楽しいと思えてくるのだ。ここは彼らの一種のシェルターなのかもしれない。ここで彼らはこんなふうにして安息の時間を送る。それは観客に対しても同じで、見ている客はそんな彼らと同じような気分になれる。くだらないがほっとさせるのだ。たぶんこれはそんな芝居なのだろう。だから、それだけでいい。

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