
2013年の作品。南相馬を舞台にして、福島原発から20キロ圏内で生活する母親と娘だけの家族と、そこにやってくる従兄のお話。
主人公はこの従兄のほうで、彼はIT企業の社長で、羽振りよくやっていたのだが、調子に乗りすぎて莫大な負債を抱え会社を倒産させてしまう。やくざから追われて、命からがらここまで逃げて来たのだ。そんな彼が再会した従妹の不思議な力に引き寄せられていくさまが描かれる。タイトルの「裸のいとこ」というのは彼女のことだ。彼らを取り巻くこの町の人たちのお話も交えて描く震災以降の人間関係を描く。一応はそんなドラマなのだが、あまりバランスがよくないので、何を描こうとしたのかがわからない作品になった。
2時間10分の大作で、監督である大鶴義丹は、どうしても描きたいことがあったのだろう。確かに相当力が入っているのだけど、残念ながらそれがカラカラ空回りした。それほどに震災や原発を、そして福島を、劇映画として描くのは、難しい。
撮影当時まだ現地は混乱しているし、どういう切り口が必要かも明確ではない。混乱したまま、それを映画にしたいとでも思ったのか。でも、放射能の影響で不思議な力を手にした女、というSF的設定はかなり難しい。しかも肝心要の、そこがまるで描ききれないまま終わるのはどうかと思う。ファンタジーというわけでもない。
これでは何のために作ったのか、それさえわからないものとなる。本人もここまで迷走するとは思わなかったのだろう。取って付けたようなボランティア団体の描き方。その嘘くささにはがっかりする。あんなシーンはいらない。
切り口を明確にして、それがこの国の未来にどう影響するのか。せめて、それくらいはちゃんと提示して欲しい。こんな中途半端なままでは意味がない。